2016/06/03発行 ジャピオン867号掲載記事

スペシャリストに聞く

①人材採用の基本

今月のテーマ:労務

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。

米国で人材を採用する場合の流れや、知っておくべき基本的な情報について専門家に聞いた。採用のプロセスで特に重要なのは、応募者を公平に扱うこと、差別を行わないこと、そして、記録を保管すること。


人材採用を行う際の一般的な流れについてご説明ください。

 エンプロイメント・アプリケーション(雇用申請書)を用意している場合は、正式なレジュメとともに雇用申請書を提出してもらいます。次に、その中から面接を行いたい応募者を選び、面接を実施。採用したい応募者が決まったらオファーレター(内定通知)を送付して署名してもらうと、雇用関係が成立します。


選考段階で注意すべきことは何ですか?

 選考段階では応募者全員を公平に扱い、のちに差別があったとクレームされないように進めることが非常に重要です。たとえば会社概要を説明する際には全員に同じ内容を伝え、同じ質問をすることが原則です。米国では、年齢、性別、人種などによる差別は違法とされており、面接の内容が応募者によって大きく異なった場合、のちのち不採用者から差別とクレームを受ける可能性があるためです。

 また、面接では仕事に関することのみ質問すべきで、個人の属性に関することは聞かないようにしましょう。具体的には、「あなたなら○○のような問題をどのように解決しますか」というような、応募者の知識や対応力を測れるような質問をするといいでしょう。

 家族構成、結婚のステータス、子供の有無などに関する質問は差別に当たる可能性があるため、会社側からは訊ねません。ただし、採用後に、健康保険加入の手続きのために家族情報を得るのは問題ありません。


採用の際に試験を実施することは問題ありませんか?

 仕事に必要な技術を持っているかどうかを知るためのテストであれば問題ありません。例えば、エクセルの技術が必要な職種に応募してきた人に、エクセルが使えるかどうかのテストを行うのは、仕事に直結しているので問題ありません。

 日本でよく実施されている性格診断テストのような試験は、仕事内容と関係がないので行うべきではありません。


面接は誰が行いますか? 

 米国では通常、直属の上司や担当マネージャーが採用活動に深く関与しており、採用も担当マネージャーが行います。ただし、担当マネージャーは人事の専門家ではないので、面接時に不適切な質問を行って問題になることがないように、会社に人事担当者がいる場合は、人事担当者も面接に立ち会うといいでしょう。


採用後はどのようなことに注意が必要ですか?

 雇用に関して問題が発生した場合、スムーズに対処できるように、応募者からのアプリケーションやレジュメなどの記録は、面接をしなかった応募者の分も含め、すべて保管しておいてください。万が一、雇用差別などを疑われた場合、記録を残しておけば、反論することができます。

 仕事内容も、口頭で伝えるだけでなくジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)として書面になっていることが重要です。コミュニケーションと記録の両面で対応することにより、行き違いを防げます。

 会社の規程を明記した従業員ハンドブック(就業規則)を作成する企業も多いです。従業員ハンドブックを渡す際にオリエンテーションも行うと、より効果的です。



選考に際し、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の閲覧は問題ありませんか。 

 閲覧自体は問題ありませんし、実際に多くの企業が参考情報として閲覧していると思います。ただし、そこから得た情報を理由に、採用・不採用を決めてはいけません。

〈おことわり〉
 当社は、記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。


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三ツ木良太さん

シカゴ生まれ。学習院大学法学部を卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)、コンサルティング会社を経て、2009年からHRM Partnersに在籍。各地の商工会などで講演、セミナーを催しているほか、組織、人事労務管理関連のコラム記事も執筆している。

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