2016/05/06発行 ジャピオン863号掲載記事

スペシャリストに聞く

①起業する際の事業形態:法人と個人事業主

今月のテーマ:起業

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。

今月はニューヨーク州で起業する場合に知っておくべき知識について専門家に聞く。米国で起業する場合は、主に 4つの事業形態の中から選ぶことができる。まず、事業形態を選ぶ際に考慮すべき事柄について聞いた。


米国で起業する場合、どのような事業形態を選ぶことができますか?

 法人の形態をとる場合、「LLC(Limited Liability Company)」、日本の株式会社に当たる「Busi- nessCorporation」などが一般的です。これらの形態をとると、会社の負債といった責任が個人に及ばない、有限責任となります。

 法人の事業形態をとらない場合、最もシンプルな事業形態は「SoleProprietorship(個人事業主)」、2人以上でビジネスを行う場合は「General Partnership(パートナーシップ)」となります。これらの形態では、ニューヨーク州に申請する義務がなく、税金も個人として納めることになります。

 ただし、「d/b/a(doing business asの略)」と呼ばれる屋号や商号を使って事業を行う場合は、その法人が所在するカウンティーごとに申請が必要となる場合があります。


法人化した方がいいと聞くことがありますが、その理由は?

 日本人が米国でビジネスを行う際、個人事業主やパートナーシップの形態を選び、法人化していないケースが多いようですが、法人化しない場合はプロテクションが付きません。例えば、ビジネスで負債を抱えた場合や訴えられた場合などに、その責任が個人にまで及ぶという、大きなリスクがあります。

 一方、法人の場合は、個人の財産がプロテクトされるという利点があります。たとえ負債を抱えてしまった場合でも、会社の破産手続をすることで債務が免除される場合もあります。現在は会社設立の手続きが簡単で、しかも申請費用が安いので、個人に責任が及ばない法人形態を選ぶ人が多いようです。

 法人化した場合、オーナーは次のことを理解しておくことが必要です。

▽ 会社登記をする際に、行おうとする事業に対して、ある程度の資本金があること
▽ 個人の資金と会社の資金を分けておくこと
▽ 法人化している場合でも、会社のオーナーが詐欺行為を働いた場合などには個人責任が発生する。必ずしも有限責任ではない


LLCと株式会社の大きな違いは?

 株式会社の場合は、毎年取締役会を行わなければなりません。また、新しい技術を開発したり、他の会社を買収したりといった大きな財政面での変化や重要な事項があった場合は、役員が特別会議を開いて正式な記録(Corporate Minutes)を残すことが義務付けられています。

 一方、LLCの場合は、メンバーの業務や役割、利益の配当を明記する義務がありますが、株式会社のような細かい条件が少ないので、株式会社に比べるとは柔軟性があるといえるでしょう。



一人で起業する場合でも、法人を選ぶことは可能ですか?

 一人で起業する場合でも、LLCや株式会社といった法人の形態を選ぶことができます。



米国市民権も永住権も持っていない場合でも、会社を設立することはできますか?

 米国市民もしくは永住権保持者でなくても会社登記は可能ですが、その場合、例えば非居住の外国人は「SCorporation(S法人)」の株主にはなれないなど、さまざまな規定があります。

 また、外国人や非永住権保持者がその会社で就労する場合は、就労ビザが必要となります。

〈おことわり〉
 当弁護士事務所は、記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。


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塩原源基(げんき)さん

証券会社勤務を経て、NewYorkLaw Schoolに通い、弁護士資格を取得。2013年11月よりRBL PARTNERS法律事務所にて勤務。会社設立、契約書の作成・レビューを含む一般企業法など、会社にまつわるさまざまな法的事項を担当。

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