2015/05/08発行 ジャピオン812号掲載記事

スペシャリストに聞く

②物件購入に必要な知識

今月のテーマ:NYでの不動産購入

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。

物件を購入するには、まず、ニューヨーク不動産市場の競争の激しさを理解することが重要。また、コープかコンドかでは購入できる物件や条件が大きく異なります。

日本人がニューヨークの物件を購入する際に必要な心構えは?

ニューヨーク在住の日本人が物件を購入する場合という前提でお話しします。

 前回お話ししたように、現在のニューヨークの不動産市場は非常に競争が激しく、購入時には入札が複数入るのが一般的です。購入するには、この入札を勝ち抜かなければならないわけですが、入札額や他の条件が同じであった場合、モーゲージ(住宅ローン)の頭金が多いほうが有利となります。頭金の額は、そのときのマーケットの状況や物件の内容、購入者の資産状況により変わるので、十分な準備を行い作戦を立てる必要があります。

 ただニューヨークでは現金での購入も多く、全額現金のオファーはローンを使うオファーよりも圧倒的に有利となるため、現金で購入してからローンを組むという方法もよく利用されます。

 特に人気物件はハイエスト・アンド・ベスト(もしくはベスト・アンド・ファイナル)と呼ばれるサイレントオークション形式で落札者が決定されます。ハイエスト・アンド・ベストでは、必ずしも最高価格(ハイエスト)の入札者が勝つわけではなく、他の多くの要素を加味したベストの入札が選ばれます。物件購入の入札で連敗するということも珍しくないため、負けたら気持ちを切り替え次の物件に行くという気構えが必要です。

 また落札できても成約までは何が起こるか分からず油断は禁物です。落札に負けても一喜一憂しないタフさと、スピーディーな決断力が求められます。

物件を見る時の注意点は?

まず必ずバイヤーズエージェントを雇い、常にエージェントの意見を参考にすることです。物件購入の責任が100%購入者にあるニューヨーク州では特にこれは重要です。

 初めてマイホーム探しをするときなどは、インテリアなどを含めた物件の見た目に気持ちが向いてしまいがちですが、購入後に変更できる部分より、ロケーション、構造、財務状況、ハウスルールなどの変更できない部分に注意を払うことが重要です。もちろんこれはバイヤーズエージェント(不動産ブローカー)の大きな役割でもあります。

コンドミニアムとコープの違いは?

コンドミニアムは不動産(Real Property)ですがコープは不動産ではありません。コープとはコーポラティブハウスのことですが、ごく簡単にいうと、そのビルを所有している会社の株式を購入し、株主になることで、ビル内にある特定のユニットをリースして使用することができる権利を得るのがコープです。

 コンドミニアムに比べて物件価格が安いのが魅力ですが、インベスターの購入を禁止しているビルが多く、投資には向きません。またマイホームとして購入する場合でも、住宅ローンと収入の比率や、購入後の流動資産残高に対するルールなどがある上、コープを管理するコープボードには購入を拒否する強い権限があります。このため、お金があるから買えるというわけでもなく、コンドミニアムよりも購入時の条件が厳しいのが一般的です。ただし、そうした条件をクリアすれば、価格の低いコープは非常に魅力的な選択肢といえます。

 一方でコンドミニアムはコープに比べて購入条件も緩やかであり投資物件としての購入に対してもほとんど規制がありませんが、物件価格はコープよりもかなり高額となります。
 
〈おことわり〉
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松本哲夫

ニューヨーク州公認不動産エージェント。市内大手のコーコラングループに勤務。マンハッタン・ブルックリン・クイーンズにて年間20件以上の不動産の売却と購入を手掛ける。自身も不動産投資・大家業を行うニューヨーク不動産のプロフェッショナル。二児の父で当地の学校事情にも明るい。

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