2018/08/24発行 ジャピオン981号掲載記事

この街に住みたい

世界中から人が集まるニューヨークには長い発展の歴史と物語がある。今週から、旧駅舎の取り壊し後、完全なる地下駅になった新ペンステーションの時代を検証する。

ペンステーション❽

  1990年代初頭、旧ペンステーション再建構想を提起したのが、当時のニューヨーク州選出連邦上院議員ダニエル・パトリック・モイニハン(民主党、1927―2003年)だ。モイニハンは、栄華誇りし旧駅の利用客だった。

 その構想は、隣接するジェームズ・ファーレー・ビルに駅を移動させること。このビルは、旧ペンステーションと同時期、同じボザール様式で建設された姉妹建築物。現在も中央郵便局が入る。

モイニハン・ステーション

 1999年には、ファーレー・ビル内に再建される未来の駅を「モイニハン・ステーション」と命名することも決まった。モイニハンの没後その遺志は引き継がれ、2010年に始まった第1期工事では、ファーレー・ビルとペンステーションが地下でつながった。すでに中央郵便局の正面玄関南北角には、「ペンステーション」の看板も掲げられている。完成すれば、ロングアイランド鉄道とアムトラックがこのビルに移る。

 現在第2期工事中で、ファーレー・ビル内の改築工事が進行中だ。今のペンステーションと、ファーレー・ビル(モイニハン・ステーション)をまとめた新駅名の候補に「エンパイアステーション」が上がっているが、正直ダサい。なぜ全部をして「モイニハン・ステーション」ではいけないのか。近年、老朽化のため事故と故障続きのペンステーションが、未来への希望を持って生まれ変わろうとしているのは、モイニハンのイニシアチブの賜物なのだから。

駅の再建構想とMSG

 今のペンステーションの持ち主アムトラックは、マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)の持ち主ケーブルビジョン社のテナントという立場だ。それゆえに、新ペンステーション構想と切っても切り離せないのがMSG。

 実はこれまで何度も、MSGの移転案が持ち上がっている。ファーレー・ビルの南隣のブロックや、ジェイコブ・ジャビッツ・センターの敷地内など、移転先候補もいろいろだ。そのたびにMSGは拒否してきた。

 が、2013年ニューヨーク市の2機関が新ペンステーション構想のための連合体を結成。MSGへの市の営業許可を制限する方向で動き出した。現在MSGは2023年までの営業許可を得ている。早い話が、行政側はMSGを移転したがっているのだ。半世紀前、MSG建設を目的に、歴史的建造物である旧駅を取り壊しておきながら、である。

 新ペンステーション構想が徐々に形になりつつある今、市は駅直上の土地の再開発にも着目しているということだ。人々の移動手段として鉄道が今一度見直されつつある今、これからのペンステーションの発展に期待したい。 (佐々木香奈)

MSGの地下にある今のペンステーションに加え、隣のファーレー・ビルの一部まで駅施設が延長される
ファーレー・ビル内にできる新ペンステーションは、1999年「モイニハン・ステーション」と命名された
アムトラック、ニュージャージー・トランジット、ロングアイランド鉄道の3社が乗り入れるペンステーション

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