2018/08/10発行 ジャピオン979号掲載記事

この街に住みたい

世界中から人が集まるニューヨークには長い発展の歴史と物語がある。今週は、旧ペンステーションの取り壊しとともに失われた彫刻と、その後の行方を追ってみよう。

ペンステーション❻

旧ペンステーションの取り壊し工事は、1963年10月28日に開始された。全米で反対運動が起こったことは前回書いたが、当時のニューヨーク・タイムズ紙の記事に、「実際に崩壊の第一撃が振り下ろされるまで、まさか本当に行政がこの美しい歴史的建造物の取り壊しを許可するとは、誰も思っていなかった」とある。

どの時代も、欲と悪政が歴史を変える局面はあるが、旧ペンステーション取り壊しもその一つだろう。ニューヨーク市民、ひいてはアメリカ国民にとってかなりショッキングな出来事だったことは明白だ。

このことはしかし、その後、アメリカで建築物の保護法が成立するきっかけになる。その恩恵で、約10年後に持ち上がったグランドセントラル駅の取り壊し案は、なんとか回避することができた。

しかし、何事も喉元過ぎれば何とやら。旧駅敷地に建てられ、欲の権化のごとくに言われたマディソンスクエアガーデン(MSG)は、その後スポーツや音楽などエンターテインメントのメッカとして繁栄する。

旧駅の彫刻は今どこに

旧ペンステーションは、時代が誇る荘厳なる公共建築物だった。その四方の玄関口を飾っていたのが、彫刻家アドルフ・アレクサンダー・ワインマンによる4対(つい)の女性像「Night and Day」(大理石)だ。4対はいずれも大きな時計の隣に配置され、日々駅利用客を迎えていた。

これらの彫刻が駅取り壊しの際、あっさり廃棄されたというから驚きだ。ところが5年後の1968年、ニュージャージー州メドーランドのゴミ埋め立て地で、無造作に廃棄されたワインマンの女性像「Day」の1体が発見された。ゴミと化したその衝撃的な写真をニューヨーク・タイムズ紙が掲載するや、ニュージャージー州政府が保存に動いた。現在その1体は同州リングウッド州立公園内に保存、展示されている。

その他、「Night」1体をブルックリン美術館が所蔵、「Night and Day」1対はミズーリ州カンザスシティーのイーグルスカウト・メモリアル・フォンテインに置かれている。もう1対はニュージャージー州ニューアークの駅改造に組み込まれる予定で、最後の1対はまだ行方不明だ。

2体のイーグル像、今も

同様に、22体の大きなイーグル像が旧ペンステーション外壁を飾っていた。これらも駅取り壊し後、行方不明になったものが多いが、そのうちの2体は、今もペンステーション入り口脇に鎮座している。

7アベニュー沿いの33ストリート角に1体、31ストリート角に1体。お世辞にも目立つとは言えない扱いだが、今度近くに行ったら探してみてほしい。ロングアイランド鉄道ヒックスビル駅にも1体あるらしい。
(佐々木香奈)

◯で囲んだところに、旧ペンステーションからのイーグル像が配置されている
7アベニューと33ストリート角にある旧ペンステーション時代のイーグル像。もう1体は31ストリートに
34ストリート沿い・7アベニューのロングアイランド鉄道入り口頭上にある時計も、旧駅からのもの

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