2018/05/04発行 ジャピオン965号掲載記事

この街に住みたい

世界中から人が集まるニューヨークには長い発展の歴史と物語がある。今週から8回にわたり、イーストリバーに浮かぶランドールズ島を歩き回る。未知の島で一体何が待っているのか?

ランドールズ島便り❶

 ランドールズ島は、イーストリバーとハーレムリバーが合流する航海の難所「ヘルズゲート(地獄の門)」に浮かぶ平らな島で、人口は1700人足らず。正式名称は「ランドールズ&ワーズ島」。独立戦争後にそれぞれの島の地主となった二人の名字に由来する。

 地図を見るとうっすらと分かるが、元は二つの別々の島(北がランドールズ、南がワーズ)だったのが、トライボロ橋の開通(1936年)を機に島間の海峡を埋め始め、60年代には総面積2・09平方キロの大きな島になった。今では「ランドールズ島」と総称。行政区的にはマンハッタンに属する。

年に一度のアート祭

 高層ビルもショップもカフェすらもなく、普段は人が住む気配がないランドールズ島だが、毎年、5月だけは別で、何万もの訪問客がこの島に渡る。今年で7年目を迎える国際的なアート見本市「フリーズ・ニューヨーク」が開催されるからだ。英国はロンドンのアート情報誌が主催する同展は全世界から1000人もの現代美術家を招き、仮設の大テントの下にひしめく出展ブースの中で、各々が表現のしのぎを削る。入場料は学生27ドル、大人48ドルと決して安くはないが、アートの最先端を一望するには格好のイベントだ。今年は、5月3日(木)から6日(日)まで。

 なぜランドールズ島のような不便で見知らぬ島がフリーズの会場になったのかは不明だが、少なくともここ数年で、ランドールズの名が世界中の高感度人間たちの脳裏に焼き付いたことは間違いない。

巨匠の橋を歩いて島へ

 イベント当日は大混雑するので臨時フェリーが出るが、通常、この島に渡るには橋を使うしかない。マンハッタンの125ストリートと直結しているのがロバート・F・ケネディ橋。ハーレムを走る市バスのM135が同橋を渡って島内の要所を一周し、またマンハッタンに戻る。

 散歩がてら徒歩で島に渡ることもできる。2本ある歩行者専用橋のうち、マンハッタンと島をつなぐ「ワーズ島橋」が便利だ。1941年開通。発案者は当時ニューヨーク市、州のインフラ整備を仕切っていたロバート・モーゼス。設計は、モーゼスの実行部隊長としてトライボロ橋、ジョージ・ワシントン橋、べラサノ橋などニューヨーク周辺に計7本もの大橋梁を架けた超大物オスマー・アンマンだ。

 地下鉄6ラインの103ストリート駅で降りて、同ストリートを東に直進。低所得者用アパートの殺風景な庭を抜けると、FDR高速道越しにワード島橋が緩やかな弧を描くのが見えてくる。ジョージ・ワシントン橋に比べたら、交響楽とソナチネぐらい違うアンマンにとっての小品だが、思わず渡りたくなる衝動を覚えた。(中村英雄)

別々の島だったなごり、リトル・ヘルズゲート塩沼に、今は小さな橋が架かっている
1941年に開通したワーズ島橋。船の航行のために昇開橋になっている

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