2017/12/22発行 ジャピオン947号掲載記事

この街に住みたい

世界中から人が集まるニューヨークには長い発展の歴史と物語がある。ジャマイカ最終回の今週は、不況後の再開発や、ゆかりの人物と犬(?)について探ってみた。

ジャマイカ❽

ゆかりの人物と犬(?)

 ジャマイカゆかりの人物は多いが、日本人が聞いてピンとくる名前は少ない。知っておいていいのが、セオドア&ジェームズ・アーチャー兄弟と、ジョン・H・サットフィンだろうか。

 アーチャー、サットフィン、いずれもストリートと地下鉄駅の名前になっている。彼らは1800年代の地元の名士で、それにちなんでの命名だ。アーチャー兄弟は実業家で、サットフィンは政治家だった。

 意外な地元の名士もいる。犬のロキシーだ。近年、絵本「Miles of Smiles: The Story of Roxy, the Long Island Rail Road Dog」(ヘザー・ワージントン著、ビル・ファーンスワース絵)も出版された。本のタイトルの通り、実在したロングアイランド鉄道(LIRR)のマスコット犬ロキシーの話。絵本を見る限り、犬種はテリアの雑種だろうか。1900年代初頭、ロキシーは一人(一匹)でLIRRを乗り降りする犬として知られていた。絵本には、他の乗客と一緒にジャマイカで列車を乗り換えるロキシーの姿と、列車の上からそのロキシーを眺める驚き顔(あきれ顔?)の車掌の様子などが描かれている。

開発の伸びしろ無限大

 さて、1900年代初頭からマスコット犬ロキシーにも後押しされ、列車文化に乗って発展したジャマイカだったが、1960年代から経済は下り坂に向かう。80年代に入るとクラック(コカインの塊)の蔓延が犯罪を呼び込んだ。それまで栄えていた大通りも、安かろう悪かろう店舗ばかり目立つようになる。

 この不況期にはしかし、ジャマイカにアートの拠点が誕生している。1980年代開館のジャマイカ・パフォーミングアーツセンターは、地下鉄EJZ線終点ジャマイカセンター駅前、ジャマイカ・アベニューと153ストリートの角にある。1858年築のロマネスク・リバイバル建築で、オランダ領時代の教会。教会の移転に伴い内装が改築され、400席を擁する劇場に生まれ変わった。

 そこからジャマイカ・アベニューを東に2ブロック行くと、ジャマイカ・センター・フォー・アーツ&ラーニングもある。こちらは1960年代オープン。不況時代のジャマイカを活気づけたのは芸術ということだ。

 90年代に入ると治安も安定し、ジャマイカ周辺開発組合(GJDC)なる地元団体の努力で少しずつ復活の兆しを見せる。2003年LIRRジャマイカ駅の改装工事が完了。エアトレインが開通すると、アストリアやロングアイランドシティーに続けと、がぜん開発計画が活発になっていった。現実には、ひいき目に見ても成功しているとは言い難いが。

それでも、空港への中継地点という立地では、今後の伸びしろが果てしないジャマイカだ。(佐々木香奈)

アーチャー・アベニューとサットフィン・ブルバードの角。いずれも地元の名士から命名されたストリート名
地下鉄EJZ線終点ジャマイカセンター駅前にあるジャマイカ・パフォーミングアーツセンター
ジャマイカ・パフォーミングアーツセンターの、153ストリートを挟んだ隣にあるクイーンズ家庭裁判所

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