2017/11/03発行 ジャピオン940号掲載記事

この街に住みたい

世界中から人が集まるニューヨークには長い発展の歴史と物語がある。地図をよく見ると、広いクイーンズ区のほぼ真ん中にあるジャマイカ。そこにはどんな歴史があるのだろうか。

ジャマイカ❶

ジャマイカ or ジャマイカ??

 「ジャマイカ出身です」

 「どっちのジャマイカですか?国の?それともクイーンズの?」

 「クイーンズの」

 ニューヨーク市在住者なら、こんな会話を交わしたことは一度や二度ではないだろう。実際、カリブ海に浮かぶ島、レゲエの国ジャマイカとつづりも同じ。ついボブ・マーレーを思い浮かべてしまうのも人情というものだ。しかし、ここニューヨーク市でこの地名を聞いたら、かなりの確率でクイーンズのジャマイカのことだと思って間違いない。

 このコラムでの連載初回には、お決まりのように地名の由来を書くのだが、ジャマイカほど、市民にとって日常的なギモンになっている地名も珍しいのではないか。実際、レゲエの国ジャマイカからの移民が多く住むエリアであることは事実だという。ところが、地名の語源は別にある。

ビーバーがいる所

 歴史書「イメージズ・オブ・アメリカ ジャマイカ」(アーケーディア出版)他の文献によると、語源はこの土地の先住民族レナペ(Lenape)族の言葉で「Yemacah」。「ビーバー(beaver)がいる所」という意味だ。発音は「イェメィカ」に近いものと想像する。現在も地下鉄ジャマイカセンター駅付近に「ビーバー・ロード」があるのも、当時この辺りはビーバーが多く生息する湿地帯だったことの名残だ。

 1656年、この辺り一帯がオランダ領になると、オランダ語で「Y」音は「J」とつづるため、「Yemacah」の「Y」が「J」に置き換えられ、「Jameco」とか「Jemeco」とつづられるようになった。その後、統治権がオランダからイギリスに移ると、イギリス人たちがそれを英語読みし始め、口語で何度も繰り返された結果が、「Jamaica(ジャマイカ)」だ。実際の発音は、クイーンズもレゲエの国も、「ジャメイカ」に近い。

 さてここまで書くと、少し脱線するが、レゲエの国ジャマイカの語源にも触れないわけにはいかないだろう。こちらはもともと土地の人によって「木と水の国」という意味で「Xaymaca」と命名されたのが始まりだ。それがスペイン統治下で「Jamaica(ハマイカ)」とつづられ、後にイギリス統治になると、つづりは同じで発音だけが英語読みになったという経緯だ。

 このように、同じ地名でも語源は全く異なる。はてさて、名前の由来だけでコラムの初回全部を費やしてしまったわけだが、そのくらいする価値はある話題ではないだろうか。

 このジャマイカ、エリアとしては広大で、その境目も極めてあいまいだ。ニューヨーク市の端っこにあるイメージだが、実は広いクイーンズのほぼ真ん中に位置している。近年、さらなる開発が叫ばれるエリアでもある。佐々木香奈)

地下鉄E線ジャマイカセンター駅とロングアイランド鉄道ジャマイカ駅の間にある「BeaverRoad」
地下鉄E線のジャマイカセンター駅。構内は、市内の他の駅と比べてはるかに設備が整っている

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