2017/08/18発行 ジャピオン929号掲載記事

この街に住みたい

世界中から人が集まるニューヨークには長い発展の歴史と物語がある。今週は、キップスベイの「病院街」の締めくくり。NYUと、退役軍人専用病院システムの歴史を振り返る。

キップスベイ❼

 1736年創設のベルビュー病院ほどではないが、NYUランゴーン・メディカルセンターもその歴史は長い。NYU医科大学の創設は1841年。NYポストグラジュエート病院として1882年に病院組織を発足させ、最初の施設は東20ストリートに建てられた。その後数回の移転と改名を経て現在の場所(1アベニューの30〜34ストリート)に落ち着いたのは1963年だ。

ティッシュ&ランゴーン

 1989年、ローレンス・ティッシュ、プレストン・ロバート・ティッシュが、3000万ドルをNYUとその病院に寄付したのを機に、病院名も「ティッシュ・ホスピタル」に変更され、現在はNYUランゴーン・メディカルセンターの一部となっている。ティッシュ(Tisch)一家といえば、ニューヨーク市で何代も続く、全米でも指折りの資産家一族。市内のビルや、米北東部の大学の図書館などに名前が付いている。スティーブ・ティッシュは、NFLのNYジャイアンツのオーナーの一人でもある。

 現在の総称「ランゴーン」も、似た経緯だ。2008年、ロングアイランド出身の投資家ケネス・ランゴーンが、NYUメディカルセンター(当時の名称)に2億ドルを寄付し、「NYUランゴーン・メディカルセンター」と改名された。現在ランゴーンはこの病院の理事に名を連ねる。

VAホスピタルの歴史

 米連邦政府退役軍人課によると、米国で軍人のための医療が組織的に運営されたのは、1636年、ピルグリムと先住民で争った開拓時代にまでさかのぼる。現在の退役軍人専用病院、「VA(VeteransAffair)ホスピタル」システムが構築されたのは南北戦争中だ。1865年、南北戦争終結の1カ月ほど前、リンカーン大統領が、連邦軍(北軍)と海軍志願兵のための医療施設を組織させた。

 当時それらの医療施設は、「ナショナル・ホーム(「国の家」とでも訳そうか)」「ソルジャーズ・ホーム(兵士の家)」と呼ばれていた。第一次世界大戦(1914〜18年)を経て、1929年には全米に11の「国の家」が開設、第二次世界大戦(1939〜45年)後にはその数は全米で125カ所に。名前も「VAホスピタル」と名前を変えた。

 ここキップスベイにあるVAホスピタルが開設されたのが1954年だ。1アベニューが「病院街」の様相を呈してきたのもその頃。

 文字通り退役軍人を対象に医療を提供しており、全米のVAホスピタル・システムは、世界で最大規模の医療組織だ。キップスベイのVAホスピタルは、特にPTSD(posttraumaticstressdisorder)やMST(Military Sexual Trauma)などの 精神科医療が充実していることで知られる。(佐々木香奈)

NYUランゴーン・メディカルセンター。1アベニューの30〜34ストリートにまたがる巨大な医療施設
VAメディカルセンター(退役軍人専用病院)。1アベニューの23〜24ストリート

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