2016/12/16発行 ジャピオン895号掲載記事

この街に住みたい

ルーズベルト島❼

 ルーズベルト島には、史跡指定建造物が六つある。メーンストリート沿いの一軒家ブラックウェル・ハウス、島北部の豪華レンタルアパート「オクタゴン」(元精神科病院)、島南部のスモールポックス・ホスピタル(天然痘患者隔離病院)。この三つについては、連載中に何度か触れたとおりだ。

 残る三つは、チャペル・オブ・ザ・グッドシェパードと、ストレッカー・メモリアル・ラボラトリー、そして島の最北端に立つ灯台。いずれも19世紀後半、島が流刑の地だった頃に建てられたものだが、それにしては著名な建築家による立派なものばかりだ。

いずれ劣らぬ荘厳な建築

 メーンストリート沿いに立つチャペル・オブ・ザ・グッドシェパードは、1889年築。石とレンガ造りのビクトリア調ゴシック建築だ。ニューヨーク・エピスコパル教会が、島の囚人や貧困層を宗教的に支えるために、イギリス人建築家フレデリック・クラーク・ウィザーズに依頼して建てた。

 20世紀に入り島の刑務所が廃止され囚人がいなくなると、教会としての機能を失い、周辺の病院従事者の寮になっていた。その後、島住民のコミュニテイーセンター、いわば公民館になり、近年は再び教会としての機能も果たしている。

 同じくウィザーズが、ウォルター・ディクソンと共同でデザインを手掛けたのが、ストレッカー・メモリアル・ラボラトリーだ。天然痘患者隔離病院のすぐ北に位置する。1892年築で、ロマネスク・リバイバル建築。ここは、全米初の病理学と細菌学専門の研究所で、ニューヨーク市内の病院の検査室としての機能を一手に担っていた。が、1950年に閉鎖されると、その後、半世紀の間廃屋と化していた。

 72年に歴史的建造物に指定されたものの、廃屋であることに変わりはなく、市がやっと重い腰を上げて修復したのが2000年。現在は地下鉄E、M線の変電所として使われている。

 そして、島の最北端にあるゴシック建築の灯台も、超有名な建築家によるもの。セントパトリック大聖堂をデザインしたことで知られる、ジェームズ・レンウィック・ジュニアだ。1872年の完成から1940年代まで、「地獄の門」と言われる、イーストリバーの危険水域を通る船を誘導していた。

 さて、著名建築家のデザインとはいえ、現場での肉体労働は、島の囚人と精神科病院(Lunatic Asylum、現在の「オクタゴン」)の患者に、強制的に課せられた。彼らが、島の岩盤である花崗岩を掘り起こし、灯台を建てたのだ。

 今はライトハウスパークとして、夏のピクニック名所になっている。西にマンハッタンのアッパーイーストサイド、東にクイーンズ、北にRFKブリッジ(元トライボロブリッジ)を臨む、絶景の地だ。 (佐々木香奈)

1892年築の、全米初の病理学・細菌学研究所「ストレッカー・メモリアル・ラボラトリー」。1972年史跡指定
メーンストリート沿いに立つチャペル・オブ・ザ・グッドシェパード。1889年築。現在は公民館兼エピスコパル教会

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