2016/10/07発行 ジャピオン885号掲載記事

この街に住みたい

セントラルパーク銀輪散策⑤

猛獣脱走で市民騒然!?

 公園の東側に位置するセントラルパーク動物園は、オルムステッドとロウによる最初の設計図にはなかった。しかし、1859年の開園と同時に、公園に動物を寄贈する人が後を絶たず、自然発生的に動物の飼育場ができた。見世物小屋やサーカスが娯楽の王様だった時代。アフリカやアジアの珍獣奇獣が、大勢の見物客を集めた。

 64年には正式な認可が下りるが78年に地元新聞「ニューヨークヘラルド」紙が、「セントラルパークから猛獣脱走」と大見出しで報じた。「飼育係を突き殺して檻を破ったサイを先頭にシロクマ、ライオン、トラらも続々街に躍り出して暴れている…」という記事に市民は騒然となったが、実は全部デタラメ。ニュースを最後まで読むと「これは偽記事です」の一行があった。今でいうパロディージャーナリズムだが、当時のずさんな飼育管理に対する痛烈な批判だと思えば納得がゆく。

 現在の動物舎ができたのは1934年。今も人気のアシカ・プールは動物学の研究に基づいて設計されたそうだ。昔はゾウやトラ、ライオンなど大型獣もいた。67年にはサイモンとガーファンクルが同園をイメージした歌を歌っている。

イーストサイドから
公園なんて目と鼻の先
ちょいとオシャレに散歩がてら動物園に行こうよ
(「動物園にて」より)

 80年代に入ると動物園は経営難で一時閉鎖。5年の改装工事と組織替えを経て88年に再開し、現在の形となった。

 展示の目玉は、雪豹、レッサーパンダ、アシカなどで、猛獣はいない。

「あの人」が救った回転木馬

 もう一つの人気アトラクションが回転木馬。営業開始は1871年。当初は本物の馬がロープを引いて回す方式で、監視人の足踏み一つで馬が発進、停止するのが自慢だった。1924年に蒸気駆動に変わったが2回の火災で焼失。4代目の現在の木馬は、ブルックリンに放置されていた1908年製を改装した電動式。57騎の手作り木馬と2台の馬車が昔ながらの自動オルガン演奏に合わせてくるくる回る。

 サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」で回転木馬に乗りながら金の輪をつかもうとする妹フィービーを、主人公が眺める場面はここが舞台だ。

 しかし回転木馬も、経営が悪化。破損が激しく一時は解体の危機にあった。それを救ったのが、誰あろう、ドナルド・トランプ氏だ。私財40万ドルを投じて木馬を修復。2010年から20年までの契約で市から営業権を買い取り、2年間で172万ドルの収益を上げている。現在3ドルの乗馬料がトランプ氏の懐に入ると思うと、複雑な気分だ。(中村英雄)

動物園の門の上にはカリオン時計があり、1時間ごとにかわいい動物たちが回りながら時を告げる
1871年から同じ場所で子供たちを楽しませてきた回転木馬。小説に登場する「金の輪」は、どこにもない
回転木馬の注意書きには「トランプ・カルーセル」の文字。金ぴかプレートでないのがせめてもの救いか?

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