グローバル時代の子育て

その80 将来の夢を描く、 なりたい自分を見つける

子どもが自立して「自分のやりたいこと」や「自分の生き方」、すなわちアイデンティティーを確立するには、学生時代に受験勉強に打ち込むだけではいけません。教科書から離れてスポーツや音楽に取り組んだり、アートに触れたり、異文化や年齢の異なる人と関わったりという多様な経験が必要です。

子育ては自信育て

今の子どもは夢が描けない、将来の希望がない、普通で満足する、とよく聞きますが、その原因は不景気でもゆとり教育でもありません。「自信」を育ててもらっていないのです。自信がないから物事にチャレンジできない。チャレンジしないから自分のことがよく分からない。自分が分からないから夢が見つからない。

自信を育てるには、困難にチャレンジして成功したり失敗したり、勝ったり負けたり、できたりできなかったり、悩んだり解決したりという経験を繰り返すことが必要です。

勉強一筋で生きてきた子どもは、勉強以外の道を学ぶ機会が少なくなり、困難に出会った時の踏ん張りや、人としての幅、あるいは「自信」が大きく育ちづらいのです。

才能を見つけ、
伸ばすのが親の仕事

スポーツや音楽、アートを通して「競争」を経験させ、少々の失敗や困難にへこたれない「強い心」を育成しましょう。どの子どもにも必ず人とは違う部分や優れた面があります。

ポイントは、子どもの強みに目を向けること。弱みや弱点克服のために習い事をさせてもうまくいかないケースがほとんどです。子どもは自分で強みに気付くことは少ないですから、まずは親が子どもの強みを見つけてあげましょう。そして、その強みを活かせる習い事をいくつか用意して、子どもに選ばせます。

習い事を始める時は、いきなり放り込んではいけません。いかなる分野も、技能を周囲よりも少しだけ高めてから始めさせて、「自分はできる」という「やる気」を奮い立たせる仕掛けを作ってください。

習い事は長く続けることが条件です。やり続けることで培われる「自信」は、子どもが将来どんな道を選ぶにせよ、夢の実現に向かってあきらめずにやり抜いていく原動力となります。

子どもの職業観の基準は、親の職業

習い事で「自分はできる!」という「自信」を伸ばすことと平行して、将来のキャリア選択のヒントを見つけられる環境を作りましょう。医者の子どもは医者、教師の子どもは教師、実業家の子どもは実業家、職人の子どもは職人、サラリーマンの子どもはサラリーマンといったように、子どもが親と同じ道を選ぶ事例が多くあります。

これは親がレールを敷いているわけでなく(敷いている場合もありますが)、親が仕事に向き合う姿勢を子どもが近くで見ているからです。親が誇りを持って仕事をしていれば、子どもは親の職業を尊敬します。

親が医者であれば、人命を助けるために尽くしている姿に子どもは誇りを感じるでしょう。家には医学関係の本があるでしょうし、家族の会話にも医学の話題が上ることがあるはずです。そんな環境で育った子どもは、親が「医者になれ」と言わなくても、ごく自然に命を扱う仕事について考えるようになり、医学に興味を持つのです。

さまざまな職業に
触れる経験

子どものキャリア選択は、身近な人に影響を受けます。親戚や知人には、さまざまな仕事に従事する人がいるはずです。エンジニア、医師、飲食店経営、農業や漁業など、さまざまな職業の人から直接話を聞くことで、子どもはその職業を身近に感じます。

子どもが自分の意思で職業に触れる経験を積むことは難しいですから、親が身の回りの仕事について知る環境を作ってあげてください。多くの職業に触れる経験が、「自分のやりたいこと」へと発展していきます。

 

 

 

船津徹 (ふなつ・とおる)

TLC for Kids代表 教育コンサルタント

1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。
しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾
TLC for Kidsを開設。
2015年に
TLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。
アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。
イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。
著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。

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