2015/09/11発行 ジャピオン830号掲載記事


不動産購入

米国の不動産は、資産価値が安定している。家賃が高騰するニューヨーク近郊では住宅を購入する日本人も多い。専門家に現在の不動産市場について聞いた。


 ニューヨーク市周辺での住宅購入について、またそのメリット、プロセスなどについて住友不動産販売NYの大石究(きわむ)社長に聞いた。

持ち家のメリットは社会的信用と資産価値

 「持ち家に住むメリットはいろいろありますが、一つには社会的信用度が上がること。そして、ローンを払い続けることで、資産として持ち続けることができる点」と大石社長は語る。

 米国では、物件が古くなったからといって価値は下がらない。むしろ何年もかけて上がっていく。それはニューヨーク市とその周辺で特に顕著な傾向で、それだけ資産価値も高くなる。

 住宅ローンの金利や不動産税が、所得税申告時に控除対象になるという、節税メリットも無視できない。

家を買うには己を知る 予算、物件条件を明確に

 では、「買う」前提でプロセスを追ってみよう。効率的な物件探しのためには、多角度から自分の条件を知ることが大切。まずは予算。自己資金額(頭金)と収入から、ローンがどのくらい組めるかを総合的に考えると、おのずと予算がはじき出される。

 「毎月のローン支払い額は、月収の20%以内が目安」と大石社長。一戸建てなら、それに不動産税、集合住宅ならさらにビルの管理費(維持費)が加わり、毎月の住宅費となる。その総額が払えるかを、把握する必要がある。ちなみにローンが組めるかどうかは、「ケースバイケースですが、平均で物件価格の3割を頭金としておけば大丈夫でしょう」と大石社長。

 物件探しは、当然予算内で行う。家族構成、子供がいれば学校区、職場へのアクセス、車の有無、物件の間取りや近所の環境、自分たちのライフスタイルなどを考慮する。

 ニューヨーク市内での売買用集合住宅は、コンドミニアムかコープのいずれか。それぞれ所有形態が異なり、物件の値段と購入プロセスにも違いがある。

 まずコンドミニアムは、その物件(部屋)を直接所有する。自分で住まなくなっても貸せるので、投資物件としても人気があるが、物件価格がコープよりも2、3割高い。コープは、その住居ビルの株を住人で共同所有するタイプ。自分で住むために買うもので、住まなくなっても勝手に賃貸に出せない。購入にもボード(住人理事会)審査や面接があり面倒だが、コンドミニアムよりも値段が安く、市内の古い物件のほとんどがコープ。

売買契約書、ローン申請 クロージングまでの期間

 買いたい物件が決まったら、弁護士を決める(不動産エージェントが紹介)。弁護士料の相場は、物件価格に関係なく2000〜3000ドル。弁護士が準備した売買契約書に署名し、そのときに売買金額の10%を契約金として弁護士の預託口座に入金する。次が住宅ローンの申請だ。不動産エージェントにモーゲージブローカーを紹介してもらうのが手っ取り早いが、自分で銀行に行ってもいい。

 同時に、コンドミニアムもコープも、ボードに提出する「購入申請書」を作成し、指示される必要書類(銀行口座のコピーなど)をそろえる。コンドミニアムは、これをボードに提出して銀行からローンの認可が下りれば、あとはクロージング(売買契約)。コープはこの後、ボードによる面接がある。物件を決めてからクロージングまでの期間は、コンドミニアムなら2、3カ月、コープなら3〜6カ月だそうだ。

 最後に、忘れてならないのは購入にかかる費用。弁護士代その他、物件価格の2〜3%が目安だ。ただ、ブローカー手数料は売り手が負担するしきたり。

狙い目のエリアはクイーンズ&ブルックリン

 エリアの狙い目としては、クイーンズとブルックリンだろう。以前、新築物件に適用された不動産税免除は、現在マンハッタンの物件には適用されていないが、クイーンズ、ブルックリンの新築物件には今も適用されている。

 イーストリバー沿いの開発エリアはすでに市場が高騰しているが、そこから少しずつマンハッタンから離れるにつれ、「買いごろエリア」は広がっていく。「クイーンズなら、フォレストヒルズ辺りは環境もよく、これからもっと伸びるエリアでしょう」と大石さんは話す。

お話を聞いた人

大石究さん
住友不動産販売NY社長
800 2nd Ave., #300
(at 42nd St.)
TEL: 212-596-0800
www.sumitomo-ny.com



帰国予定でも物件購入

 3~5年の予定でニューヨークに駐在する人も、さまざまな理由で住宅を購入する。子供の学校の関係で、夫の駐在期間終了後に、母親と子供だけが卒業するまでケースもある。この場合、購入する物件は一戸建てかコンドミニアムになる。

 永住権・市民権を持たなくても住宅ローンも組めるそうだ。ただ、就労ビザの場合は2%ほど金利が上がる可能性はあるという。

 それでも、「ニューヨークの不動産は資産価値が下がるどころか、エリアと市場によっては5〜10年で価値が倍に、もしくはそれ以上になるという、過去のデータがあります。帰国さ
れる方にとっても、ニューヨークの不動産は低リスクで、健全かつ手固い投資だと思います」と大石社長は話す。

 日本に帰国後は、不動産会社に物件の管理運営を任せて、賃貸すればいい。管理代行費用は、平均で賃貸価格の8%程度。月の家賃5000ドルなら400ドルが相場だ。

 ただ、賃貸した場合の利回りは、ニューヨーク市の場合、あまり期待できないそうだ。理由は、物件価格そのものと運営費が高いから。「それでも、損をしない程度に回せていれば、市場が上がったときに、売って利益をあげることもできます」と大石社長はアドバイスする。




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