

NY州認定弁護士。フォックス・ロスチャイルド法律事務所国際部主任。過去25年に渡り、複雑な資産相続や国際的事情に直面する顧客を中心に、私設基金設立なども含め、アドバイスをしている。85年「Estate Plann- ing」(New York Institute of Finance)を出版。05年長野スペシャル五輪諮問委員会会員。
今回のテーマは「遺言」。日本人にとって、まだ馴染みの薄い遺言も米国では、その作成は日常的に行われています。
米国では、遺言にはどんな役割があるのですか?
遺言には、死後の財産を誰に、どのように分配するかについての、個人の意志が明記され、遺言は、作成した本人の死後に初めて法的効力を発揮します。未成年の子供がいる場合は、遺言の中でその子供の法的保護者を指定することもできます。
死後、自分の財産が、自分の望む人や団体に確実に遺されるように、また、手続きにかかる時間や経費を最小限に抑えるためにも、財産の多少や滞在ステータスに関係なく、遺言の作成をおすすめします。
遺言がある場合と、ない場合の手続きの違いは?
遺言がない場合、ニューヨーク州では、検認裁判所が、遺産の管理を行う相続代理人を指名します。遺産管理人は、州法に基づき相続人を特定し、分配に関する判断を下します。遺言がなくても、財産が政府に没収されたりはしませんが、近親者が近くにいないなど、法定相続人を特定することが難しい場合は、手続きに数カ月を要することもあります。また、故人に代わる未成年者の保護者が遺言で指定されていない場合は、さらに時間を要します。
一方、遺言がある場合は、死後、裁判所に遺言を提出し、検認手続(プロベート)によりその有効性が確認されると、裁判所は遺言で指名されている遺言執行人に、法的な権限を付与します。この手続は通常数週間で済みます。その後、遺言執行人は、付与された権限に基づき、負債の返済、遺産の分配など、遺言の条項に沿って遺産管理を行います。
遺言作成キットが販売されていますが、使用は法的に問題ありませんか?
必要事項を空欄に記入するタイプのものは、法的に問題があるとは一概に言えませんが、専門家の立場から、おすすめできるものではありません。市販のものは、個人用、または州ごとにカスタマイズされていないため、網羅する条項が少なすぎて、指示内容が不明瞭となる可能性があります。
また、ニューヨーク州では、遺言には、最低二人の証人の署名が必要ですが、証人は18歳以上で、遺産の受取人以外の人物でなければなりません。市販のものには、「二人の署名」とだけ記されていることも考えられますので、有効性の点でも注意が必要です。
〈おことわり〉
記事はあくまでも概要の説明であり、特定の案件について法律的助言を与えるものではありません。個々の案件についての詳細は、必ず法律専門家の助言を受けて下さい。
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