日本クラブ・高橋書道教室
書道を通して人生を豊かに
窓の下の騒々しさをよそに、生徒たちが黙々と墨を擦るのは、ミッドタウンにある「日本クラブ」で開かれている書道教室。現在30名以上の門下生を高橋春菫(しゅんきん)が指導する。昭和3年に創立された光荘会で師範の位にある高橋は、東京芸術大学油絵科を卒業した後、ニューヨークに渡り芸術活動を続ける傍ら、30年前からこの書道教室を主宰している。
習熟度に即したお手本を頼りに、各自が課題に取り組む。「一人ひとりの個性が大切。基本さえ出来ていれば、どこまでもクリエイティブに、自分を表現していいのです」。2時間の授業の中で書き上がった作品を、先生に提出。それぞれ丁寧な指導を受ける。
「私は日本の書を一つの造形と考えます」という高橋。とくに重点を置くのは平安時代の「変体仮名」だ。仮名は中国にはない日本固有の文字。筆を寝かせて書く俯仰法や、字と字の間の空間重視、といった特性はもとより、漢字とは違う独特の精神性がある。
「たおやかな仮名の流れの線を出すようにね」と高橋に朱筆を入れられたのはナインハム由起子。銀行での多忙なキャリアに一段落つけた時、この書道教室に巡り会ったと言う。「書道の一本きちっと通った所が好き」と語る。今年で3年目の今道和加は、真剣な面持ちで平安仮名を書写。「この教室の自由さに魅了されました。日本で習っていたものとは全く違うイメージです」。コネティカットから通う扇原榮子は「海外にいると日本文化の魅力を無性に感じますね」と話す。
趣味で熟年ライフを謳歌する林典子は、新年に向けて「子(ね)」の字を使ったグリーティングカードを作成。「テンポの速い現代生活のふとしたところに、毛筆で書いたものを生かせるといいですね」。あくまでも「人生を豊かにするための書道」が高橋流である。
門下生で一番の古株はグラフィック・デザイナーのスティーブン・フェラーリ(書号「聴雨」)。15年前から高橋に師事しているフェラーリは、日本の専門誌に出品するほどの腕前だ。最新作を吟味する高橋も、「長年の修練の結果としての安定感があります。スティーブンの字には一本の大樹を感じます」と語る。
日本人、アメリカ人、初心者、熟練者の分け隔てなく、日本が誇る「書道」の魅力を伝えてきた高橋教室。生徒の多くが、ここで日本と書道、そして「自分らしさ」を再発見する。
(文中敬称略)
日本クラブの高橋書道教室は全10回で、火曜日クラスと土曜日クラスを開催。新学期は火曜日クラスが1月22日、土曜日クラスは同26日から。クラブへの通学が困難な人には、金曜日にブルックリンの高橋の自宅での受講も可能。
【問い合わせ】
日本クラブ TEL: 212-581-2223