ハーモニヤ・オペラ・カンパニー
日本のオペラで若いパワー全開
スタジオの中には、熱気と緊張感が漂っている。「ハーモニヤ・オペラ・カンパニー」の創立26周年記念公演の舞台リハーサルでは、「もう一度!」「だめだめ、そうじゃない!」と飯沼恵美子の指導が続く。
アメリカと日本の文化交流の架け橋になることがやりたい、と飯沼がこのオペラ団を創立したのは26年前のことだった。「アメリカでは、オペラやミュージカルでまだまだ日本人に与えられるチャンスの場は少ないです。若い日本人にステージに立てる機会を与えたいと思って始めました」。つらいこともたくさんあったが、やる気のある若い人材が育っていくのが楽しくてしかたがない、と微笑む。ここで育った才能ある日本人たちの中には、帰国してから「劇団四季」で活躍している人もいる。
オペラの形にとらわれることなく、ミュージカルの要素も取り入れ独自の舞台を繰り広げるハーモニヤ・オペラ・カンパニー。今回の公演は歌舞伎の狂言を基にした内容だが、リハーサル・ピアニストの藤原美希は、「曲のリズムが複雑で、動きのタイミングを合わせるのが難しい」と言う。出演者は歌唱力と演技力、そしてダンスのスキルさえも要求されるのだ。
日本人だけではなく、アメリカ人のメンバーも出演する。主役のドリアン・バリスは、「ござる」「あらせられ」といった、日本人でも今ではなじみの薄くなったせりふを難なく言いこなす。「昔の日本語を学ぶのは大変ですが、日本の文化や芸術を理解するいい経験になっています」と楽しそうだ。
他にも相澤結、石橋淳美、陳威仲、クリスチナ・ゴンザレス、エリン・シールド、ダグリン・シュミット、振り付けのヘレン・モス、照明技術のデイビッド・ランダウなど、様々な人の力が一つになってステージは完成されていく。今回、特別出演する東京国立劇場専属のソプラノ・オペラ歌手、鷲尾麻衣は「表現力があれば人種を越えて何かを伝えることができるはずです」と強いまなざしで話す。
そんな中、「こらっ!静かにしなさい!」とスタジオに響く飯沼の声。ひょうきん者の遠田礎史が、叱られている。「礼儀作法というかしつけのようなことまでやっていますよ」と飯沼は苦笑するが、その叱責の声にはやさしさがあふれていた。厳しい中に見え隠れする飯沼の愛情の元で、日本のオペラの行き先を担う、若く才能ある団員達はすくすくと育っていた。
(文中敬称略)