日系人会書道クラス
一筆入魂!文字に宿る不思議な力
人は文字を使って知識を伝え、悲しみを綴り、愛を告白した。文字を書くことは想いを紙に乗せて運ぶことだった。ニューヨーク日系人会で開かれている書道教室を覗くと、ふんわりと香る墨の匂いが、文字の持つ奥深い意味を思い出させてくれる。「私が若い頃は、恋文だって筆で書いたものですよ、うふふ」と笑う大坪フサ子がこの教室の師範。週に1度の教室が楽しみで「月謝を貰うどころか、自分が払いたいくらい」という朗らかな先生だ。
教室では生徒それぞれが自分のペースで筆を運ぶ。「摩」「里」「紗」と一文字一文字、力を込めて書いていたのは、書道歴4カ月の貞子カルカニョ。実はこれ、マリッサちゃんという孫の名前をあて字にしたもの。「イタリア人のお嫁さんに頼まれてね。この際だと思って教室に参加しました」と楽しげに語る。あて字選びには師範の大坪の知恵を拝借した。「摩」は「美しい鞠」、「紗」は「生糸の織物」を表す文字。それぞれの文字にお婆ちゃんから孫娘へのメッセージが込められている。「文字には沢山の想いが宿っています。一文字一文字が力を持っているのですよ」と生徒に説く大坪。普段気がつかない文字の奥深さを知るとき、生徒の表情は好奇心で弾ける。
「書道も好きだけど、やっぱりおしゃべりが楽しいね」と言うのはムードメーカーの石塚由里。休憩中もテキパキと教室中を動いて、お茶やお菓子を配って回る。同じ文字を繰り返し練習していたのは、書道歴2カ月半という多田瑞枝。リタイアを機に始めた書道だったが、その面白さにのめり込んだ。「まだまだ上手に書けませんが、自分なりの味がある文字を書きたい」と目標を掲げる。書道歴5年の山崎桃子は、他のメンバーの娘世代にあたる最年少の生徒。しかし筆を握るとその表情は一変、ダイナミックな草書を披露した。「もうすぐ初段の試験を受けるので、今は追い込み」と神妙な面持ちを見せたが、そんな緊張もメンバーたちのジョークですぐにほぐれた。終始和やかな雰囲気がその場を包む。「やっぱり人生の先輩の皆さんはすごいです。書道以外にも学ぶことがいっぱいです」と笑った。
大坪がそっと耳打ちした。「知っていますか?文字には書く人の性格や、そのときの気持ちが表われるんです。だから皆さんの書を見るのは、いつも発見があって楽しいんです」。心を込めてしたためた文字は、何にも優る特別なメッセージになる、と教えられた。
(文中敬称略)
書道教室は、ニューヨーク日系人会にて毎週火曜日の午後1〜4時開講。受講料は日系人会会員9ドル/1回、非会員15ドル/1回。申し込みは電話、メールにて受付。書道の道具の貸し出しもしている。
ニューヨーク日系人会
TEL: 212-840-6942/6899
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