ニューヨーク囲碁センター
碁盤目状の街で碁盤を囲む
落ち着いた佇まいをみせるミッドタウン・イーストの一角。絵に描いたようなニューヨーク的生活が営まれていそうなタウンハウスの扉を抜けると、そこには19×19の碁盤がズラリと並ぶ。日本棋院アメリカの活動拠点、ニューヨーク囲碁センターだ。
「これほどお金もかからず、交友の輪も広がる趣味はない」と、囲碁の素晴らしさを語るのは垂井信朗。 先月日本クラブで行われた大会で優勝に輝いたニューヨークの囲碁界の若手実力者だ。
その垂井とビール片手に向かい合うのは小林繁。本職は大工で、この囲碁センター開設の際に、内装を担当したことがきっかけで囲碁との本格的な付き合いが始まったという。「だいたい(ビールを)3本くらい空けるとひらめきが良くなる」と話す小林だったが、「今日は飲み過ぎてダメ」と、この日は負けが込んでいる様子だった。
一方、アメリカ人を相手に盤を挟んでいたのは赤井勲。現在5段の腕前で、日本棋院からニューヨークでの碁の普及・発展のために派遣されている海外普及員だ。大学のとき、あまりの熱の入れように教授から禁止令が出たり、その後も仕事の関係で棋士のいないアフリカや中米に駐在したりと、数々の「障壁」を乗り越えながら、囲碁歴50年を迎えた。現在は囲碁を通じ、言葉を越えた国際交流に貢献している。
その隣では、高部正雄がアメリカ人の初心者への指導をしていた。外国人への碁の指導に力を注ぎ、これまでに指導した生徒数は60人以上にのぼる。この日、長男のウィリアム、次男のベンとともに、高部の指南を受けていたのは、高校の数学教師ポール・ロックハート。「数学は囲碁に応用できる。またその逆もある」と、数学教師らしいコメントだ。
ボリス・ベルナンドスキーも高部の教え子のひとり。高校生のボリスは、英語版少年ジャンプ連載の漫画「ヒカルの碁」を読んで囲碁の世界に足を踏み入れたという。囲碁歴はまだ1年ほどだが、ベテラン棋士たちに次々と果敢に勝負を挑んでいた姿が印象的だった。
年齢も国籍も違う者同士で白と黒の碁石を打ち合う。一見、意外ではあるが、これぞニューヨークならではの光景とも言える。この日も「パチリパチリ」という碁石の音による無言の会話は夜更けまで続いた。
=文中敬称略
日本棋院直轄で、日本棋院アメリカの活動拠点。毎週火〜金曜日の午後5時30分〜午後11時までと、土、日曜日の午前11時30分頃〜午後11時頃まで、会員同士で囲碁を楽しんでいる。また、様々な囲碁トーナメントも随時開催。初心者から上級者まで、年齢を問わず会員を募集している。非会員も1日7ドルでビジター利用可能だ。
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