ニューヨーク・メンズ・クワイア
夜空に響く男達の歌声
ミッドタウンの某所で週に一度、アフターファイブに「密会」を楽しむ男たちがいる。日本唱歌やアニメの主題歌のメロディーに乗せて美声を響かす彼らは、男声合唱団「ニューヨーク・メンズ・クワイア(NYMC)」のメンバーだ。
指揮者の伊藤玲阿奈から、12月の演奏会の会場決定の報告があったこの日。NYMCが、活動の軸とする年1回の定期演奏会だけに、このニュースに一同、意気込みを新たに発声練習に入った。
メンバーの半数を占めるのは、カラオケ以外では歌に触れたことがなかったという人たち。 中家忠信(メットライフ)もその一人。「コーラスなんて軟弱と思っていたが、体育会系の合唱団があると聞いて」というのが入団のきっかけだそう。藤田哲哉は入団1年目。数年前に彼らのコーラスを聞いて感銘、リタイアを機に入団した。
そんな彼らも伊藤を始めとするプロの指導のもと、2005年6月にはカーネギー大ホールに出演。また、2004年6月にはマリナーズ戦のヤンキース・スタジアムで、日本人として初めてアメリカ国歌を披露する偉業も成し遂げた。NYMC設立時からのメンバー、遠田礎史(シスコム)は「4万人の拍手はすごかった」とその時の興奮を振り返る。小田健三は「緊張していたが、歌い始めると吹っ切れた」と語る。
一方、木村達也(住友ファルマ)は、審査用デモテープには参加しながらも、仕事の都合で惜しくも本番には参加できなかった「陰の立役者」。その後も「再び大舞台でのチャンスを」と日々鍛錬に励んできたが、実は木村にとってこの日が最後の練習。日本への帰任が決まってしまったのだ。
「演歌調」で鳴らした彼の退団は、NYMCにとって大きな損失。しかしこの木村、同じオフィスに2週間前に着任したばかりの岸謙二を「後任」として連れてきていた。岸は「見学だけなんです…」と言いながらも合唱の輪に入ると、結局全曲を共に熱唱。一同からも「もう逃がさない」と新戦力としての歓迎を受けた。
練習終盤には、2年前に何百回と練習した思い出のアメリカ国歌を木村がリクエスト。NYMCらしい、歌による「馬の餞」となった。さらに練習後の路上でも「お別れ合唱会」が開かれるなど、ミッドタウンの夜空にいつまでも歌声を轟かせていた。
=文中敬称略
ニューヨーク唯一の日系男声合唱団。プロの指導のもと、20代から70代という幅広い年齢層の団員が合唱を楽しむ。練習は毎週火曜日の午後7時から9時まで、ニューヨーク日系人会館(15 W. 44th St)にて。毎年12月の定期演奏会のほか、不定期のミニコンサート、合宿などレクリエーション活動も盛ん。未経験者歓迎。混声合唱の女子団員も同時に募集している。
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