2019/04/12発行 ジャピオン1013号掲載記事

心と体のメンテナンス

運動による膝痛予防と改善(後編)

簡単な運動で筋力アップ 膝関節にかかる負担軽減

膝痛予防のため運動が大切なのはなぜですか?

膝関節の軟骨の減少、靭(じん)帯・腱(けん)・半月板の炎症や損傷など、膝の痛みの原因はさまざまです(前編参照)。しかし、原因が何であれ、予防の基本は膝にかかる負担を減らすこと。そのためには、運動によって膝関節を支える筋肉を鍛え、さらにストレッチ体操によって硬くなった筋肉を伸ばし、柔軟性を保つことが大事です。


歩き方も膝痛に関係がありますか?

歩き方が悪いと、膝や足首に負担がかかり、体全体の骨や関節のバランス(アライメント)が崩れ、体の至る所に問題が出てきます。膝に負担をかけない「正しい歩き方」を説明しましょう。

おなかに力を入れて背筋を伸ばし、視線は地面と平行のまま遠くを見ます。つま先を正面に向け、振り上げた脚の踵(かかと)から着地します。その際、膝は真っすぐ伸ばすこと。着地した足底にかかる重心を、踵から足裏のやや外側に沿って親指の方に移動し、親指のつま先で蹴り上げて前進します。靴の裏を見たとき、踵の外側と、親指付け根のすぐ下がすり減っていれば、正しく歩けています。

ヒールが高い靴を履いているときは、踵からではなく、つま先とヒールを同時に着地させることがポイントです。

靴の選び方で気を付けることは?

ジョギングやランニング用シューズは、衝撃を吸収するクッション性に優れた軽量タイプをお勧めします。ランニング初心者には、特にクッション性が大事です。

サイズは、履いたときに踵がフィットし、つま先に手の指幅1本分の余裕があること。横幅は、親指付け根部分の骨が浮き出ない程度にぴったりのものが理想です。専門知識を持つ店員に、足の形やニーズに合ったシューズ選びのアドバイスをもらうと安心です。

普段履く靴も、足に合っているか、履き心地はどうかを必ず試着して確かめましょう。

ヒールが高い靴の場合、歩行時に体重がつま先に集中すると、前傾姿勢になって膝に負担がかかるので、体重を足裏全体で支えているかどうかに注意してください。慣れない人は、ヒールが太いタイプか、ウェッジヒール(底が平らな靴)の方が、足元が安定するかもしれません。ただ、デザインによってはヒールが細くても安定し、太くても不安定なタイプもあるので、試着は欠かせません。試着は、脚がむくむ夕方以降にしましょう。

理学療法による膝痛の治療例を教えてください。

膝関節の軟骨がすり減り、膝痛で歩行が困難になった70代女性の例をご紹介します。軟骨以外にけがや問題はなかったので、週1回通ってもらい、膝周り、太もも、お尻、ふくらはぎの筋肉を鍛える運動とストレッチ体操に取り組み、同時に硬くなった筋肉をほぐすマッサージと、体のバランスを改善する運動を行いました。簡単な運動を指導し、自宅でも毎日続けてもらいました。

最初は痛みで運動も困難だったため、女性は専門医のもとでステロイドの一種であるコルチゾン注射を受け、痛みを抑えていました。膝痛は徐々に改善し、6週間の治療終了時には、つらかった歩行はもちろん、階段の昇降も問題なくできるようになりました。

別の30代女性は、膝前面が痛む膝蓋大腿(しつがいだいたい)症候群の診断を受け、好きなランニングができなくなりました。週1~2回、約3カ月間通ってもらい、お尻と脚の筋トレとストレッチ中心の治療を続けた結果、痛みから解放され、ランニングを再開することができました。

ランニングを休んでいる間も、女性は筋トレに加え、膝に負担をかけない程度の運動を継続しました。運動を完全にやめると筋力が低下し、体重も増えて膝には逆効果だからです。

膝痛予防や治療のため、どの筋肉を、どんな運動によって鍛えるかは、個々の状態や運動能力によって異なります。間違った運動はけがや症状悪化の原因になるので、理学療法士などの専門家から指導を受けることをお勧めします。痛みをけがや年のせいとあきらめず、早めに専門家に相談してください。

※次回は、小柳乃里子先生に女性生殖器がんの予防とスクリーニングについてお聞きします。

お尻と太もも裏側の筋肉を鍛えるストレッチ体操の例。脚を肩幅に開いて膝を立て、お尻を持ち上げる。腹部に力を入れ、お尻をキュッと引き締める。これを1セット10回、1日3セット繰り返す
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城戸亜幹絵さん
Akie Kido, DPT

理学療法士。コロラド州立大学の統合生理学部卒業後、ニューヨーク州のセイジ大学大学院から理学療法博士号(DPT=Doctor of Physical Therapy)取得。クリニックや病院で臨床経験を積む。首、肩、膝、足首、手首、腰など全身の痛みと不具合の治療、けがや手術後のリハビリテーションが専門。自閉症やダウン症患者向け治療も手掛ける。

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