2018/11/23発行 ジャピオン994号掲載記事

心と体のメンテナンス

歯周病治療と歯科インプラント(後編)

インプラントは〝最終手段〟 手術前に歯周病治療を徹底

歯科インプラント治療について教えてください。

虫歯や歯周病によって失った歯を、歯根ごと人工歯で置き換えるのが、歯科インプラント治療です。ブリッジや入れ歯といった従来の治療法に比べて審美性が高く、自分の歯(天然歯)に近い感覚でかむことができます。

治療では、まず手術によって歯肉(歯茎)を切開し、歯を失った部分の顎の骨に金属製の人工歯根(インプラント)を埋め込みます。インプラントと骨が結合するのを待ってから、その上にクラウン(被せ物)などの人工歯を装着します。これが大まかな流れですが、治療で使う部品や術式には複数の選択肢があります。インプラント埋入部位の骨の量が不十分なら、事前に骨を補う治療を行います。

日本と違い、アメリカでは歯周病専門医(periodontist)がインプラント埋入手術を行い、一般歯科医やその他専門医が人工歯装着を担当するのが一般的です。歯周病専門医とは、歯周病などの歯茎の感染症と病気の治療、歯肉手術、インプラント手術の専門家です。インプラントを適切に埋入するためには、特別な訓練を受けた専門医の高い技量と知識が求められます。

少数ですが、私のようにインプラント埋入から人工歯装着までを手掛ける歯周病専門医もいます。


インプラント治療前に歯周病治療が必要なのはなぜですか?

歯周病とは、歯垢(plaque)や歯石(tartar)の中にある細菌が歯茎に感染し、歯の周りに炎症が起きた病気です。歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が徐々に失われ、最終的に歯が抜けるか、抜歯せざるを得なくなります。歯周病を放置してインプラント治療を行うと、歯周病を起こしたのと同じ細菌がインプラント周囲の組織に感染し、再び炎症を起こす可能性があります。最悪の場合、インプラントを支える骨が失われ、インプラントを抜くことになります。

歯周病になるときは、1、2本の歯に留まらず、ほかの歯の周囲にも問題が起きていることがほとんどです。そのため、口の中全体を検査し、炎症や歯周病があればそれを治療し、インプラント埋入前に細菌をすべて退治しておきます。

歯周病治療は、インプラントを長持ちさせること以上に、残された歯を守るために重要です。歯周病が原因で歯を失った人は、今は無症状でも、近い将来ほかの歯も失う可能性が非常に高いからです。


インプラント治療後のメンテナンスは?

治療後は虫歯になる心配がなく、天然歯のように手入れに気を使わなくていいと思っている人が多いのですが、それは大きな間違いです。むしろ、インプラント治療後こそ頻繁な定期検診/歯垢や歯石を除去する「口腔内クリーニング」が大事です。

歯周病で歯を失う人は、日ごろの歯磨きやデンタルフロスによる手入れが不十分で、歯茎が細菌感染したケースがほとんどです。インプラント治療後も手入れを怠ると、再び細菌に感染し、インプラントを抜く羽目になるのはお話しした通りです。

インプラントを抜いた後は、骨量がさらに減っているので、インプラントを埋め直す治療は非常に困難です。治療選択肢が限られ、例えば40代でインプラント治療を受け、50代で問題が起きた人は、その後数十年間を入れ歯やブリッジで過ごすことになります。


歯を守る治療が大切なのはなぜ?

私はインプラント専門医ですが、安易な抜歯とインプラント治療には疑問を感じます。インプラントは優れた治療法ですが、機能面で自分の歯に勝るものはありません。

治療すれば終わりではなく、治療後の不十分なケアはもちろん、手術のミスによって問題が起きることもあります。私はコロンビア大学歯学部で毎年数千件のインプラント治療を指導していますが、細菌感染による問題は多く、過去の治療ミスによって再治療に至ったケースも少なくありません。治療後何年もたってから表面化した問題は、治療が困難で時間もかかります。

インプラントは、歯をどうしても救えなくなった場合の最終手段です。必要ならセカンド/サードオピニオンを求め、できるだけ長く歯を守る方法を検討してほしいと思います。

※来週は、表西恵先生にホリデーブルーについてお聞きします。

写真上)インプラント治療後のレントゲン写真。3本のインプラントが顎骨(写真下半分の白く映った部分)に結合している。写真下)数年後、インプラント周囲の歯茎が細菌に感染し炎症が発生。歯槽骨の50%以上が失われ、インプラントを抜かざるを得なくなった(写真提供:カン先生)
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フィリップ・Y・カン先生
Philip Y. Kang, DDS

歯周病専門医師(board certified)。歯周病治療や歯科インプラント手術を含む歯肉手術が専門。ミシガン大学歯学部卒業後、ハーバード大学、ペンシルベニア大学で歯周療法学の専門コースを修了。コロンビア大学歯学部歯周療法学科ディレクター、同大教授として歯科医師や学生を指導する。大塚歯科医院で10年以上の日本人患者診療経験がある。

大塚歯科医院

Parkside Dental Associates
1617 Parker Ave.
Fort Lee, NJ 07024
TEL: 201-461-0130
※日本人スタッフ常駐

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