2018/11/16発行 ジャピオン993号掲載記事

心と体のメンテナンス

歯周病治療と歯科インプラント(前編)

自覚症状がない歯周病 歯を失う原因の第1位

歯周病にかかりやすい人とは?

歯周病の主な原因は歯垢による細菌感染で、口腔内の衛生状態が悪い人は誰でも発症する可能性があります。喫煙、強いストレス、糖尿病などの病気によって免疫力が低下している人は、歯周病発症リスクが大幅に上昇します。両親が若いころから入れ歯を使っているなど、若くして歯を失った家族がいる人も要注意です。

私は日本人患者を10年以上診療してきましたが、アメリカ人患者に比べ、歯茎に問題を抱える人が多いようです。一般的に、アメリカ人は予防を重視し、6カ月や3カ月に1回の定期検診/歯垢や歯石を除去する「口腔内クリーニング」を習慣にしています。対照的に日本人は、問題が起きてから受診する人が多く、歯周病も重症化してから来院する人が目立ちます。


歯周病と全身の病気との関連は?

これまでの研究から、歯周病は糖尿病や心疾患、骨粗しょう症、関節リウマチ、がんなどの全身の疾患に関連し、発症リスクを上昇させる可能性が指摘されています。

歯周病もこれらの病気も、慢性的に炎症が起きた状態です。歯周病になると、体が細菌と戦う過程で炎症が生じ、「炎症物質」が作られます。炎症物質と細菌が血流に乗って全身に運ばれると、慢性炎症が悪化し、体に悪影響を与えると考えられています。

妊婦は、歯周病によって早産や低体重児出産リスクが上昇する可能性があります。妊娠を計画している人は、早めに治療しておきましょう。また、妊娠中はホルモンバランスが変化し、歯茎の腫れや出血が起きやすいので、速やかな受診を心掛けてください。


歯周病は予防できますか?

できます。お話ししたように、主な原因は細菌感染です。日ごろから歯磨きやデンタルフロスによる手入れを徹底し、さらに定期的な歯科検診と歯科衛生士によるクリーニングを継続することにより、原因を作らないことが大事です。

当院は、定期検診時に日々の正しい手入れ方法を指導し、必要あれば〝クリーニングツール〟を紹介しています。例えば、デンタルフロスが苦手という人は、水圧で食べかすを取り除くウォーターピックで代替できる場合もあります。


歯周病になってしまったら?

治療の基本は、原因を取り除き、炎症を解消することです。問題が起きている場所や重症度によって、適切な方法を判断します。

初期の歯周病は、歯ブラシや専用器具を使い、歯科医院で歯垢と歯石を取り除くことで治療します。約3カ月後、状態が改善していなければ外科手術を検討します。患部の歯茎をメスで切り開き、歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)の奥に入り込んだ歯垢や歯石を掻き出します。

このように、体に負担の小さい「保守的な治療」から始め、それで治らなければ積極的な方法に移ります。歯周病は5~7年という長い時間をかけて進行するだけに、治療にも根気よく取り組む必要があります。

歯槽骨が失われた重症のケースも、骨を〝再生する〟治療によって、天然歯を抜かずに守れることもあります。牛から抽出した骨再生成分や患者自身の骨を利用するなど、複数の選択肢があります。主治医から抜歯を勧められた場合もあきらめず、経験豊富な歯周病専門医(periodontist)からセカンドオピニオンを得ることを強くお勧めします。

※次回は、歯科インプラントについて伺います。

加齢や歯周病によって歯茎が退縮し、歯根が露出した状態。レントゲン検査の結果、歯を支える歯槽骨も失われていた(上)。歯茎と歯槽骨の再生治療後、見た目に美しくなり、知覚過敏も解消した(写真提供:カン先生)
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フィリップ・Y・カン先生
Philip Y. Kang, DDS

歯周病専門医師(board certified)。歯周病治療や歯科インプラント手術を含む歯肉手術が専門。ミシガン大学歯学部卒業後、ハーバード大学、ペンシルベニア大学で歯周療法学の専門コースを修了。コロンビア大学歯学部歯周療法学科ディレクター、同大教授として歯科医師や学生を指導する。大塚歯科医院で10年以上の日本人患者診療経験がある。

大塚歯科医院

Parkside Dental Associates
1617 Parker Ave.
Fort Lee, NJ 07024
TEL: 201-461-0130
※日本人スタッフ常駐

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