2018/10/26発行 ジャピオン990号掲載記事

心と体のメンテナンス

性交渉の悩みと対策(後編)

OTC薬で問題解決も 婦人科で気軽に相談を

膣(ちつ)の萎縮が原因の性交痛とは?

更年期や閉経後の中高年女性の場合、膣の入り口付近の痛みの多くは、膣の粘膜の乾燥と萎縮、つまり膣の潤いが失われ、膣自体も縮む/狭くなることが原因と言われています。

更年期になると、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が減少し、さまざまな症状が出てきます。膣の萎縮もその一つ。粘膜が薄く平らになり、膣の自然な潤いや弾力が徐々に失われます。

膣の萎縮によって起きる問題は、性交痛だけではありません。下半身の、いわゆる「デリケートゾーン」の違和感やかゆみ、痛みが普段から気になり、生活に支障を来すこともあります。ただし、膣が委縮するタイミングと症状には個人差があり、症状が全く気にならない人もいれば、膣が下着でこすれるだけで激痛が走るという人もいます。


すぐに試せる性交痛緩和法はありますか?

「痛みがつらくて性交を楽しめない」「痛みが怖くて性欲自体がなくなった」などの悩みがある場合、市販薬(OTC薬=over-the-counter drugs)の女性用潤滑剤(lubricant)の使用をお勧めします。性交渉の前に膣内部や周囲に塗ることで、膣に潤いをもたせ、痛みを緩和することができます。

薬局には、実に多くの潤滑剤が並んでいます。最初はなるべく低刺激の、無香料のものを試すといいでしょう。潤滑剤は、更年期以降の女性に限らず、膣の潤い不足が原因の性交痛で悩む全ての女性、特に産後に性交渉を再開したばかりの女性にも有効です。

血液を介してうつる性感染症(STD=sexually transmitted diseases)の予防にも、潤滑剤は役立ちます。膣が乾燥していると、挿入時に粘膜が傷ついて出血しやすく、それだけ感染リスクが上がるからです。言うまでもなく、特に不特定多数のパートナーがいる人は、STD予防のためにコンドームを使用してください。


日常的な膣の乾きは解消できますか?

OTC薬の膣用保湿剤(vaginal moisturizer)の使用は、改善策の一つです。潤滑剤は性交時にだけ使いますが、保湿剤は、普段の生活で経験する膣の乾燥やかゆみを和らげる効果があります。

ちなみに、デリケートゾーンがかゆい場合、何らかの感染症や接触性皮膚炎(かぶれ)の疑いもあります。そのため、婦人科で診察するときは、かゆみのある場所や症状はもちろん、シャンプーや洗剤、生理用ナプキンのブランドを最近変えなかったかなど、かぶれの可能性を問診によって探ります。かぶれであれば、原因を取り除かない限り、治すことができません。


膣の萎縮そのものを改善する治療法はありますか?

OTC薬の保湿剤や潤滑剤を試しても、症状が十分に緩和しない場合、エストロゲン成分を含むクリームやジェル(処方薬)を膣内に入れる局所療法を検討します。治療効果には個人差がありますが、私の患者さんでこの治療を長年受けてきた女性の中には、60代、70代になっても膣に若い頃のような潤いがあり、萎縮もしておらず、伸縮性も保たれている人がいます。

更年期障害の治療として、エストロゲンなどの女性ホルモンを飲み薬やパッチ剤で補う「ホルモン補充療法」を行ったら、膣の乾燥も改善し、性交痛が緩和したという人もいます。ちなみにホルモン補充療法は、更年期のホットラッシュ(ほてり)に特によく効くとされています。


性交痛やデリケートゾーンの悩みは婦人科で相談できますか?

できます。長年の悩みも、OTC薬で簡単に解決できるかもしれないし、逆に仕方ないとあきらめていたことが、実は重大な病気の症状であることもあります。性交痛も、痛みが膣の奥の方であれば、何らかの病気が原因かもしれません。まずは気軽に婦人科医に相談してください。

性交痛の原因として、前戯(ぜんぎ)に時間をかけず、膣に潤いを持たせる前に挿入に至っている可能性もあります。性交痛がつらいときは相手と率直に話し合い、2人が共に楽しめる方法を探し、練習を重ねることも大事です。

※来週からはカストロ・岡牧子さんに、姿勢と食生活改善を柱とする健康法についてお聞きします。

性交痛緩和や膣の乾きへの効果をうたったOTC薬の種類は豊富。写真は女性用潤滑剤のK-Y Jelly(左上)とAstroglide(右上)、膣用保湿剤のReplens(手前)。いずれも婦人科医師が推奨することの多い代表的ブランド
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常盤真琴先生
Makoto Tokiwa, MD

産婦人科医師。山形大学医学部卒業後、日本医師免許を取得。東北公済病院での研修を経て来米し、ニューヨーク大学産婦人科研修を修了。妊婦健診、出産、避妊法の相談、閉経前後のケア、婦人科検診(乳がん・子宮頸がんの検査他)、子宮筋腫・卵巣嚢腫などの良性疾患の手術など。コロンビア大学病院臨床准教授。

Columbia University Dept. of Obstetrics & Gynecology

●161 Ft. Washington Ave., 4th Fl.
●5 Columbus Circle, 12th Fl.
●516 Route 303, Orangeburg, NY 10962
TEL: 855-756-2496(産婦人科代表)

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