2018/09/14発行 ジャピオン984号掲載記事

心と体のメンテナンス

無理なく楽しむ母乳育児(後編)

トラブルは早めに解消 頑張った経験が自信に

産後の訪問母乳ケアについて教えてください。

「母乳が十分に出ているか分からない」「授乳時に乳首を吸われると、飛び上がるほど痛い」など、産後の母親はさまざまな不安やトラブルを抱えています。訪問母乳ケアとは、「国際認定ラクテーションコンサルタント」という資格を持つ母乳育児専門家(前編参照)が家庭を訪問し、そういった母乳育児の相談に応じるサービスです。

相談内容は、母乳が出にくい、授乳時に異常な痛みがある、触ると乳房にしこりを感じる、授乳や搾乳の適切なタイミングと頻度が分からない——など、多岐にわたります。

アメリカでは産後に母乳育児専門家の指導を受けるのはごく普通のことで、産後1週間以内に予約を入れる母親が多いです。

訪問母乳ケアでは何をしますか?

相談内容が何かに関係なく、まずは普段の授乳の様子や頻度、子供と母親の健康状態などを評価します。そのため、授乳時の子供の乳首への吸い付き、舌の動き、母親の姿勢と子供の抱き方などを観察し、さらに子供の口の中を触診します。体重測定も必須で、授乳前後の体重の差から、子供が実際に飲んだ母乳の量を算出します。

よくある相談内容の一つに、「母乳不足感」があります。乳首を直接赤ちゃんの口に含ませていると、子供が実際どれだけ飲んでいるか分からないので、量が足りているか不安になるのです。小児科医から順調に育っていると言われていても、どうしても気になってしまうのが母親というもの。母乳育児専門家は、子供が母乳を飲む様子、体重の増え方、1日のおむつ使用量や濡れ方などから、摂取量が適切かどうかを判断します。

母乳はちゃんと作られているのに、子供が十分に飲めていないこともあります。その場合、授乳時の子供の抱き方が不適切で、子供が乳首をしっかり口に含めていないとか、授乳の頻度が低い・授乳時間が短いことなどが主な原因です。

授乳時の乳首の痛みも、不適切な抱き方からきていることがあります。子供が不自然な位置から乳首を含み、無理に吸おうとするので乳首が切れてしまうのです。乳口炎(乳管開口部の炎症。乳頭に白斑ができる)やカンジダ症(カビの感染)、その他何らかの感染症が原因の場合は、医師による早めの治療が必要です。

このように訪問母乳ケアでは、母乳育児専門家が問題の有無やその原因を探り、子供の抱き方から乳首の含ませ方、授乳の頻度、場合によっては搾乳や哺乳瓶の使い方に至るまで、個々のケースに合った問題解決の方法をさまざまな角度から具体的にアドバイスします。

専門家にはいつ相談すればいいですか?

生後2週間以内を目安に、母乳が出にくい、乳首が切れたなど、不安やトラブルがあれば早めに相談してください。それ以降でも、もちろん解決はできるのですが、早めに対処すればそれだけ母親も子供も楽ですし、母乳育児を早く軌道に乗せることができます。

最近は母乳育児情報もインターネット上に溢れており、それらを基に自己流で問題を解決しようとする母親もいます。ですが、インターネットには誤情報も多く、間違いではないにしろ、情報自体が古いこともあります。

例えば、母乳がうまく出ないときなど、日本では昔から乳房マッサージが行われてきました。効果がないとは言いませんが、それでは根本的な解決にはなりません。母乳生産を促すためには、子供に正しい方法で頻繁に乳首を吸わせ、母乳生産のためのホルモン分泌を活発に保つ必要があります。子供が乳首を上手に吸えない、あるいは乳首が痛くて吸わせられないのであれば、その原因をまず取り除かなければいけません。

母乳育児を始める人にアドバイスを。

母親と周囲が協力し、不安や問題を一つずつ解消していってください。そういった経験は自信となり、将来子育てで何か問題が起きたときも、落ち着いて対処できるようになるでしょう。

教科書通りにいかないのが子育てです。専門家の力も借りながら、自分に合った子育てを楽しんでほしいと思います。
※来週は、宮野イブラヒム先生にインフルエンザについてお聞きします。

訪問母乳ケアでは授乳前後の子供の体重を乳幼児用体重計(写真)で測定し、その差から母乳摂取量を算出する
983-Kokoro1

ニッキー香月さん
Nikki Katsuki, IBCLC, CLC

米国・国際認定ラクテーションコンサルタント(CLC, IBCLC)。ニューヨーク市立ハンター大学栄養学部卒業後、ニューヨーク州母乳育児支援・栄養関連プログラムに栄養士、IBCLCとして参加し、後に同プログラムのアストリア支部所長に就任。現在もカウンセラー育成講師として携わる。2010年に独立し「Vital Choice」を設立。産後の訪問母乳ケアを提供するほか、母乳育児・離乳食・食の安全・卒乳の定期セミナーを日本語で開催。ニューヨーク州母乳協会会員。

Vital Choice

TEL
718-926-6074
WEB
https://vitalchoice.weebly.com/

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