2018/09/07発行 ジャピオン983号掲載記事

心と体のメンテナンス

無理なく楽しむ母乳育児(前編)

母子双方にメリット 家族の協力が不可欠

母乳が良いとされるのはなぜですか?

母乳の利点については、さまざまな研究結果が報告されています。例えば子供への利点は、▽免疫物質が豊富に含まれており、病気を予防する。中耳炎・風邪などの感染症、ぜん息・アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患にかかりにくくなる▽発育に必要な栄養素がバランス良く含まれる▽空腹時にすぐ飲める・消化吸収がよい▽腸内でビフィズス菌を増やす▽将来の糖尿病や高血圧、肥満などのリスクを低下させる――などです。

母乳の味に慣れた子供は、卒乳後の食べ物の好き嫌いが少ないこと、授乳中の母親とのスキンシップにより、情緒が安定することも利点です。母乳で育った期間が長い子供ほど知能指数(IQ)が高く、言語発達が早いという報告もあります。乳首を吸うことで顎が発達し、脳が刺激を受けることと関係があるようです。誤解しないでほしいのですが、粉ミルクで育った子供がIQが低く、言語発達が遅い訳ではありません。

母乳育児は母親にとっても利点が多く、▽産後の母体の回復を早める ▽妊娠中に増えた体重が落ちやすい ▽将来卵巣がんや乳がん、骨粗しょう症になりにくい ▽「幸せホルモン」として知られるオキシトシンの分泌が増え、子供への愛情が増し、精神的に安定する――などの研究結果が報告されています。

産後すぐに母乳は出ますか?出なければどうすればいいですか?

「母乳育児は、子供に乳首を吸わせていれば自然にうまくいく」と楽観視している人が多いのですが、実際には、多くの母親がさまざまなトラブルを抱えています。スムーズに母乳が出る人ばかりではありませんし、子供も最初から母乳を上手に飲めるとは限りません。

そうした母親を支援するために、母乳育児専門家がいます。母乳不足や授乳時の乳頭痛、子供の吸い付きが悪いなど、母乳育児に関する大抵の問題は、専門家の指導を受けることで解決できます。

アメリカで母乳育児専門家として活動するためには、「国際認定ラクテーションコンサルタント」という資格が必要です。特定の教育や研修を受け、国際試験に合格した人だけに与えられる資格です。発祥はアメリカですが、現在世界90カ国で2万5000人以上、日本にも800人以上の有資格者がいます。
母乳育児を望んでも、どうしても母乳が出ないか、出ても量が不足することもあります。 専門家の指導のもと、粉ミルクを併用、または粉ミルク単独で育てるという判断もあるでしょう。その場合も罪悪感を持たず、頑張ってきた自分を褒め、育児を楽しんでいただきたいと思います。

妊娠中に母乳育児について学ぶには?

専門書を読んだり、先輩ママの話を聞いたりするのもいいのですが、アメリカには身近にラクテーションコンサルタントがたくさんいるので、それら専門家のサービスを積極的に活用してほしいと思います。

私は妊婦と父親/パートナーを対象に、母乳育児セミナーを定期的に開催しています。母乳育児の利点、母乳の必要量といった基本的なことから、授乳時の姿勢・子供の抱き方・乳房の含ませ方、哺乳瓶・搾乳機の使い方、妊娠中の薬の服用や食生活に至るまで、幅広いトピックについて日本語でお話しします。

専門家から指導を受ける利点は、授乳について正しい方法・自分に合った方法を学び、母乳育児を迅速に軌道に乗せられることです。よくあるトラブルや対処法を知ることで、何か起きても落ち着いて対処できるようにもなります。

産科のある病院にはラクテーションコンサルタントが勤務しているので、出産後は退院までに授乳の様子を見てもらい、助言を受けるといいでしょう。

母乳育児は母親が一人で頑張るもの?

いいえ、母親と父親またはパートナーが協力して取り組むものです。母親の大変さや不安を理解し、周囲が育児や家事に積極的に参加することが、母乳育児を成功させ、幸福な家庭を築く糧となります。私のセミナーで、保護者揃っての参加を呼び掛けているのはそのためです。

さらには、シングルマザーこそ、われわれ母乳育児専門家を大いに利用していただきたいと思います。

※来週は、母乳育児の悩みや訪問ケアについてです。

香月さんの母乳育児セミナーでは、授乳時の子供の抱き方や乳房の含ませ方を細かく指導する。写真は母親が右利きの場合の「交差横抱き」を人形を使って説明しているところ
983-Kokoro1

ニッキー香月さん
Nikki Katsuki, IBCLC, CLC

米国・国際認定ラクテーションコンサルタント(CLC, IBCLC)。ニューヨーク市立ハンター大学栄養学部卒業後、ニューヨーク州母乳育児支援・栄養関連プログラムに栄養士、IBCLCとして参加し、後に同プログラムのアストリア支部所長に就任。現在もカウンセラー育成講師として携わる。2010年に独立し「Vital Choice」を設立。産後の訪問母乳ケアを提供するほか、母乳育児・離乳食・食の安全・卒乳の定期セミナーを日本語で開催。ニューヨーク州母乳協会会員。

Vital Choice

TEL
718-926-6074
WEB
https://vitalchoice.weebly.com/

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