2018/08/17発行 ジャピオン980号掲載記事

心と体のメンテナンス

人間ドックと定期健診を上手に利用 (前編)

日米で異なる予防医療 内容充実の人間ドック

人間ドックについて説明してください。

 自覚症状の有無にかかわらず、気になること、知っておきたいことを含め、体の各部位の検査をより幅広く、また一度にまとめて提供する予防医療サービスのことです。船舶が定期的に点検や修理を受けることを「ドック(dock=造船所)に入る」と言いますが、人間ドックという名前は、その「人間版」という意味の造語です。

 人間ドックは、日本で生まれたコンセプトです。検査項目の数によって半日コース、1日コース、2日コースなどの種類があり、患者が自分の年齢や健康状態などを考慮して選択します。各種がん検査、婦人科検査、消化器系・循環器系の検査などがオプションとして用意されており、希望者は追加費用を払って受けることができます。

 人間ドックは、普段気付きにくい病気や異常の発見に効果があり、特に生活習慣病(肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧など)の早期発見と予防につながると言われています。生活習慣病を放置すると、心筋梗塞や脳内出血など、命にかかわる病気の発症リスクが上がることが分かっており、健康で長生きするためには、早期治療と生活習慣改善を含む予防措置が重要です。

アメリカの定期健診と人間ドックの違いは?

いろいろありますが、大きな違いの一つは患者の費用負担です。人間ドックの場合、費用は基本的に全額自己負担ですが、アメリカでは年に一度の定期健診(英語で言うannual check up)に保険が適用されます。

 もともとアメリカの医療保険は基本的な予防医療をカバーするものが多いですが、2010年に医療保険制度改革法「アフォーダブル・ケア・アクト(通称オバマケア)」が成立し、14年に個人の保険加入が義務化されて以来、より多くの保険プランが予防医療をカバーするようになりました。

 定期健診は予防接種などとともに予防医療の一つとして位置付けられており、保険プラン加入者は1年に1回、無料で受けることができます。ただし、検査項目は人間ドックのように手厚くはなく、範囲はかなり限られます。

アメリカの保険がカバーする検査とは?

保険会社とプランによって異なります。自分が加入するプランが何をカバーするかについては、保険会社に問い合わせてください。

 参考までに、連邦政府の米国予防医学作業部会は毎年、年齢と性別で「推奨検査項目」をまとめており(★)、それを基準に保険適用の有無を決める保険会社が多いようです。推奨されなかった検査の費用は、患者がその一部または全額を負担します。

 例えば、検査によって病気の予防や早期発見と治療が可能になり、多くの患者が助かるというエビデンス(科学的根拠)が研究によって示されていれば、その検査はやる価値があると判断されます。しかし、「早期発見しても治療法がない・治療の必要がない」「偽陽性(本来は正常なのに、誤って異常と判断されること)が多い」「過剰治療や過剰検査による身体的・心理的・経済的負担が大きい」などの場合は、推奨が見送られる可能性があります。

 加齢とともに病気になるリスクは上がるので、25歳男性と55歳男性では、55歳男性の方が推奨される検査項目は当然増えてきます。家族歴(重大な病気を若いときに発症した家族がいる)がなく、喫煙歴もない健康な25歳男性は、「病気になるリスクは低い」と判断され、ごく基本的な検査しか保険でカバーされないかもしれません。

 大切なことは、保険適用の有無にかかわらず、必要な検査は、年齢、性別、家族歴、生活習慣を考慮した上で、患者ごとに判断されるべきだということです。

 乳がん検診のマンモグラフィーも、米国予防医学作業部会は40代で検査の開始について医師と相談すること、50~74歳女性には2年に1回の検査を受けることを勧めていますが、高リスク者はその限りではありません。同じ検査でも、学会によって推奨される開始時期や頻度が違うこともあります。自分にはどんなリスクがあり、今必要な検査は何かを知るためにも、人間ドックや定期健診をまずは受け、主治医と話し合うことをお勧めします。

※来週は、人間ドックや定期健診利用時のアドバイスなどについてです。

人間ドックで実施する目の検査の様子。中釜先生が勤務するクリニックでは、検査項目の数によって6種類のコースを提供する(写真はクリニックの看護師) ★米国予防医学作業部会(US Preventive Services TaskForce)HP:www.uspreventiveservicestaskfor ce.org。左端の枠内「Information for Consumers」をクリックし、開いたページ右端の「myhealthfinder」に必要事項入力
DrNakagama

中釜知則先生
Tomonori Nakagama, MD, MPH

産業・予防医学科認定医師(Board Certified)。プライマリー・ケア・フィジシャン(PCP)として、新生児から高齢者の家庭医学科・内科・小児科・産婦人科などの診療と人間ドックを担当。セーバー医科大学とイリノイ大学シカゴ校医学部産業・予防医学科を卒業後、イリノイ大学公衆衛生大学院で公衆衛生学修士号(MPH=Master of Public Health)取得。

Japanese Medical Care

•315 Madison Ave., 17th Fl.
TEL: 212-365-5066
•3010 Westchester Ave., #206
Purchase, NY 10577

TEL
914-305-8630
WEB
http://www..jmedical.com

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中発行

巻頭特集
「ニューヨークの家賃は学区で決まる」。そうささ...

   
Back Issue 9/14/2018~
Back Issue ~9/7/2018
利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント