2018/07/20発行 ジャピオン976号掲載記事

心と体のメンテナンス

コレステロール管理と健康(前編)

コレステロールは体に必要 「量」よりも「質」が重要

コレステロールとは何ですか?

 健康診断で血液検査を受け、「コレステロールが高い」と言われた方もいらっしゃるでしょう。「悪者」のイメージがあるかもしれませんが、実はコレステロールは、体を作るための大切な「材料」です。

 コレステロールは、食べ物から摂取する3大栄養素の一つ、脂質に含まれます。体に摂取された脂質は体内において、主にコレステロールと中性脂肪になります。体を作る一つ一つの細胞を覆う膜、生命活動を維持するホルモン、そして、脂質の吸収に必要な胆汁などは、コレステロールから作られます。一方、中性脂肪は体を動かすための「燃料」として使われます。

 コレステロールと中性脂肪を材料や燃料として全身に届けるには、血液に「なじませる」必要があります。しかし、脂はそのままでは血液になじまないため、実際にはその周りを、水と混ざりやすいタンパクの膜が覆っています。いわば、コレステロールという材料と中性脂肪という燃料を、一緒に丸い「乗り物」に入れたようなイメージです(イラスト参照)。この乗り物はリポ蛋白(たんぱく)と呼ばれ、材料配達型、回収型、燃料供給型など、役割に応じて5種類に分けられています。

「悪玉」「善玉」とは何ですか?

5種類の乗り物のうち、材料配達型のものをLDL(low density lipoprotein)と呼び、余った材料を回収するものをHDL(high density lipoprotein)と呼んでいます。LDLに含まれるコレステロールがLDLコレステロール、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれ、HDLに含まれるコレステロールがHDLコレステロール、いわゆる善玉コレステロールと呼ばれています。

 私たちは、料理に使わなかった食材を腐らないように冷蔵庫に保管しますね。それと同じように、余ったコレステロールも適切に保管する必要があります。その作業を担うのが「回収型」のHDLです。つまりHDLが不足すると、血管の中に過剰なコレステロールの供給が続きます。

 ここで、仮に血管に傷がついていた場合、傷口からコレステロールが血管の壁の中に入り込み、どんどん溜まることになります。こうして溜まったコレステロールの掃除は容易ではなく、結果的に血管を詰まらせてしまう原因となります。

 したがって、全身に配られるLDLコレステロールは、多ければ多いほど血管内にこびりつくリスクが高まります。一方HDLコレステロールは、多ければ多いほど過剰なコレステロールを適切に回収し、保管し、コレステロールが血管内にこびりつくリスクを軽減します。LDLコレステロールが「悪玉」、HDLコレステロールが「善玉」と呼ばれるのは、このような理由によります。

コレステロール値を適切に保つことが大切なのはなぜ?

一番の目的は、将来の冠動脈疾患(心臓を養う血管が詰まった結果起こる、心筋梗塞や狭心症といった病気)を防ぎ、健康を守ることにあります。

 ご説明したように、悪玉(LDL)コレステロールが増えるほど、血管が詰まる可能性が高まります。実際に、血液中の悪玉コレステロール濃度が高いほど、血管が詰まる病気、特に冠動脈疾患にかかりやすいことが、多くの臨床試験で明確に証明されています(※1)。さらに、善玉(HDL)コレステロール濃度が低い場合も、同様に冠動脈疾患が増えることが分かっています。

 ひと昔前は、総コレステロール値が高いと冠動脈疾患が増えるという事実などから、その状態を高コレステロール血症、または高脂血症と呼んでいました(※2)。しかし、その後研究が進み、善玉および悪玉の影響が明確になってきたにもかかわらず、高コレステロール血症・高脂血症と表現していては、一般の方に対し「コレステロールの総量が多いと問題だ」という誤解を与えかねません。実際は、例えば総コレステロールが高い状態でも、悪玉コレステロールが高いためなのか、善玉コレステロールが高いためなのかにより、健康に与える意味合いは正反対となります。

 そこで10年前から、脂の質を個別に評価し、悪玉コレステロールが高い、あるいは善玉コレステロールが低いなど、脂質バランスが崩れた状態を「脂質異常症」と表現するようになりました(※3)。

※次回はコレステロール管理の方法についてです。

〈出典文献〉※1=Prev Med. 2011;52:381-386、Cir- culation. 2011;124:2056-2064、Eur J Epidemiol. 2017;32:547-557、※2=動脈硬化、1997,25:1–34、※3=動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007
Takumi-Kitamoto

北本匠先生
Takumi Kitamoto, MD, PhD

コロンビア大学メディカルセンターのポスドク研究員。糖尿病・高血圧・脂質異常症などの代謝疾患と、内分泌疾患専門の内科医師(日本の資格)。千葉大学医学部卒業後、佐久総合病院研修医、横浜労災病院専修医などを経て、千葉大学大学院医学研究院に進学。日本学術振興会海外特別研究員として2017年4月に来米し、糖尿病に関する研究を行う。「さくらラジオ(www.sakuraradio.com)」の医療番組でコレステロールについて解説。

Columbia University Medical Center

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