2018/07/06発行 ジャピオン974号掲載記事
安心の在宅医療・介護サービス(前編)
自宅で受ける医療と介護 心身の回復と自立を支援
在宅医療・介護サービスについて教えてください。
アメリカは日本に比べ、一般的に入院期間が短く、手術や大けがの後も数日で退院させられることはよくあります。在宅医療・介護サービスは、このように退院直後の人や、けが・病気が原因で生活に支障を来している人に多く利用されています。
参考までに、ニューヨーク州は州認定の在宅医療・介護事業者によるサービスを「ホームケアサービス(Home Care Services)」と呼んでいます。
どんな支援を受けられますか?
服用する薬が多ければ、それだけ飲み間違いや、飲み忘れも起きやすくなります。1週間毎日、朝・昼・晩に服用する薬を1回分ごとに分けるなど、簡単なようで療養中の患者には難しいことも、「在宅医療・介護チーム」は指導や介助をしてくれます。自宅での転倒防止用の手すり、シャワー用椅子、歩行補助器具などに関する相談もできます。
このように、上手に使えば非常に心強い在宅医療・介護サービスですが、一般に保険で利用できる期間は非常に短く、それを超える場合は自己負担となります。そうなれば高額のため、誰もが簡単に利用できるわけではありません。
保険適用の有無、また適用の場合の条件や制約(サービスの期間・内容・訪問回数など)は、患者が加入する健康保険のプランによって違います。保険適用を受けるには、患者が第三者の介助なく、一人では外出できないことが基本条件です。さらに、在宅サービスが医療的に必要であることを示す、患者の医師による指示書が必要です。患者がサービスを希望しても、医師が不要と判断する場合もあれば、保険会社が適用を拒否することもあります。
介護士は、家事も手伝ってくれますか?
ホームヘルスエイドは、特別な訓練を受けた、医療アシスタント的な役割をする介護士です。身体的介助、服薬介助、歩行介助などが主な仕事です。
料理、掃除、洗濯などの家事の支援は、パーソナルケアエイドの担当です。通院への同行、買い物など、自宅以外での支援もしてくれます。ホームヘルスエイドは利用が短期に限られますが、パーソナルケアエイドは長期的利用が可能です。ただし、保険が適用されるのは、低所得者・身体障害者向け公的医療保険「メディケイド」の受給者に限られます。
サービスを上手に利用するヒントとは?
介護に疲労している家族や近親者にとっては、介護士訪問中の数時間は、自分のために使える貴重な休息の時間ともなるでしょう。
「介護士が何もしてくれない」という苦情もよく聞きます。そういう場合は、介護士は「何をして、何をしないのか」、彼らの仕事の内容をまず理解し、その範囲でやってもらいたいことを計画し、具体的に希望を伝えましょう。
在宅サービスについて知りたいときは、看護師またはソーシャルワーカーに相談してください。
※来週は、ホームホスピスケアについてです。


三宅亜紀子さんAkiko Miyake, LCSW, OSW-C
ニューヨーク州認定臨床ソーシャルワーカー(LCSW)、オンコロジー協会認定オンコロジー・ソーシャルワーカー(OSW-C)。ニューヨーク大学(NYU)大学院ソーシャルワーク修士課程卒業後、非営利団体キャンサーケア(CancerCare)、ベスイスラエル総合がんセンター勤務など。現在NYUランゴン・ヘルス傘下の総合がんセンターに勤務し、患者向けのカウンセリングや各種サポート、サービスに従事。
NYU Langone Health Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center
160 E. 34th St.
(bet. 3rd & Lexington Aves.)