2018/06/08発行 ジャピオン970号掲載記事

心と体のメンテナンス

身近なパーソナリティー障害(後編)

誤った情報も多い「境界性」 じっくり取り組み症状改善

境界性パーソナリティー障害とはどういう病気ですか?

 パーソナリティー障害にはいくつかの種類があり、米国精神医学会はそれらを症状の類似性に基づき3群に大別しています(前編参照)。境界性パーソナリティー障害(Borderline Personality Disorder=BPD)は、そのうち劇的かつ感情的な症状が特徴の「劇場型群」の一つです。他のタイプよりも精神科医療の現場でみられる頻度が高く、ここ数年で広く一般に知られるようになりました。男性より女性に多く、診断名の乱用や誤診が多いことも指摘されています。BPDの主な症状は次の通りです。

▽〝見捨てられ不安〟が強く、他者の行動に過敏に反応する=自分を支え、愛情飢餓を満たしてくれる人を常に求め、それらしき人を極度に理想化し依存する。相手の変化に過敏に反応し、必死にしがみつく、あるいは関心を引く・気持ちを試す行動に出ることも。見捨てられる前に自ら背を向けることもある。
▽自己イメージ・気分が不安定で、良し悪し両極端の間を激しく揺れ動き、対人関係も安定しない=些細なことで傷つき、気分が最高から最低に瞬時に変わる。理想化した相手が期待と違う行動をとると、それを裏切りと感じ激怒する。
▽自傷行為や自殺企図を繰り返す=自分が生きる価値のない存在に思え、罪悪感・絶望感・自己嫌悪から自分を傷つける衝動にかられる。精神的苦痛を軽減するため、自傷行為や自殺企図を繰り返す(自傷行為をする人すべてがBPDではない)。薬物乱用・過食・無防備な性交渉など、自己破壊的・衝動的行動も多い。
▽ストレスが原因で、一過性の妄想や解離症状(記憶や感覚が一瞬なくなる状態)が起きることもある。

BPDはどのように治療しますか?

BPDに限らずパーソナリティー障害は、精神療法(心理療法)と、うつや不安などの精神症状に対する薬物療法を併用するのが一般的です。精神療法にも行動療法、アート療法など、多種多様なアプローチがあります。

 BPDの場合、個人カウンセリング、電話相談、グループでのスキルトレーニングなどで構成する「弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy)」の効果が高いと報告されています。そのうちグループトレーニングでは、感情調整スキル、苦痛を耐えるスキル、対人関係を円滑にするスキル、マインドフルネス(今その瞬間に集中することで心に平穏をもたらす手法)などを学びます。

治療で症状は良くなりますか?

研究によると、治療開始から5~6年後に患者の半数が診断基準を満たさない程度にまで症状が落ち着くほか、2~3年で軽減するケースもあると報告されています。時間はかかりますが、治療によって症状の改善と回復は十分に期待できると考えられています。 
 症状が長く続く場合もありますが、糖尿病と同じように根治は難しくても、病気とうまく付き合うことで症状をコントロールすることは可能です。

BPDと診断されたら何をすべきですか?

インターネットなどでBPDについてさまざまなことが言われていますが、誤った情報に紛らわされてパニックを起こさず、専門家の診断を受け、病気を正しく理解することを心掛けてください。

 患者が自主性を持って治療に参加し、医療従事者と信頼関係を築き辛抱強く取り組むことは大事です。問題に向き合い、自分で治すという意欲を持ち、自分に合ったカウンセラーや治療法を見つけましょう。

 周囲の人がまずすべきことも、病気について正しい知識を得ることです。自分が疲弊しないように気を付けながら、変わらぬ姿勢で気長に患者を見守りましょう。困ったことは専門家に相談し、家族や配偶者向け支援も活用してください。

 一般的な特徴として、パーソナリティー障害の患者は考え方や行動の偏りから「生きづらさ」を抱えており、それを補うため、個性的で特別な能力を無意識に身につける傾向があります。その能力を生かし、社会で活躍している人はたくさんいます。本人も周囲も、病気を理解することで物事の見方が変わり、前向きな対処法も見えてくることでしょう。
 
※来週は、樋口聖先生に食欲と脂質の関係についてお聞きします。

作者が自身の体験を書いた書籍「Prozac Nation」は、うつとBPD症状で苦しむ主人公の診断と治療、回復までを描き、ベストセラーになり映画化された
Kimi-Aoki

青木貴美さん
Kimi Aoki, LCSW

心理カウンセラー、ソーシャルワーカー。ニューヨーク大学大学院ソーシャルワーク修士課程卒業。18歳以上の大人を対象に、育児・夫婦・家族・恋愛・人間関係に関する悩みや、気分の落ち込み、不安、パニック、ストレス、不眠、適応などの問題に応じる。相互扶助団体・ニューヨーク日本人シングルマザーの会主宰。

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