2018/04/06発行 ジャピオン961号掲載記事

心と体のメンテナンス

患者にやさしい歯科技術(前編)

歯型をとる専用スキャナー 精度を高め治療期間も短縮

患者にやさしい歯科技術とは?

 「歯科治療はどうも苦手」という人は少なくありません。治療で痛い思いをした経験があるのかもしれないし、「口を長く開けたままはしんどい」「消毒剤や、治療で使う薬など、歯科医院独特のにおいに慣れない」という人もいるでしょう。ですが、近年の歯科技術の進歩は目覚ましく、治療技術の向上はもちろん、痛みを軽減し、患者ができるだけ快適に治療を受けられるようにする技術の開発も進んでいます。

そのうちの一つが、歯型作成時の不快感の解消です。歯型は英語で「インプレッション(impression)」と言います。クラウン(かぶせ物)やブリッジ(失った歯の両隣の健康な歯を支柱として使い、「橋」をかけるように人工歯を入れる治療法)など、失った歯の機能を人工歯で補う治療では、必ず歯型を作ります。しかし、歯型作成が苦手という患者は少なくありません。

歯型作成が嫌がられる理由は何ですか?

 歯形をとるときは「印象剤」という粘土状の材料を使いますが、これに抵抗があるという人が多いです。

まず、印象剤を詰めた専用トレーを上下の歯列に押し当て、印象剤が固まるまで、そのまま1~2分ほど待ちます。このとき、印象剤の独特のにおいや味、ベタベタした感触のため、気分が悪くなったり、吐き気をもよおしたりする人がいます。私自身も患者として歯形をとってもらったことがありますが、あまり気持ちのよい体験ではありませんでした。

歯型をとったら、それに石膏(せっこう)を流し込み、歯列の模型を作ります。それを専門ラボに郵送し、模型を基に患者ごとにカスタマイズした人工歯を作成します。

クラウンでもブリッジでも、治療成功のためには、歯列模型が正確であることが前提です。患者は歯型作成中、どんなに気分が悪くても口を動かさず、じっとしていなければいけません。印象剤に気泡が入ってもいけないし、石膏が乾燥段階で膨張または縮小しても模型に「誤差」が生じます。最悪の場合、歯型をとり直す必要があり、治療開始がその分遅れてしまいます。

デジタル・インプレッション技術とは?

 印象剤による従来の歯型作成の代わりに、専用スキャナーとコンピューター・プログラムで、歯と歯茎の3次元(3D)モデルを作成する技術です。複数企業がデジタル・インプレッション・システムを提供していますが、当院は「アイテロ・エレメント・スキャナー(iTeroElement Scanner)」というシステムを最近導入しました。

先端にカメラのついた棒状のハンドピースを患者の口内に入れ、歯列の外側・内側・かみ合わせ部分と歯茎をスキャンします。スキャン画像は瞬時にコンピューターに取り込まれ、モニターで確認できます。

患者にとって、スキャナー使用の主な利点は次の通りです。

▽快適さ=印象剤を使わないので、印象剤使用時の不快感や吐き気の心配がありません。スキャン時間は上下歯列で合計5分ほど。患者は検査中も普通に呼吸し、唾液を飲み込むこともできます。

▽安全性=レントゲン検査などと違い、被ばくリスクがありません。印象剤を誤飲する心配もなく、高齢者や子供でも安心して検査を受けられます。 ▽高精度=歯列を高精度に再現します。従来のように、歯型とり直しのリスクもありません。

▽高速処理=スキャンから3~5分後、治療完了後の歯列予測を3Dモデルで確認できます。歯列矯正の場合、治療完了まで数年かかるのが普通ですが、患者は治療結果予測を自分の目で見て理解することで、治療のモチベーションを保ちやすくなります。

治療期間短縮も大きな利点です。例えば従来のクラウン治療は、歯型作成からクラウン装着まで通常約10日かかります。スキャナーを使用すれば、スキャン画像をクリック一つでラボに送信でき、それを基にクラウンを作るので、最速2~3日で治療が完了します。

このスキャナーはクラウンやブリッジのほかにも、インプラント、歯列矯正治療、各種リテイナー治療での利用に適しています。

※後編は、インビザライン治療でデジタル・インプレッション技術を使う場合の利点などについてです。

デジタル・インプレッション・システム「iTero Element Scanner」。専用スキャナー(モニター右側のデバイス)で歯と歯茎の表面を撮影してコンピューターに取り込む。数分後、クラウンや歯列矯正治療の結果予測を3D画像で確認できる(写真提供:Align Technology)
HEALTH

トリスタン・ルー先生
Tristan Lue. DDS

歯科医師(DDS=Doctor of Dental Sur- gery)。ニューヨーク大学歯科大学卒業。虫歯治療、根管治療(ルートキャナル)、クラウン、ブリッジ、親知らず抜歯などの一般歯科、インプラント、歯列矯正(インビザライン、ブレース)、ホワイトニングなど。インプラント、インビザライン、心肺機能蘇生(CPR)の特別訓練を修了。10年以上の臨床経験がある。子供から高齢者の治療を手掛ける。

Tristan Lue, DDS

70 W. 36th St., Suite 10A
(bet. 5th & 6th Aves.)

TEL
646-866-7773
WEB
http://drtristanlue.com/

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