2018/02/16発行 ジャピオン954号掲載記事

心と体のメンテナンス

傷痕が目立たない形成外科的治療(前編)

形成外科医の縫合技術 極細糸で傷痕を最小化

形成外科医の治療は、傷痕が残りにくいのはなぜですか?

 けがや手術などで皮膚に一度傷ができると、治った後にどうしても痕が残ります。大切なのは、傷痕をどこまで小さくできるかです。形成外科医は、一般外科医になるための訓練の他に、特別な手術や技術の訓練を受けており、その一つが傷痕を目立たなくする治療です。傷の大きさや種類、場所、年齢、体質によって個人差はありますが、適切に処置すれば、見た目にほぼ分からない程度に傷痕が残らないようにすることが可能です。

 例えば、傷口を閉じる方法一つを取っても、針と糸で縫合する方法、ステープラーの針のようなもので固定する方法、テープで固定する方法、医療用接着剤で接合する方法などがあります。どの方法にも長所と短所がありますが、形成外科医は基本的に針と糸による縫合術を使います。

 傷口を閉じるだけであれば、どの方法でもあまり変わりはないかもしれません。縫合術の場合、麻酔を使うし、縫うのに時間がかかり、傷が塞がった後は抜糸も必要です。それでも形成外科でこの方法が使われるのは、傷痕を最小限に抑えることができるからです。

形成外科医による傷の縫合の特徴は?

 まず糸(縫合糸)ですが、さまざまな太さのものが用意されています。一般外科医による治療の場合もそうですが、けがの種類や場所によって、どの糸を使うかを決めます。

 顔の傷の場合、なるべく細い糸を使います。神経や血管を縫合する場合は、さらに細い、拡大鏡がなければ見えにくいほど細い糸を使います。

 糸の素材にも複数種類があり、ナイロンなどの合成繊維や、時間とともに溶けて体に吸収されるものがあります。溶けるタイプの糸は、後日抜糸の必要がないので、内臓など、体の中の手術に使われます。

 抜糸がないと、患者さんはそのために通院しなくてすむので便利ですが、顔や首など、傷痕をできるだけ目立たせたくない部位の縫合には、溶けないナイロン糸を使います。溶ける糸の場合、体がそれに反応するので、普通の糸に比べて炎症が起きやすい傾向があるからです。傷痕を残さないためには、過剰な炎症はできるだけ避ける必要があります。また、普通の糸は溶ける糸よりも強いので、縫合した傷口が開いてしまうリスクを減らせます。ちなみに顔の場合、縫合から5~10日後に抜糸します。

縫い方にも特別な方法がありますか?

 縫合法も、1種類ではありません。形成外科医は、複数の縫合法の訓練を受けており、けがの種類や場所によって、最適な縫合法と縫合糸を選びます。

 同じ縫合法でも、針を入れる角度や深さ、密度(何針縫うか)、力の入れ方(糸を引っ張る力・結び目の締め具合)などは、ケースごとに調整します。同じ力で糸を引っ張っても、人によっては傷口に引きつれが起きてしまうかもしれません。傷口を締め付け過ぎると、傷が適切に治癒しない恐れもあります。

 治療前の患者さんから、「傷口を何針縫いますか?」という質問をよく受けます。ですが、最初から何針縫うと決めて治療するわけではないので、それに答えはありません。針の数が少なければ傷ができにくいというわけでもなく、逆に細かく縫えば、それだけきれいに治るというわけでもありません。

 傷痕をできるだけ残さないためには、確実に、また正確に傷口を縫合することが必要不可欠です。事前に計画できることもありますが、実際に処置を始めてみなければ分からないことも多く、要はケースごとに最適な方法を、その都度判断することになります。

縫合時に顕微鏡を使うのはなぜですか?

 当然ですが、糸が細ければその分針も細くなり、取り扱いも難しくなります。細い糸を使う処置の場合、肉眼では見えにくいので、顕微鏡下で行います。

 傷痕を小さくできるかどうかには、形成外科医の経験や技量も大きく影響します。傷の縫合は非常にデリケートな処置なので、事前準備にも気を配ります。例えば、予め計画されている手術の前24時間は、腕や手を酷使する運動・作業を避けなければなりません。

※来週は手術後のケアや、最新機器による手術要らずの施術などについてです。 


 

傷口の縫合に使う糸と針。糸の先にフック状の細い針が付いている。傷の場所や種類などによって糸の太さを選ぶ
HEALTH

エリック・K・チャ先生
Eric K. Cha, MD, MPH, FACS

形成外科医師(Board certified by the American Board of Plastic Surgery)、米国外科学会フェロー(FACS=Fellow of the American College of Surgeons)。二重まぶた形成、脂肪吸引、豊胸、顎ラインの矯正、傷痕を目立たなくする治療など。患者にはアジア人が多い。マウント・サイナイ・アイカーン医科大学臨床教授、米国形成外科学会・米国美容形成外科学会会員など。公衆衛生学修士(MPH)。

Eric K. Cha, MD, MPH, FACS

1049 5th Ave., Suite 2C
(at 86th St., bet. Madison & 5th Aves.)

TEL
212-717-2222

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中発行

巻頭特集
人気が過熱するブルックリン区ウィリアムズバーグ...

   
Back Issue ~9/7/2018
Back Issue 9/14/2018~
利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント