2018/02/09発行 ジャピオン953号掲載記事
理学療法士に聞くけが予防(後編)
筋肉硬直が腰痛の原因に 尻の筋力低下は膝に影響
腰痛と姿勢の関係を教えてください。
実は、腰痛のほとんどは原因が特定できません。しかし、その多くは姿勢が悪いか、姿勢は良くても、長時間同じ姿勢で動かないことがそもそもの原因とされています。
理学療法士が対応する 腰痛患者のうち、10人中9人は股関節前面の筋肉が硬直しています。デスクワークをする人の場合、座りっぱなしで股関節を動かさないことがその要因です。
股関節の前面が硬くなると、立ったときに骨盤が前傾し、「反り腰」になりがちです。悪い姿勢をとり続けると、腰の椎間板(背骨の骨と骨の間でクッションの役割をする組織)や関節、筋肉への負担が増えて、腰痛が起こりやすくなるのです。
ハイヒールを履く人も、骨盤が前傾しやすいので要注意。ふくらはぎが硬くなり、股関節以外にもさまざまな問題につながる可能性があります。
腰痛予防のためにできる体操は?
まず立ったまま腰に手を当て、次に写真1のように片膝を床につけ、もう一方の足を前に踏み出すようにします。両膝の角度が90度になるようにしてください。床に着けた膝が痛くならないように、膝の下にタオルなどを丸めて置きましょう。
最初はうまくできない人も多く、体が左右に揺れたり、太ももが緊張したりするかもしれません。お腹に力を込め、腰をしっかり入れる(前方に押し出す)感じで、股関節前面の筋肉を伸ばすことを意識してください。
膝の痛みとお尻の筋肉の関係は?
中臀筋は、骨盤の少し下の、お尻の横側にある筋肉で、上半身(骨盤)と脚(大腿骨)をつなげる重要な筋肉です。歩行時は中臀筋が常に使われており、脚を上げたときに股関節を固定し、骨盤が下がらないようにしています。
ところが、長時間座りっぱなしだと、使われなかった中臀筋にストレスが溜まり、次第に弱くなってしまいます。
中臀筋の筋力が低下すると、歩行時に着地した脚の側に骨盤が傾き、お尻が横に突き出し、膝が内向きになります。膝の関節は、本来は真っすぐ曲がるべきものです。ところが、膝が内向きの状態で屈伸運動をすると、関節に不自然な力がかかります。それが続くと、関節に炎症が起きて、膝が痛くなるのです。
いったん炎症が起きると、炎症を抑える治療が必要です。それと同時に中臀筋を鍛えることにより、膝にかかる負担を減らし、治りを早くすることができます。
お尻の筋肉を鍛える体操は?
立ったまま、片脚を横や後ろに上げる運動も効果があります。転ばないように、壁や机に手を添えてやるといいでしょう。中臀筋を鍛えると、ヒップアップにも有効です。
体操や運動するときの注意点は?
理学療法士は、患者ごとに痛みや異常の原因を突き止め、自宅でできる適切な運動を指導することができます。まずは気軽に相談して下さい。
※次回からはエリック・K・チャ先生に、形成外科医師の「傷痕が残りにくい治療」をテーマにお聞きします。



八浪 ジョアン 朋子先生Tomoko JoAnn Yanami, PT
理学療法士(PT=PhysicalTherapist)。アンドリュー大学で理学療法修士号取得。つぼ療法、キネシオテーピングを含むさまざまな療法・技術の訓練を修了。癒着した筋膜を解放する「グラストンテクニック」認定療法師。首・肩・背骨・腰・足と足首・膝・肘・手首と手の整形外科的疾患やけがの治療、リハビリなど。マラソンやトライアスロンの競技経験を生かしたスポーツ選手の治療に定評がある。
City Physical Therapy, P.C.
•118 Baxter St., Ste. 303
(bet. Canal & Hester Sts.)
•16 W. 37th St., 2nd Fl.
(bet. 5th & 6th Aves.)