2018/01/26発行 ジャピオン951号掲載記事

心と体のメンテナンス

アトピー性皮膚炎の鍼・漢方治療(後編)

鍼と漢方による集中治療 何十年の重症例にも効果

慢性化したアトピー性皮膚炎も治療できますか?

 発症して時間がたてばたつほど治療は難しくなりますが、鍼治療と漢方薬によって症状を改善し、その状態を維持することができます。

 私の患者さんのほとんどは、何カ月あるいは何年もステロイド剤による治療を続けてきた人たちです。ストレスで症状が悪化するケースも多く、しばらく落ち着いていた症状が、家庭や職場環境の変化で再発する人もいます。

慢性のケースの治療例を紹介してください。

 子供の頃にアトピー性皮膚炎を発症した、40代女性患者の治療例をご紹介しましょう。この女性は顔と体全体に赤い湿疹ができており、かゆみを我慢できず、掻いた場所から汁が出ていました。医師に処方されたステロイドの塗り薬で治療を続けていましたが、再発を繰り返し、気が付けば30年近くたち、症状は徐々に悪化していました。

 私が問診、視診、脈診、舌診を行った結果、体質は「ウェット・ヒート(体内に過剰な湿気や熱がこもっている)」と判定されました。体の陰陽バランスも乱れ、内臓・代謝機能が低下し、ホルモンバランスも崩れていました。

 そこで、鍼治療と漢方薬を組み合わせて治療することにしました。鍼治療には、弱った内臓機能を調整し、代謝機能を上げ、ホルモンバランスを整え、ストレスを緩和する効果があります。

 また、一言で漢方薬といっても、私はアトピー性皮膚炎治療用に5~6種類を使います。それぞれ生薬の組み合わせが少しずつ違うので、患者の体質によってどれを使うかを決めます。この女性患者の場合、体をクールダウンする飲み薬の服用と、皮膚の炎症を抑えて腫れとかゆみを緩和し、皮膚を「強くする」効果のある塗り薬の使用を指導しました。

 通常、治療開始から最初の1カ月は、鍼治療を週1回の頻度で行います。しかし、この患者はかゆみのため夜眠れず、特に顔の症状がひどい重症のケースだったため、最初の1カ月は週2回鍼治療に通ってもらいました。

 治療中は、揚げ物・辛い物・甘い物の摂取を控え、飲酒を止めるよう指導しました。これらの飲食物は、体内に熱を発生させ、症状を悪化させるからです。シャワーはぬるま湯を使い、下着は通気性の高い綿素材をすすめました。

治療効果はいつ頃から現れますか?

 全体的な体の状態や、重症度、年齢などによって異なります。この女性患者は重症だったので、普通より時間がかかりましたが、治療開始から2~3週間後には症状が格段に改善しました。

 治療開始2カ月目に鍼治療を週1回に減らし、現在は治療開始3カ月目に入ったところです。肘・膝などの関節の内側に少しかゆみが残っているものの、全身の強いかゆみがなくなり、夜ゆっくり眠れるようになりました。皮膚の状態も良くなり、特に顔の肌は見違えるほどきれいになりました。

 今後、皮膚の状態がさらに良くなり、その状態が安定してくれば、次にメンテナンス目的の鍼治療を2週間に1回のペースで続けます。この患者の場合、メンテナンスを含む治療期間は全部で5~6カ月の予定です。長いと感じるかもしれませんが、いったん治療を完了すると、普通は再発の心配がありません。仮に再発しても、症状は以前のように悪化しないことがほとんどです。

 症状が改善した時点で治療を止めると、大抵のケースで再発します。再発予防のためには、治療を最後まで続け、体質を変えることが何より大切です。

漢方薬の副作用はありますか?

 3~6カ月程度服用を続けても、普通は問題ありません。ただし、糖尿病や高血圧などの薬を普段から服用している人は、それを漢方薬処方者に最初に伝え、服用時の注意点を聞いてください。

 私は新生児から高齢者の皮膚トラブルの治療経験が豊富で、患者のほとんどは口コミで私を知った人たちです。最近は医師から患者の紹介を受けることもあります。長年のアトピー性皮膚炎もあきらめず、相談してください。

※次回からは理学療法士の八浪ジョアンさんに、痛み予防と治療についてお聞きします。


 

患者の体質や肌の状態に合わせて適切な漢方薬を使う。糖尿病薬、血圧降下薬など、普段から薬を服用中の人は、漢方薬との相互作用を避けるため、ゼン先生に事前に伝えること
HEALTH

リン・ゼン先生
Ling Zheng, LAc

ニューヨーク州免許取得鍼灸師(LAc=Licensed Acupuncturist)。中国福建医科大学卒業後、病院勤務や世界保健機関(WHO)医師団での活動を経て来米。全米鍼・東洋医学認定委員会(NCCAOM)認定鍼灸師(Diplomate of Acupuncture)。アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎などの皮膚疾患、痛み、更年期障害、うつ、不眠症の治療など。マンハッタンで1994年開業。日本人患者の治療経験が豊富。

LZ & Manhattan Acupuncture, P.C.

TEL
212-689-1773
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