2018/01/12発行 ジャピオン949号掲載記事

心と体のメンテナンス

月経異常と婦人科の病気(後編)

心身に影響するPMS ピルでホルモンを調整

「月経前症候群(PMS=Premenstrual syndrome)」とは?

 月経(生理)が始まる5~10日くらい前に起きる心身のさまざまな症状を指します。原因はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの急激な変動だと考えられており、月経が始まると症状は自然になくなります。主な症状は次の通りです。

▽体の症状=頭痛、腹痛、腹部の張り、乳房の張りと痛み、手足のむくみ、便秘、腰痛、ニキビ・じんましん、めまい、疲労感、吐き気、不眠、空腹・過食など。

▽精神症状=イライラ、興奮しやすい、短気、気分のむら、うつ、不安など。

 女性のほとんどは、程度の差こそあれ何らかのPMS症状を経験しているといわれます。市販の鎮痛薬や、運動、瞑想などのストレス解消法で乗り切れる程度ならいいのですが、日常生活に支障を来す場合は治療が必要です。「痛みで寝込む」「ささいなことでイラついて人間関係が悪くなる」「理由もないのに悲しくて死にたくなる」など、影響は深刻です。

PMSはどのように治療しますか?

 経口避妊薬(contraceptive pills、俗に「ピル」と呼ばれる)が処方されることが多いです。経口避妊薬は4週間を1サイクルとし、毎日同じ時間帯に1錠ずつ服用します。最初の3週間はホルモンを含む薬、最後の1週間はホルモンを含まない偽薬(プラセボ)です。1錠にエストロゲンとプロゲステロンが含まれており、排卵を抑制し、ホルモンの急激な変動を抑えます。

 経口避妊薬は、1~3相性の3種類に分けられます。1相性は3週間を通してエストロゲンとプロゲステロンの量が常に一定のタイプ。2相性はそれらの量が2段階に、3相性は3段階に変化するタイプです。PMS治療には原則として1相性を使います。精神症状が特に重い場合を月経前不快気分障害(PMDD= premenstrual dysphoric disorder)といい、抗うつ薬やカウンセリングを併用することもあります。

 人によっては、塩分とカフェイン摂取を減らし、カルシウム、ビタミンDのサプリメントを摂取することが症状の緩和に有効です。

経口避妊薬は飲み続けても安全ですか?

 アメリカでは安全な薬と位置付けられています。避妊だけでなく、月経異常や婦人科疾患の治療のために、何年も飲み続けている人もいます。

 月経は、排卵を受けて厚くなった子宮内膜がはがれ落ち、血液と一緒に体外に出ることで起こります。経口避妊薬で排卵を抑えれば、子宮内膜も厚くならないので、経血量を抑え、月経痛も軽減することができます。

 経口避妊薬を適切に服用すると、月経が規則正しく来るようになり、月経の遅れや乱れの改善にも有効です。ほかにも、子宮内膜症や多嚢胞性卵胞症候群の治療などにも使われます。

 当然ですが、副作用はあります。個人差がありますが、服用し始めのころは吐き気や嘔吐、頭痛、乳房の張りと痛み、不正出血などを訴える人もいます。飲み続けると解消することがほとんどですが、種類やブランドを変えると症状が楽になることもあります。

 5年以上服用すると、乳がんリスクがわずかに高くなるという報告もあります。40歳以上の人は、乳がん検査で異常がないことを確認し、その後も年1回の検診を習慣化することが大事です。また経口避妊薬を飲むと血栓ができやすくなるので、血栓症リスクを高める喫煙は厳禁です。他の病気の治療中の人、服用中の薬がある人も、事前に医師に相談して下さい。

経口避妊薬は子宮筋腫の治療にも有効ですか?

 症状が軽ければ、筋腫の進行を抑え、月経痛や経血量を軽減するため経口避妊薬を使うことはよくあります。しかし、薬で症状をコントロールできない場合、妊娠・出産に問題がある場合は、手術による筋腫切除や子宮摘出を検討します。治療法は、将来妊娠を希望するか否かや、筋腫の大きさ、数、場所、年齢などを総合的に考慮して決めます。

 月経異常の検査で、筋腫が見つかることは珍しくありません。月経の悩みを仕方ないとあきらめず、まずは相談して下さい。

※来週は、リン・ゼン先生にアトピー性皮膚炎の治療についてお聞きします。


 

月経異常や婦人科疾患の治療に使われる経口避妊薬は種類も豊富。貧血やニキビ対策など、製品によってさまざまな工夫も追加されている
HEALTH

小柳乃里子先生
Noriko Koyanagi, NP-C

ナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner, Certified=医師と同様に診察や薬剤処方、治療をする資格を持つ看護職)。ウエストバージニア・ウエズリアン大学看護学部卒業後、ワイドナー大学大学院ファミリーNPプログラムを修了。子供から大人を対象に、一般内科、家庭医学科、婦人科を中心に診療。人間ドック、婦人科検診、児童・生徒の健康診断など。

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