2018/01/01発行 ジャピオン948号掲載記事
月経異常と婦人科の病気(前編)
誰にでも起こる月経異常 精神的ストレスの影響大
「月経異常」とはどういう状態ですか?
「稀発(きはつ)月経」「頻発月経」とは何ですか?
稀発月経の場合、1、2カ月様子をみて、遅れが繰り返すようなら、原因を調べる必要があります。90日以上月経の間隔があいた場合は、卵巣の働きが不十分と考えられるため治療が必要です。そのまま放置すれば「卵巣機能不全」や、月経が起こらない「無月経」に陥る危険もあります。参考までに、ある年齢になっても初経が始まらない場合も「無月経」といいます。
月経の周期は正常でも、日数に異常がある場合もあります。正常な月経は3~7日間とされていますが、2日以内に完全に終わる状態を「過短月経」、8日以上続く状態を「過長月経」といいます。
「過多月経」「過少月経」とは?
反対に、経血量が極端に少なく、ナプキン表面に血が少しつく程度で終わる場合を過少月経といいます。
月経異常と精神的ストレスの関係は?
月経は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンの働きによってコントロールされています。これらのホルモンは卵巣から分泌されますが、その分泌を司っているのが脳の視床下部と下垂体と呼ばれる器官です。
これらの器官はストレスや情動に影響を受けやすく、例えば人間関係の悩み、死別などの悲しい出来事、災害などによって強いストレスを受けると、たちまちホルモン分泌が乱れてしまいます。無理なダイエットや、運動のし過ぎが影響することもあります。
精神的ストレスが原因の場合、検査しても体に異常は見つかりません。そのため、月経異常の診察では、生活や精神状態に大きな変化がなかったかなどを丁寧に聞いていきます。
精神的ストレス以外にはどんな原因が?
▽妊娠=妊娠すると生理は止まるのが普通ですが、人によっては妊娠の自覚がないか、妊娠に何らかの問題があり異常出血などの症状が出ることがあります。
▽感染症=代表例は性病。無症状の場合もありますが、経血量の増加、おりものの異常、不正出血などの症状が現れます。
▽婦人科の病気=子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫、多嚢胞性卵胞症候群、がん、ポリープなど。多嚢胞性卵胞症候群とは、卵巣内に卵胞が詰まり、排卵がうまくできなくなる病気。
▽婦人科以外の内科的病気=甲状腺や肝臓、血液の病気など。
その他、薬の副作用やハーブの影響で月経が乱れることもあります。
症状によってさまざまな検査を行い、月経異常の原因を探ります。子宮頸がんの細胞診検査(パップテスト)と、卵巣や子宮の状態を調べる超音波検査は、ほぼ例外なく行います。妊娠や性病の検査、ホルモンを調べる血液検査が必要なこともあります。
月経異常は、日常生活に支障を来すだけでなく、場合によっては妊娠や出産に影響しますし、深刻な病気が隠れている可能性もあります。異常に気付いたら、早めの受診を心掛けてください。
※来週は、月経異常や月経前症候群(PMS)、子宮筋腫の治療についてです。


小柳乃里子先生Noriko Koyanagi, NP-C
ナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner, Certified=医師と同様に診察や薬剤処方、治療をする資格を持つ看護職)。ウエストバージニア・ウエズリアン大学看護学部卒業後、ワイドナー大学大学院ファミリーNPプログラムを修了。子供から大人を対象に、一般内科、家庭医学科、婦人科を中心に診療。人間ドック、婦人科検診、児童・生徒の健康診断など。
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