2017/09/08発行 ジャピオン932号掲載記事

心と体のメンテナンス

睡眠と生活習慣病(後編)

乱れた体内時計を調整 寝つきや時差ボケ解消

寝つきを良くするためにできることは?

 寝つきの悪さは、不規則な生活習慣による体内時計の乱れと関係しています。体内時計を整える基本的な方法をご紹介しましょう。
▽朝起きたら光を浴びる=20~30分を目安に太陽光を浴びると、体内時計がリセットされます。外に出なくてもいいので、カーテンを開け、室内に朝日をしっかり取り込みます。雨天など太陽が出ていない日は、強めの照明に30分以上あたるといいでしょう。

 睡眠を促すホルモンのメラトニンは、光を浴びて約16時間後に分泌されます。そのため、例えば朝7時に光を浴びると、夜11時ごろにメラトニンの分泌が増加し、自然に眠気を感じるようになります。

▽休日に寝だめをしない=休日も、いつもの起床時間から2時間以内には起きましょう。体は体内時計の乱れを1日約2時間程度まで補正できますが、それを超えると大きくリズムが崩れてしまいます。

▽朝食を食べる=体内時計は、光だけでなく食事からも影響を受けます。朝食を食べると、胃腸の働きが活発になって体が覚醒(かくせい)するほか、かむことで脳に刺激が伝わり、体のリズムを整えるホルモンが分泌されます。

▽就寝前2時間以内は食事をしない=胃に食べ物が残っていると、眠っている間も胃腸が活発に働き、夜中に目が覚めたり、睡眠の質が低下したりします。ほかにも、カフェイン飲料は就寝4~5時間前までに飲み終えます。タバコを吸うのであれば、1時間前までに吸い終えましょう。

▽就寝前1時間以内はテレビやパソコン、携帯電話を見ない=モニターの明るい光は、体内時計を混乱させます。

 そのほか、寝る前に家族や友人、ペットなど、自分を含む生き物のことを考えると、脳が興奮して眠りにくくなります。また、昼寝をするなら昼食後から午後3時までの30分以内にする、夕方軽めの運動をする、就寝前の入浴やシャワーはぬるめの湯を使う、寝酒をしない、眠くなってから床につく――なども覚えておきましょう。

 「寝なければ!」と自分を追い込むと、かえって眠れなくなります。睡眠時間が短くても不安に思わず、毎朝同じ時間に起床し、光を浴びることを心掛けて下さい。日中の強い眠気が1カ月以上続く場合は、医療機関での治療が必要です。

時差ボケを早く解消する方法は?

 人間は体内時計の多少の乱れを補正できますが、1日約2時間程度が限界です。そのため、例えば7時間時差のある場所に行くと、時差ボケ解消に約4日かかります。時差ボケ早期解消の一番のコツは、時差をなるべく作らないことです。

 時差ボケ予防策として、出発1週間ほど前から、体内時計を少しずつ旅行先の現地時間に近づけます。出発前日は、現地の朝の時間帯に30分ほど太陽光を浴びましょう。強めの照明の光でも構いません。

 飛行機で移動するときは、乗る前に腕時計を到着地の時間に合わせます。機内食は到着地の時間を考慮して出されるので、出されたタイミングで食べましょう。現地到着が夜の場合はフライト後半には寝ないなど、機内で睡眠時間を調整することも大事です。

 昼夜が逆転する米東海岸=日本間の移動では、時差ボケ解消にも時間がかかります。寝つきを良くする方法で説明した、体内時計を整える生活習慣のポイントを実践し、必要に応じてメラトニンのサプリメントも活用して下さい。

体内時計を調整する処方箋睡眠薬とは?

 従来の睡眠薬は、副作用や依存性が強いイメージがありましたが、最新の処方薬は体内時計に働きかけるのが特徴で、副作用が少なく、自然な眠りを誘導します。

 体内時計を調整する睡眠薬は2種類あり、そのうちメラトニン作動薬は、メラトニン分泌を刺激することにより、昼夜が逆転した場合や、寝つきが悪い入眠障害の症状解消に有効です。もう一つはオレキシン拮抗薬で、覚醒作用を持つ脳内物質のオレキシンを阻害することにより、入眠障害と、寝てもすぐに起きてしまう中途覚醒の治療に効果があります。

 医療現場では、体内時計の調整による、睡眠障害の根本治療が重視されつつあります。

※来週は山田真太郎先生に、「DNAの傷とがん」についてお聞きします。


 

時差ボケになるのは、成人の場合1日最大2時間しか体内時計を補正できないから。日本から米東海岸に旅行する場合、逆向きよりも一般的に体感時差が大きい(イラスト提供:堀口先生)
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堀口道子先生
Michiko Horiguchi, PhD

コロンビア大学医学部・日本学術振興会海外特別研究員。九州大学大学院薬学研究員博士課程修了。元東京理科大学薬学部薬学科助教。薬剤師(日本の免許)、横浜市立大学医学部客員研究員・非常勤講師。病気になりにくい体作りを支援するため、特に体内時計・生体リズムの乱れと生活習慣病との関係を中心に研究を続ける。乳がん・卵巣がん患者支援団体SHARE(www.sharecancersup port.org)のボランティアスタッフ。

Columbia University Medical Center
Herbert Irving Comprehensive Cancer Center

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