2017/07/21発行 ジャピオン925号掲載記事

心と体のメンテナンス

米病院の日本人支援サービス(前編)

日本語の「よろず相談」 患者の早期回復に貢献

日本人がアメリカの病院で困ることとは?

 まず戸惑うのが、アメリカの複雑な医療システムです。例えば、日本で病院に行くと、大抵の検査や診断、治療をまとめて受けることができますが、専門が細分化されたアメリカでは、なかなかそうはいきません。ある治療は病院で受け、別の治療は他の専門施設に行くなど、治療や検査のために複数の施設に通うことは多々あります。医療保険制度も複雑で、保険の内容によっては受診できる医療機関や医師が限定され、自己負担額も異なります。

 次に大きいのが、言葉の問題です。英語では、どこがどのように痛むかなど、症状を医師に伝えることが難しい人もたくさんいます。英語の専門用語で診断や治療方針を説明されても、よく理解できないかもしれません。

 文化や習慣面の違いからくる戸惑いや不便もあります。例えば、日本人は具合が悪いとき白湯(さゆ)を飲みたくなりますが、アメリカの病院では、飲み物といえば氷水です。入院中は、具合が悪いからこそ日本食を食べたいものですが、普通はそれも叶いません。

ホーリーネーム医療センターの日本人向け医療プログラムとは?

 言葉や文化面の壁を持つ日本人が、アメリカできちんとした医療を受けられるようにと、今年1月に発足しました。日本人が病院で困ることなど、当院の日本人患者はもちろん、日本人コミュニティーが抱えるあらゆる医療関係の相談やニーズに対応しています。

 ホーリーネーム医療センターは、ニュージャージー州バーゲン郡で1925年に設立されたカトリック系の非営利総合病院です。日本人向け医療プログラムは、アジア人ヘルスサービスの中の一つという位置づけで、他に韓国、中国、フィリピン、インドの移民向けプログラムがあります。

 最も古い韓国人向けプログラムは、すでに10年の歴史があります。プログラム創設者で、現在はアジア人ヘルスサービスの責任者を務めるキョンヒー・チョイという女性が、9・11同時多発テロを機に金融大手を早期退職し、病院でボランティアを始めたのがきっかけでした。

 それまでなかった韓国人の文化的背景に配慮したサービスを充実させ、今では年間約5万人がこのプログラムを利用しています。当院が提携する韓国系医師の数も、当初の約30人から95人に増えました。

日本人向け医療プログラムの内容は?

 日本人独特のニーズに対応する「カスタマイズサービス」と、「コミュニティーキャンペーン」の二つに大別されます(サービス詳細は後編で紹介)。

 言葉や文化的障壁から病院に苦手意識があると、気になることがあっても受診が遅れがちです。そこでコミュニティーキャンペーンでは、糖尿病、乳がんなどの予防を目的とした啓発セミナーを中心とするアウトリーチ活動と、病気の早期発見のためのスクリーニングに力を入れています。

 もう一方のカスタマイズサービスでは、日本人ボランティアによる病院内施設の案内、通訳の手配、入院患者へのサポート提供などのほか、受診や取り扱う保険などに関する問い合わせに電話で応じています。これらは全て無料です。

 私たちが目指すのは、病院のコンシェルジュ、いわゆる「よろず相談係」です。患者のさまざまな質問や相談、要望に応えることで、日本人にアメリカの医療を上手に利用してもらい、早期回復や健康維持に貢献したいと考えています。


 

患者支援は治療効果に影響しますか?

 アジア人ヘルスサービスの利用者は、非利用者よりも治療後の回復が速いようです。これは、患者と医師、看護師間のコミュニケーションが適切に行われることに由来します。患者が異文化のストレスから解放され、治療に前向きに取り組めることとも関係しています。

 アジア人ヘルスサービスでは、非アジア系医師と看護師へのアジア文化の啓発も行っています。細かいことですが、「死」を連想させる「4」のつく部屋に日本人患者を案内しないとか、名字で呼ぶ、などです。患者の文化的背景に配慮した取り組みは、その効果が認められ、当院の例を見本に他院でも徐々に広がりつつあります。
 
※来週は、日本人向け医療プログラムの具体的なサービスについてです。


 

日本人向け医療プログラムも参加して6月に行われたホーリーネーム医療センター主催の「乳がん啓発ウォーカソン」。予防ケア啓発の一環として、参加者100人にマンモグラフィー検査を無料提供した(写真提供: Holy Name Medical Center)
HEALTH_925

ホーリーネーム医療センター・日本人向け医療プログラム
Japanese Medical Program, Holy Name Medical Center

2017年1月発足の日本人向け医療プログラムのスタッフ。(前列左から)森まどかさん、キョンヒー・チョイさん(アジア人ヘルスサービス責任者)、エスター・モラレスさん、(後列左から)吉岡まこさん、宮武美智子さん、森川茉莉子さん、山田貞姫さん。チョイさん以外は全員ボランティア。

Holy Name Medical Center Asian Health Services Japanese Medical Program

TEL
201-833-3310 (日本人向け医療プログラム)
WEB
http://www.holyname.org/asianhealthservices
MAP
718 Teaneck Rd. Teaneck, NJ 07666

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