2017/07/14発行 ジャピオン924号掲載記事

心と体のメンテナンス

子供の発達障害(後編)

社会的・学習的支援を活用 子供の能力を伸ばす努力を

発達障害はどのように治療しますか?

 まず、発達障害は一般の病気の場合と違い、「治る・治らない」という枠組みで考えるべきではありません。子供本人や家族、周囲の人間が日常生活で困らないように症状をコントロールし、子供の「自由度」を高め、さらに子供本来の能力を最大限に生かせる環境を整えることが治療の目標となります。

 治療法は、子供の年齢や症状、重篤度、家庭環境などによって決まります。例えば、発達障害の中でも一般的な注意欠如・多動性障害(ADHD)の場合、家庭と学校での行動療法や生活面の工夫から始めることがほとんどです。

 行動療法とは、褒美(ほうび)と罰(体罰ではない)を利用し、子供の行動を変える治療法です。学校の宿題を嫌がる子供には、宿題が終わったら努力を褒める言葉と共に「ポイント」を与え、それが溜まったらテレビを見る時間を30分延長するなど、褒美として子供が好きなことをやらせたり、喜ぶ「刺激」や物を与えたりします。反対に宿題をやらなければ、就寝時間を30分早めるなど、好きな活動・刺激・物を減らす罰を設けます。ほかにも、日常的に規則正しい生活を送る努力が、本人だけでなく家族にも求められます。

 ADHDの子供は好き嫌いが激しいので、宿題をやりたくないと泣き叫ぶ子供を叱っても、かえって逆効果になることがあります。治療の第一歩は、このような子供の特性を家族、特に親が理解することです。サイコロジストやその他専門家は、そのために必要な情報を提供し、子供や家庭に合った行動療法を指導します。

薬物療法を併用することもありますか?

 行動療法や生活面の工夫だけで症状をコントロールできない場合、薬物療法を検討します。重度のケースでは、最初から薬を使うこともあります。

 ADHD患者に使われる薬には、行動を落ち着かせる、集中力を高めるなどの効果があります。何十年も前から多用されている薬もあり、比較的安全ではありますが、不眠、食欲不振などの副作用があります。薬が必要なのは数年間だけで、行動療法や生活面の工夫で症状が徐々に落ち着くケースもあります。

 ADHDに限らず、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)などの発達障害を抱える子供は、うつ病や不安障害を併発することも多く、場合によってはそれらの症状を抑える薬を併用します。

学校の支援体制はどうですか?

 行動や学習面で特別なニーズがあると判断されたら、担任教師、スクールサイコロジスト、言語療法士、作業療法士などの各種専門家が協力して対応します。それによって子供は、苦手な教科のときだけ他の教室に移動して少人数制の授業やセラピーを受けたり、テストのときは集中しやすいように個室に移ったりすることができます。読むことが苦手な場合は、テストの時間延長や、テスト問題を教師助手が読み上げるといった支援や配慮を受けることが可能です。

 授業に集中していない子供に声を掛けて注意を促す、整理整頓が悪い子供に終業時に宿題や翌日の予定を確認する、教室の移動を助けたり集団行動に誘ったりする「バディー(buddy)」と呼ばれる生徒をつけるなど、教師やクラスメートのちょっとした手間や気配りによって症状が改善することもあります。

 これらの支援は、公立校で普通に提供されています。アメリカでは、全ての子供に平等に教育を受ける権利が保障されており、特別なニーズのある子供のための社会的受け皿も整っています。

 それらの支援を利用する大前提として、発達障害の診断が必要になります。「うちの子に限って障害なんて…」などの親の思い込みから診断が遅れると、子供の潜在能力を摘み取ることになりかねません。

 発達障害は見た目に分かりにくく、親の子育てや子供の性格の問題と誤解されやすい障害です。さらに学齢期で来米した日本人の子供は、言語や文化の違いからくる問題と混同されることもあります。気になる症状があり、サイコロジストや精神科に行きにくければ、まずは家庭医に気軽に相談してください。

※来週からは、ホーリーネーム医療センターに日本人向けサービスについて伺います。


 

カウンセリングや精神科を日常レベルで上手に利用することで、自分や家族、子供の心の健康を管理したい。写真は表西先生の著書「アメリカ人は気軽に精神科医に行く」(ワニブックスPLUS新書)
HEALTH_923

表西恵先生
Megumi Omonishi, PhD

サイコロジスト。関西大学卒業後、セントラルアーカンソー州立大学大学院カウンセリング心理学科などを経て、ジョージア州立大学で同科博士号取得。テネシー大学ヘルスサイエンスセンターで研修修了後、ジョージア州などで臨床経験を積む。「アメリカ人は気軽に精神科医に行く」(ワニブックスPLUS新書)を2015年上梓。メンタルヘルス関連の企業向け出張セミナーも手掛ける。

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