2017/03/24発行 ジャピオン908号掲載記事

心と体のメンテナンス

足の病気の専門医(後編)

早期治療で再発予防 チーム医療の利点も

足病専門医の治療アプローチとは?

 足病専門医は、膝下の皮膚や骨、神経の病気と異常の専門家です。薬やインソール(靴の中敷き)、各種サポーターを使う内科的治療と、手術を含む外科的治療の両方を手掛けます。予防医療を重視し、症状が悪化する前の早めの治療と、再発予防策の徹底に力を入れています。

 例えば水虫の場合、薬でいったん治っても再発を繰り返す人がいます。それは、靴の中でしぶとく生き残った菌や、ジムのシャワー室などで他人の菌に再感染しているからです。古い靴は履かないのが鉄則ですが、そうもいかない場合は殺菌剤で消毒し、シャワー室利用の際は草履を履くなど、ちょっとした心掛けで再発を予防できます。

 歩くと痛いタコとウオノメも、ただ削るだけでなく、原因を見つけて根本的に治療します。患部の骨に異常があれば、歩行時に負担がかからないようにインソールの使用を勧め、必要に応じて骨の突起を手術で削ります。

 リウマチで曲がった指は、初期であれば矯正装置で伸ばすことができます。しかし、放っておくと手術が必要になるだけでなく、指の屈折部位が靴に当たって傷ができ、傷口から細菌に感染する恐れがあります。特にリウマチ患者は薬で免疫力を下げているので、細菌への抵抗力が低く、感染部位が壊疽(えそ=組織腐敗)を起こすと、指を切断する結果にもなりかねません。

 女性に多い外反母趾も、実は最大の原因は扁平足です。足に合わないきつい靴を履くと、症状悪化が加速されます。扁平足は遺伝なので避けられない面もありますが、インソールで土踏まずの〝アーチ〟の構造を支えることで、外反母趾を予防できます。

 座っているときはアーチがあるのに、立って体重がかかるとアーチが崩れてなくなる「隠れ扁平足」の人も少なくありません。患者本人は扁平足の自覚がないので、指摘すると驚く人がほとんどです。

他科の医師との協力関係は?

 全てのケースではありませんが、必要に応じて他の診療科の医師とチームを組んで患者の治療に当たります。

 例えば外反母趾の場合、足病専門医はインソールを使う非外科的治療と、骨を削る外科的治療の両方のアプローチが可能です。そのため、整形外科医から手術に踏み切る前に患者を紹介され、インソールで治療できないか相談を受けることがあります。インソールで足にかかる負荷を均一に分散することで、骨の異常な動きを制御し、手術せずに治せることもあるからです。手術後の再発予防のため、足病専門医がインソールを作成することもあります。

 これなどは、手術の経験が豊富な整形外科医と、歩行メカニズムや足と体の動きの関係など、足の知識が豊富な足病専門医の両方の知識を持ち寄り、患者に最善の治療を提供する典型的な例と言えます。

 足病科では、原因不明の痛みを診療することも多くあります。足がピリピリ痛むので神経科で検査を受けたが異常が見つからず、足病専門医が相談を受けて解決できた症例もありました。

慢性疾患やがん患者の治療で主治医と協力することもありますか?

 あります。糖尿病などの慢性疾患で治療中の患者の場合、血流障害や神経障害に伴う足の症状の治療を主治医と相談しながら行います。慢性糖尿病患者は、足の神経が麻痺して異常に気付くのが遅れ、症状を悪化させることがよくあります。ささいな変化も自己判断で放置せず、早めの治療が大事です。

 がん患者の場合、抗がん剤の副作用で末梢神経が損傷して足がしびれたり、脚の筋肉が働かなくなって力が入らず、歩行が難しくなったりすることがあります。このような症状にはビタミンB12が有効です。抗がん剤の副作用で足底の脂肪が落ちて痛くて歩けないという人は、シリコン製パッドを足底に当てて衝撃を吸収できるかもしれません。歩けるようになると気分も上向き、治療に前向きに取り組めるという人は多いです。

 手術しか治療手段がないと言われた症状も、切らずに治せる場合もあります。「靴を履いて酷使する足は痛くて当たり前」と諦めず、足病専門医に相談してみるのもよいでしょう。

※次回は、小川史洋先生に肺がんについて伺います。


 

提携先のニューヨーク大学付属病院の手術室で執刀する林先生。足病専門医は、骨折、外反母趾、アキレス腱切断、こぶや腫瘍、糖尿病患者の壊疽など、さまざまな病気や症状の手術を行う(写真提供:林美香足病科クリニック)
Mika Hayashi, DPM

林美香先生
Mika Hayashi, DPM

足病医学博士(DPM=Doctor of Podiatric Medicine)。ニューヨーク大学関節疾患専門病院(NYU Hospital for Joint Diseases)提携医師。米国足病医学会(ABPM)公認足病専門医師。足の骨折、ねんざ、腱鞘炎、関節炎、かかとの痛み、水虫、イボ、むくみ、しびれなど、足の病気や悩み、けがの治療と手術が専門。日本の医学学会で講演も多い。

MIKA HAYASHI, DPM, PC
林美香足病科クリニック

TEL
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