2017/03/10発行 ジャピオン906号掲載記事

心と体のメンテナンス

思春期のうつと催眠療法(後編)

幼児期のつらい経験 捉え方を変えて克服

うつへの催眠療法のアプローチとは?

 うつは、クライアントの自分に対するイメージの低さから来ていることが多々あります。クライアントが何歳であっても、これは同じです。催眠療法では、自己イメージ低下の原因を過去にさかのぼって見つけ、うつの根本治療を目指します。

 「私はダメな人間で、他人から愛される資格がない」「どれだけ努力しても、良いことなんて何もない。私は運が悪い」などの自己イメージの低さは、その大元をたどると、子供のころのささいな出来事や誤解に行き着くことがほとんどです。過去に起きた出来事や事実を変えることはできませんが、催眠療法では、それらに対する「見方」を変えることで、うつの原因を取り去ります。

催眠療法のセッションでは、具体的に何をしますか?

 催眠療法士によってやり方はさまざまですが、私は「幼児退行療法」を取り入れることが多いです。クライアントに催眠をかけた状態で3歳のころまでさかのぼってもらい、自己イメージ低下の原因となった出来事を探ります。

 人間の脳は、その人が経験した全ての出来事を記憶しているといわれます。しかし、幼いころの経験は、よほどのことでない限り忘れているものです。普段の生活、つまり意識下では、脳の5%しか使っていないからです。しかし、催眠をかけた状態、つまり心の奥深くの潜在意識下では、最大95%まで活用できるので、忘れていた、または封じ込めていた出来事も思い出すことができます。

 例えば、周囲とコミュニケーションが上手に取れないという理由で母親に連れて来られた15歳の少年は、「他人といると、どうしようもなく嫌な気分になり、地面が揺れる感じがする」と訴えていました。幼児退行療法の結果、少年は小さなころに友達から体型をからかわれ、「歩くと地面が揺れる」と嘲笑された悔しさを思い出しました。15歳になった今は特別太ってもいないのに、その経験が尾を引いて、周囲から自分を遠ざけていました。

 他にも、気分が落ち込み、恋愛にも積極的になれないという30代の女性は、子供のころに両親が口論するたびに自分が悪い子供だからだと責任を感じ、悲しくなっていたことを思い出しました。その経験が心の傷となり、自分は他人から愛されない人間と決めつけていました。

 うつの原因が分かったら、次にそれを解消します。この30代女性の場合、催眠下で子供のころの自分と向き合ってもらいました。親との楽しかった出来事も実はたくさんあったことを思い出してもらい、本当は愛されて育ったこと、責任を感じる必要はないことを、子供のころの自分に繰り返し伝えてもらいました。それによって女性は、「親から愛されなかった子供」という自己イメージを払しょくし、自信を持てるようになりました。

 私の経験では、幼児退行療法を取り入れた催眠療法は効果が出るのが早く、何年も続いていたうつ症状が数回のセッションで解消する人もいます。ただし、抱える問題の数が多かったり、深刻な心的外傷(トラウマ)があったりする場合は、その分時間もかかり、必要に応じて複数の手法を組み合わせます。

ティーンエイジャーの相談内容を親に報告するのでしょうか?

 報告しません。催眠療法士には守秘義務があるので、クライアントが未成年でも保護者はセッションに同席しませんし、クライアントの了承を得ず、セッションの内容を保護者に勝手に報告することもありません。保護者にも、このことは事前に了承していただきます。

 子供の問題や悩みの原因は、親との関係にあることが少なくありません。プライバシーを優先することで、子供は安心してセッションに取り組めるようです。

催眠療法を受ける人にアドバイスを。

 自己イメージ低下の大元に行き着くためには、オープンな気持ちで取り組む心構えが大事です。日本人は、謙虚さを重んじる文化や宗教的背景から、それが難しい場合が珍しくなく、内面の苦悩を恥と感じている人もいます。しかし、勇気を出して自分の心に向き合ってこそ、問題は解消され、人生に前向きになれると、私は信じています。

※来週は、林美香先生に「足の専門医」をテーマにお話を伺います。


 

催眠療法の効果は、クライアントが催眠療法士を信頼し、どれだけオープンになれるかに左右される。催眠療法士との相性も大事(写真は編集部モデル)
2017-03-02 13.13.18

エミッグ美津さん
Mitsu Emig, MSW, CHT

国際メディカル・デンタル・ヒプノセラピー協会認定催眠療法士(CHT)。ミシガン大学で社会福祉学修士号(MSW)取得後、臨床ソーシャルワーカー、サイコセラピストとして臨床経験を積む。うつ、パニック障害、各種依存症などの精神症状や、ストレスが原因の身体症状の治療、潜在能力を引き出すライフコーチング、体重管理、禁煙などが専門。「催眠療法でハッピーに」をテーマにラジオ出演し、書籍を近く上梓予定。

Mitsu Hypnosis NY, LLC

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