2016/12/16発行 ジャピオン895号掲載記事

心と体のメンテナンス

更年期障害と鍼・漢方薬治療(前編)

誰でも経験する更年期 鍼と漢方薬で症状緩和

更年期について教えて下さい。

 更年期とは、女性の体が子供を産める状態から、排卵が止まり、月経がなくなる状態へ変化する移行期です。

 大半の女性は、40歳代後半から50歳代前半に閉経を迎えます。閉経が近づくと、卵巣から分泌される女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌が急激に減り、心身にさまざまな不調や症状が現れます。これらの不調や症状を更年期障害といいます。

 更年期障害の症状は、生理不順、のぼせ・ほてり(ホットフラッシュ)、寝汗、痛み、膣の乾燥、性欲低下、脱毛、体重増加、骨粗しょう症などの身体症状や、不眠、気分のむら、抑うつ感、イライラ、不安、記憶力低下などの精神面の変調まで多岐にわたります。症状には個人差があり、それも普通は一つではなく、いくつか重なって現れます。

 重症度も人によって異なり、日常生活に支障が出るほど症状が重い人もいれば、ほとんど影響を感じない人もいます。

 多くの場合、女性はエストロゲンが急に減る40歳代半ばから体調不良を経験します。しかし、それより早い人もいれば、遅い人もいます。また、更年期は通常2年で終わるとされていますが、閉経後時間がたっても症状を訴える人も多いのです。

東洋医学によると、更年期とはどういう状態ですか?

 女性の体が自らを維持するため、血液やエネルギーを体内に保存し始める時期です。

 東洋医学では、生殖活動、活力、長寿の源は腎臓にあると考えます。更年期は、腎臓に蓄えられた生殖能力の枯渇を意味します。そこで、体が血液と腎臓の能力を温存して体内に循環させ、女性の生命力を養い、寿命を延ばそうとします。つまり、東洋医学における更年期とは、女性が「生殖/子孫を残す」という役割を終え、新しい人生のステージへと踏み出すための、本当の変化が訪れる時期といえます。

東洋人と西洋人では、更年期の症状や、そのとらえ方に違いはありますか?

 米国で行われた「全米女性の健康調査」によると、人種・民族によって、更年期の症状や、更年期に対する考え方に大きな違いのあることが分かりました。

 例えば白人女性の場合、筋肉痛や不眠、イライラ感を訴える傾向があり、アフリカ系女性はホットフラッシュと寝汗を経験する人が多く見られました。またこれらの女性は、他民族の女性よりも、更年期をより前向きに乗り切ろうとしていました。

 一方、日本人と中国人女性の場合、寝汗やホットフラッシュの頻度はアフリカ系女性よりも少ないのですが、更年期と聞いて、なかなか前向きになれないと感じる傾向がありました。

鍼治療と漢方薬で、更年期障害の症状を改善できますか?

 できます。患者の症状や体質によって、鍼治療だけ、または漢方薬を組み合わせて治療を行います。心身両方の症状の緩和と解消に、鍼治療と漢方薬は大変有効です。

 当院は日本人患者が全体の60~65%程度と多く、更年期障害を訴える人のほとんどは45~55歳です。

ホルモン補充療法と比べ、鍼治療と漢方薬の利点は?

 ホルモン補充療法とは、エストロゲンを飲み薬や貼り薬によって補充する治療法です。更年期に激減するエストロゲンを補充するわけですから、更年期のさまざまな症状の緩和に効果があります。しかし、ここで知っておきたいのが、ホルモン剤の副作用です。

 ホルモン補充療法は、心臓疾患、高血圧、乳がん、子宮疾患のリスクを高めることが長年指摘されてきました。近年はホルモン補充療法と副作用の関係について研究が進み、さらに薬剤投与や投与中の管理法も徹底し、以前に比べ安全に治療を受けられるようになってきました。しかし、それでも副作用を懸念して治療を躊躇(ちゅうちょ)し、できれば薬は飲みたくないという人も少なくありません。

 その点で鍼治療と漢方薬は、治療が長期におよんでも、より安心して受けることができます。更年期症状は仕方ないとあきらめず、まずは専門家に相談して下さい。

※次回は、更年期障害の治療法や男性更年期についてお聞きします。


 

鍼治療は、更年期症状の緩和と解消に効果がある。治療部位によって、長さや太さの違う鍼を使い分ける
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リン・ゼン先生
Ling Zheng, LAc

ニューヨーク州免許取得鍼灸師(LAc=Licensed Acupuncturist)。中国福建医科大学卒業後、病院勤務や世界保健機関(WHO)医師団での活動を経て来米。全米鍼・東洋医学認定委員会(NCCAOM)認定鍼灸師(Diplomate of Acupuncture)。アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎などの皮膚疾患、痛み、更年期障害、うつ、不眠症の治療など。マンハッタンで1994年開業。日本人患者の治療経験が豊富。

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