2016/11/04発行 ジャピオン889号掲載記事

心と体のメンテナンス

自毛植毛技術の最新動向(前編)

世界初ロボットを利用 移植毛を高精度で採取

自毛植毛治療について教えて下さい。

 毛が薄くなったり、完全になくなったりした部分に自分の毛を植えつける、外科的植毛治療です。日帰りで受けられます。一般的に薄くなりにくい後頭部や側頭部から、毛の小さな集まり(毛包ユニット)を採取し、脱毛が進んだ場所に移植します。移植後の毛髪は、ほぼ生涯を通じて生え続けます。

「切らない自毛植毛治療」とは?

 まず、毛髪の採取方法は毛包ユニット移植(FUT=Follicular Unit Transplantation)と、毛包ユニット採取(FUE=Follicular Unit Extraction)の主に2種類です。

 FUTとは、毛髪のある部分の頭皮を帯状に切除する方法です。切除した頭皮から、何百、何千という毛包ユニットを、顕微鏡下の手作業で取り出します。FUEに比べ費用が安く、髪を長めにしたい人に適しています。しかし、頭皮切除部位を閉じた後、線状の結合痕が残るので、短髪にしたい人には向きません。

 一方のFUEは、頭皮を切除せず、毛包ユニットを1個ずつ、手作業で頭皮から直接採取する方法です。採取後に小さな穴が残りますが、数日もすれば自然に治癒します。FUTと違い切開痕が残らないため、短髪が好きな人や、頭皮を切るのが怖い人、普段の運動をすぐ再開したい人などに喜ばれています。利点については、来週後編でも詳述します。

 いずれの方法も、毛髪を増やしたい場所に小さな穴を開け、採取した毛包ユニットを、1個の穴に1個ずつ植えつけます。周囲の毛髪の密度や毛の流れ、生え方に合わせて移植するので、自然な仕上がりを期待できます。

 施術は局所麻酔下で行うため、痛みはありません。施術時間は、採取する毛包ユニットの数によって3~14時間ほど。長時間に及ぶ場合は、2日に分けて行います。

 施術後2~3カ月で、移植した所から新しい毛が生え始め、約1年後に毛が生えそろい、植毛治療の効果が最大になります。

ロボットを使った最新技術とは?

 人が手で行ってきたFUEの毛包ユニット採取作業を、ロボットによって正確かつ確実に行えるようになりました。当院は「アルタス(ARTAS)」と呼ばれる世界唯一のFUE用ロボットシステムを、2011年のリリース当時から使っています。

 まず、毛包ユニットを採取する部位を決め、専用装置で皮膚を引き伸ばします。次に、ロボットアームの先端に取り付けた「2パンチシステム」と呼ばれる中空の毛包ユニット採取用器具をコンピューター制御し、毛包ユニットを1個ずつ引き抜きます。

 その手順としては、皮膚の上から1ミリ程度の深さまで採取器具を差し込み(1パンチ)、次にその一部が高速回転しながら約3・5ミリの深さまで進み(2パンチ)、毛包ユニットを周辺組織から切り離すというものです。

 ここで大事なのは、毛根を傷めないこと。毛根が切断されると、それを植えても毛は正常に生えません。毛髪は、生える方向や角度が1本ずつ違い、しかも表面に出た部分と、皮膚下の見えない部分でも角度が異なります。従来の手作業のFUEでは、医師が肉眼で生え具合を判断しており、医師の経験や技術に頼る部分が多々ありました。

 アルタスの場合、専用カメラで撮影した頭皮の画像をコンピューターで分析し、個々の毛髪の角度や向き、毛髪の密度、各毛包ユニットの毛の本数を瞬時に算出します。適切な角度と深さに採取器具を進入させるので、毛根や周辺組織を傷めません。

 通常一つの採取部位から全体の25%の毛包を取りますが、採取後の見た目が不自然にならないように、医師がコンピューターをプログラムし、最適な間隔を調整し、毛髪を「間引き」します。毛包1個あたり普通は1~4本の毛髪が生えていますが、毛髪の数が多い毛包を選んで採取することも、最近できるようになりました。

 採取時間も短縮され、毛包ユニット1個あたり1000分の1秒です。

 アトラスは世界で135台が導入されており、そのうち約半数が米国、11台が日本にあります。現在、植毛治療の5%がアトラスを使って実施され、高い効果を上げています。

※後編は、治療法の選び方、開発中の技術などについて伺います。


 

▽写真上=移植用毛包約4500個を採取(赤い部分)。▽写真下=治療3カ月後。頭頂部の移植毛包から髪が生え始めた。採取部位は髪が生えそろった(写真提供:バーンスティーン先生)
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ロバート・M・バーンスティーン先生
Robert M. Bernstein, MD, MBA, FAAD, FISHRS

皮膚科医師。毛包移植手術の世界的権威であり、FUT(Follicular Unit Trans- plantation)とFUE(Follicular Unit Ex- traction)の開発者として知られる。ARTAS RoboticSystemを開発したRe- storation Robotics社の医療アドバイザーとして、システム改良に従事。コロンビア大学皮膚科臨床教授。米国皮膚科学会フェロー(FAAD)、国際毛髪再生外科学会フェロー(FISHRS)など。

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