2016/09/23発行 ジャピオン883号掲載記事

心と体のメンテナンス

がん患者の心のケア(後編)

豊富な患者向けサポート 介護者のケアも忘れずに

患者が抱える仕事の心配や悩みとは?

 治療をしながら仕事を続けるか、それとも仕事は休んで治療に専念するか、またはとりあえず治療を始めてから様子を見て決めるかーー仕事を持つ患者の多くが決断に迷うところです。 治療の副作用の影響や、体力がもつか、治療と仕事のスケジュールを調整できるかなど、心配や悩みはつきないかもしれません。まずはオンコロジスト(腫瘍内科医)である主治医に、自分の希望とゴール(目標)を正直に伝え、相談することをお勧めします。

医師は治療の種類、副作用、安全性を考慮し、仕事を休むよう勧める場合もあれば、仕事も含め、普段通りの生活を続けるよう励ます場合もあるでしょう。医師の意見と患者自身の価値観、どちらも決定に重要な要素です。

多くの患者にとって、仕事は単なる収入源ではなく、自分のアイデンティティーでもあります。満足感や、自分の創造力を感じさせてくれるのが仕事であり、心身と生活に安定をもたらす大切な存在です。医師の許可を得て、無理なく仕事を続けることが可能であれば、がんの診断を受けたことのショックで不安定になった心身のバランスと生活を正常化し、「コントロール感覚」を取り戻すこともできるかもしれません。

職場での患者の権利とは?

 休職すれば収入減に即つながる場合も多く、患者は経済的問題にもしばしば直面します。休職中は所得補償を受けられるのか、健康保険は支給されるのかなど、職場のベネフィットについて、雇用主に確認しましょう。 仕事を続ける場合は、無理のないスケジュール、必要に応じた仕事の内容・環境・量の調整、自宅勤務など、柔軟性が求められることもあります。雇用主の規模にもよりますが、患者には、これらの必要な調節を要求する権利があります。患者の権利を知ることは、雇用主との交渉や、がん患者として不当な差別を受けた場合に、自分を守るために役立ちます。

患者の権利に関する情報は、別記(表)のウェブサイトに詳しく掲載されています。また、日米ソーシャルサービスと日系人会が、医療保険に関する情報を日本語で提供しています。

心のケア面での患者サービスとは?

 大きな病院の多くは、患者向けにさまざまなサービスやサポートを提供しています。 例えば私が勤務するがんセンターでは、がん患者専門のソーシャルワーカーが、患者の精神面、生活面、社会面、人間関係などの問題を患者と話し合います。そして、カウンセリング、サポートグループ、ケアに関する情報提供や教育、身体イメージの向上を目的としたメーキャップ(化粧)クラスなどのサービスを、必要に応じて無償で紹介しています。患者に精神医療が有益と判断された場合は、ソーシャルワーカーがまず患者と面接し、精神科医師への紹介を行います。

ちなみにサポートグループとは、がん患者同士、介護者同士など、同じ境遇にある人が感情を共有し、情報交換もできる場です。病院以外でも、全米規模または地域の非営利団体などが各種サービスを無償で提供しています(表)。

介護者の心の変化とは?アドバイスはありますか?

 愛する家族、パートナー、友人などががんと診断されると、介護する側も同じようにショックを受け、喪失を味わい、強いストレスにさらされます。 介護者は、患者のケアに加え、通院への付き添い、収入の心配、患者以外の家族の世話、自分の仕事など、日常生活で今まで以上の責任を負い、心身ともに疲弊することでしょう。精神的に追い詰められても、「私がしっかりしなくては」という責任感から、自分自身のケアが二の次になり、健康を損なう危険も高くなりがちです。

介護を続けるためには、介護者の健康管理がとても大切です。患者に「申し訳ない」と思わず、むしろ「スムーズに介護を続けるため」に、休養、ストレス緩和、健康維持に努めてください。周囲の方々も介護者の重責を理解し、ぜひ温かい声をかけ、自分に無理なくできる具体的援助があれば、さりげなく伝えてみるのも一案です。

※次回から、ロバート・ムラヤマ先生にトランスジェンダーのヘルスケアについて伺います。


■がん患者と介護者を支援する全米規模の非営利団体と主なサービス
•American Cancer Society
www.cancer.org):
全米各地域のサポートグループ情報や、がんに関する各種情報の提供
•CancerCare(www.cancercare.org):
対面・電話・オンラインを含むサポートグループや、無料カウンセリングなど
•Imerman Angels
www.imermanangels.org):
電話による患者同士の相互支援サービスなど
■患者の権利に関する情報を提供する団体
•Cancer and Careers
www.cancerandcareers.org
Triage Cancer(www.triagecancer.org
■医療保険に関する情報を日本語で提供する団体
•日米ソーシャルサービス(JASSI)
www.jassi.org
•ニューヨーク日系人会(JAA)
http://jaany.org/ja

 

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三宅亜紀子さん
Akiko Miyake, LCSW, OSW-C

ニューヨーク州認定臨床ソーシャルワーカー(LCSW)、オンコロジー協会認定オンコロジー・ソーシャルワーカー(OSW-C)。ニューヨーク大学(NYU)大学院ソーシャルワーク修士課程卒業。非営利団体キャンサーケア(CancerCare)、ベスイスラエル総合がんセンターを経て、現在NYUランゴン・メディカルセンター傘下の総合がんセンター勤務、当センター患者向けのカウンセリングや各種サポート、サービスに従事。

NYU Langone Medical Center

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160 E. 34th St. (bet. 3rd & Lexington Aves.)

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