2016/08/12発行 ジャピオン877号掲載記事

心と体のメンテナンス

中高年に多い心臓の病気(後編)

脈が乱れる心房細動 放置すると脳梗塞に

心房細動とはどんな病気ですか?

 心臓は四つの部屋に分かれています。心房細動とは、そのうち心房と呼ばれる上の部屋が小刻みに震える病気です。症状のない人もいますが、放っておくと脳梗塞の原因になるので、早めの発見と治療が大切です。

 心臓は、血液を全身に送り出すポンプの働きをしています。右の上の部屋(右心房)から右の下の部屋(右心室)に送り込まれた血液は、まず、肺に駆出(くしゅつ=送り出すこと)されます。肺で酸素をもらってきれいになった血液は、次に左の上の部屋(左心房)に戻され、左下の部屋(左心室)から全身に送り出されます。こういった心臓の動きは、右心房上部の洞房結節から出る電気信号によってコントロールされています。心房細動は、この電気信号が心房の中で乱れることで起こります。

 心房細動は、加齢とともに増える病気です。女性よりも男性に多く、高血圧や糖尿病、肥満などによって発症リスクが上がります。

 

心房細動になると、どうなりますか?

 突然脈が速くなり心臓がドキドキし、息苦しくなります。発症して間もなくの発作性心房細動の場合、5~6分もすれば治まりますが、次第に発作回数が増え、症状の持続時間も長い持続性心房細動へと移行します。

 心房細動は、脈が乱れる不整脈の一つです。不整脈の中でも最も患者数が多く、「ダダ、ダダダ、ダ・・・」というように、脈が完全に不規則になります。
 安静時の心臓は、1分間に約60回収縮運動を繰り返しています。それが心房細動になると、心房が1分間に何百回も震えるけいれん状態に陥ります。この震え、つまり電気興奮がそのまま心室に伝わると、心臓は血液を駆出できなくなりますが、普通は心房から心室へ電気興奮が間引いて伝えられるため、直ちに死に至ることはありません。

 心房細動で問題となるのは、けいれん状態でうまく収縮できなくなった心房に血がたまり、血の塊である血栓(けっせん)ができることです。血栓がはがれて血流に流れ込むと、それが脳の血管を詰まらせて脳梗塞の原因になります。特に重度の脳梗塞が起こりやすく、言語障害や半身まひなどの後遺症が残ることもあれば、命にかかわることにもなりかねません。

 心房細動は自覚症状がない場合もあり、脳梗塞を発症して初めて気付く人も少なくありません。人によっては、頻脈による心不全を起こすこともあります。

 

心房細動はどのように治療しますか?

 個人差はありますが、一般的に薬物療法から始めます。
 まず、脳梗塞予防のため、血をサラサラにする薬を使います。年齢、心不全・高血圧・糖尿病・脳梗塞の既往など、脳梗塞の発症リスクを点数化し、リスクに応じて治療します。

 次に、心房細動の治療です。これには、①心房のけいれんを止め、不整脈を規則正しい脈に戻す「リズムコントロール」と、②不整脈のまま、心拍数だけを調整する「レートコントロール」という2つの考え方があります。患者の状態を考慮した上でどちらかに決め、薬を選びます。

 

カテーテル・アブレーションとは?

 頻拍の原因となる部位を焼灼(しょうしゃく=焼くこと)し、電気興奮の異常な流れを止める治療です。心房細動に対する根治治療であり、一般的に発作性心房細動の場合、1回の処置で約7割、2回の処置で約9割の人が根治を期待できます。持続性の場合は根治率がやや低く、処置1回で約5~6割、2回で約7~8割です。

 太ももの付け根から細い管(カテーテル)を入れ、血管をたどって心臓の中に送り込みます。そして、カテーテルの先から高周波電流を流し、治療部位を一カ所ずつ焼きます。開胸しないので体への負担が小さく、大変有効な治療です。

 この手術は、薬で症状をコントロールできない人、症状が強い人、副作用のために薬を継続できない人などが対象です。日本でこの手術ができる医師はまだ多くはありませんが、今後は徐々に増えるでしょう。

 高血圧や糖尿病、肥満といった心房細動の危険因子を治療、解消することも、心房細動の予防と治療に欠かせません。

※次回は、クララ・リー先生に妊婦の歯科治療と最新技術について聞きます。

 

心臓は、洞房結節から出される電気信号によってコントロールされている。心房細動は、心房の中で電気の流れが乱れることで起こる。=(公財)循環器病研究振興財団の資料を基に作成=
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中西弘毅先生
Koki Nakanishi, MD, PhD

心臓疾患専門内科医師。大阪市立大学医学部卒業後、約10年間臨床・臨床研究に従事。2015年来米、現在コロンビア大学医療センター・非侵襲心臓血管画像研究所(NoninvasiveCardiovascular ImagingLaboratory)ポスドク特別研究員。心臓画像検査に基づく心血管疾患発症リスクの研究や、動脈硬化性疾患・不整脈疾患のカテーテル治療などが専門。米国では診察を行っていない。

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