2016/08/05発行 ジャピオン876号掲載記事

心と体のメンテナンス

中高年に多い心臓の病気(前編)

動脈硬化が原因の心筋梗塞 胸痛が起きたらすぐ救急車

心筋梗塞とはどんな病気ですか?

 心臓は、冠動脈という3本の血管に外側を取り巻かれ、血液から酸素や栄養分を受け取って機能しています。心筋梗塞とは、冠動脈の一部が詰まることにより、そこから先の血流が途絶え、心臓の筋肉が腐って死ぬ病気です。日本のデータですが、発作後1時間以内に病院で処置すれば、約9割の人は助かりますが、処置が遅れると、そのまま死に至ることもあります。

 主な症状は、締め付けるような胸の強い痛みと冷や汗です。吐き気や、顎・左肩の痛みを訴える人もいます。症状は突然出て、30分以上続きます。

 

心筋梗塞はなぜ起きるのですか?

 心筋梗塞にもさまざまなタイプがありますが、一般的に動脈硬化が原因です。動脈硬化とは、動脈の一番内側の膜にプラークと呼ばれるコレステロールの塊ができて、血管が硬くなったり、狭くなったりして、血液の流れが悪くなった状態です。

 最も一般的な心筋梗塞は、プラークが破裂することで起こります。破れた部分に血の塊である血栓(けっせん)ができ、やがて血栓によって血管が完全に塞がれます。

 心筋梗塞とよく勘違いされる狭心症も、動脈硬化が原因です。心筋梗塞との違いは、プラークが破裂しておらず、血管が狭いだけでまだ開いていることです。階段をのぼったときなど、心臓に負担がかかったときだけ血流不足が問題となり、胸が痛くなります。数分から15分ほど安静にすると症状は治まります。

 動脈硬化の危険因子は、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙など。まず、血圧が高いと、血管内膜が異常に圧迫され、傷ができやすくなります。傷ができると、そこにコレステロールが入り込み、同時に炎症が生じる結果、さまざまな血液因子が集まって、プラークが形成されます。糖尿病や喫煙も慢性炎症を引き起こし、血管内膜を傷つけることが知られます。

 また、動脈硬化は加齢とともに進みます。そのため、心筋梗塞も高齢者に多いのですが、最近、日本では30代、40代の若い男性の発症が増えています。動物性脂肪の多い高カロリー食の普及や運動不足など、食事や生活習慣の変化が影響しているようです。

 発症傾向には性別差もあり、男性は年とともに徐々に増えますが、女性は、女性ホルモンの分泌が低下する閉経後に増加します。これは、女性ホルモンに動脈硬化を防ぐ作用があるためです。

 

心筋梗塞はどのように治療しますか?

 基本は、閉じた血管を開くカテーテル治療です。一度壊死した心筋は回復しませんが、損傷を最小限に食い止めることができます。

 手首の付け根や太ももの付け根から直径2ミリ程度の細い管(カテーテル)を冠動脈に入れ、血管が詰まったところまで送り込みます。そして、風船と、しぼめた状態の金属の筒(ステント)を膨らませ、血管を広げます。最後に風船を抜き、ステントだけが血管内に残ります。開胸しないので体への負担が小さく、安全性も高い手術です。ただ、血流再開後は重篤な不整脈や心破裂、心不全などの合併症の危険があるため、日本の場合、術後数日は集中治療室で様子を見て、その後一般病棟で治療を続けます。術後大きな合併症がなければ、入院期間は約2週間です。

 

心筋梗塞予防のためにできることは?

 血流再開と同じくらい大事なのが、血栓の予防です。術後は、血をサラサラにする薬と、心臓を守る薬による治療を始めます。高血圧、高脂血症、糖尿病など、動脈硬化の危険因子のある人は、その治療をしっかり行います。日ごろから食生活に気を付け、しっかり歩くことを心掛けましょう。ここまでが、心筋梗塞の治療です。カテーテル手術が成功すれば、それで終わりではありません。

 すべての人に必要なわけではありませんが、動脈硬化のリスクが大きいか、原因不明の胸痛があるなどの場合は、造影剤を使用する心臓のコンピューター断層撮影(冠動脈CT)検査で冠動脈の動脈硬化の程度を調べることもできます。

 心筋梗塞の後遺症や合併症を防ぐには、早期治療が不可欠です。症状に気付いたら我慢せず、すぐに救急車を呼んでください。
 
※後編は、心房細動についてお聞きします。

 

心疾患(心筋梗塞を含む)と、その発症リスクを高める主な疾患の総患者数(調査時点で継続的に治療を受けていると推測される患者数)推移(日本)。心筋梗塞の危険因子のある人は、その治療をしっかり行うことが大切(出典:厚生労働省「平成26年患者調査」)
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中西弘毅先生
Koki Nakanishi, MD, PhD

心臓疾患専門内科医師。大阪市立大学医学部卒業後、約10年間臨床・臨床研究に従事。2015年来米、現在コロンビア大学医療センター・非侵襲心臓血管画像研究所(NoninvasiveCardiovascular ImagingLaboratory)ポスドク特別研究員。心臓画像検査に基づく心血管疾患発症リスクの研究や、動脈硬化性疾患・不整脈疾患のカテーテル治療などが専門。米国では診察を行っていない。

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