2016/06/17発行 ジャピオン869号掲載記事

心と体のメンテナンス

よく使われる市販薬・処方薬の落とし穴(後編)

処方鎮痛薬と睡眠薬 依存や耐性に要注意

医師が処方する鎮痛薬について教えてください。

 よく使われるのは、オピオイド鎮痛薬に分類される医療用麻薬です。鎮痛効果が高く、手術後や抜歯後の痛み、頭痛、足腰の痛み、がんの疼痛治療などに幅広く用いられます。用法・用量を守れば安全な薬ですが、依存性が高いので注意が必要です。

 代表的な成分は、モルヒネ、フェンタニル、オキシコドン、ヒドロコドン(ハイドロコドン)など。常用者の薬物依存が社会問題化しているパーコセット(Percocet)やオキシコンチン(OxyContin)というブランド名の薬は、メディアでもよく報道されます。

 麻薬には、痛みや苦しみを抑え、多幸感をもたらす作用があります。効くからといって大量に使い、多幸感を求めて漫然と服用を続けると、やがて依存性と耐性を生じ、量を増やさないと効果を得られなくなります。麻薬の大量摂取は、命にかかわります。これらの危険性を理解し、処方鎮痛薬は医師の管理下で適切に使います。長期間使用した後は、離脱症状を防ぐための対策も大事です。

 

睡眠薬服用時の注意点は?

 なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚めるなどの症状には、睡眠薬が有効な場合があります。ただし、処方鎮痛薬と同じように依存性が心配されるので、安易な連用は避けるべきです。

 よく使われる処方薬は、催眠と抗不安作用を持つ催眠鎮静薬です。主成分はベンゾジアゼピン系と、それ以外の非ベンゾジアゼピン系に大別され、前者の方が依存性は高いとされています。ベンゾジアゼピン系の製品は、ハルシオン(Hal- cion)、ザナックス(Xanax)、アティバン(Ativan)など。非ベンゾジアゼピン系はアンビエン(Ambien)、ルネスタ(Lunesta)、ソナタ(Sonata)などです。

 催眠鎮静薬の主な副作用は、記憶力・注意力・判断力・筋力の低下です。長期間使用すると、認知症リスクが高まることも知られます。また、数週間以上の連用によって依存が生じ、薬がないと眠れなくなり、服用をやめると離脱症状が現れます。薬を飲むと飲酒したときのように緊張や不安が緩和されるので、それを目的に使用を続け、気付いたら依存症になっていたというケースは珍しくありません。

 催眠鎮静薬は、本来は精神科医師が処方するのが好ましい薬です。しかし、精神科以外の医師が気軽に処方する傾向があり、その結果、依存者の増加が指摘されています。

 アメリカでは、処方の催眠鎮静薬と鎮痛薬の多くが依存性薬物として規制されており、乱用対策が講じられています。依存が心配な人は、速やかに医師に相談してください。

 

アレルギーの市販薬とその副作用は?

 アレルギー性のくしゃみ、鼻水、鼻づまりには、抗ヒスタミン剤が有効です。第一世代製品は、即効性がある代わりに眠くなるという問題がありましたが、最近の第二世代製品は、値段は高めですが、眠くならない/なりにくいのが特徴です。第二世代製品は、1日1錠を花粉シーズン中に継続して服用することで、アレルギーを予防する効果があります。

 主な製品は、第一世代がベナドリル(Benadryl)、第二世代がクラリティン(Cla- ritin)、アレグラ(Allegra)、ジルテック(Zyrtec)などです。ベナドリルは花粉症だけでなく、蕁麻疹(じんましん)などの皮疹などにも即効性があります。場合によっては、眠気を覚悟で第一世代製品を服用する方がいい場合もあります。

 第一世代の副作用は、眠気以外に口や目の乾き、便秘、近くが見えにくくなるなど。前立腺肥大症の人は、尿が出にくくなることがあります。さらには、第一世代製品を睡眠薬代わりに使う人もいますが、長期間の連用は癖になるのでやめた方が無難です。

 

薬を日本に持ち帰る際の注意点は?

一部の医療用麻薬や精神科薬(脳など中枢神経に作用し、精神活動に効果をもたらす薬物の総称)など、薬によっては国外からの持ち込みが規制されており、違反は処罰の対象になります。詳細は在米の日本国大使館・総領事館などに問い合わせてください。事前許可が必要な薬もあるので、時間に余裕を持って準備することをお勧めします。

※来週は、シンボ・ダイチ先生に高血圧について伺います。

 

処方鎮痛薬のパーコセット。市販薬に比べて鎮痛効果は高いが、依存性も高いので使用には注意が必要だ
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桑間雄一郎先生
Yuichiro Kuwama, MD

内科専門医師。東京海上記念診療所院長、マウントサイナイ医科大学内科准教授。東京大学医学部卒業後、腫瘍血管外科勤務を経て来米、ベス・イスラエル病院内科で内科研修を修了。東大医学部非常勤講師、日本医師会総合政策研究機構・主任研究員などを歴任。著書に「裸のお医者さまたち」(ビジネス社)や医学生向け教科書など多数。日米の医学生や若手医師の教育にも尽力。

東京海上記念診療所
Mount Sinai Beth Israel Japanese Medical Practice

TEL
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