2016/05/20発行 ジャピオン865号掲載記事

心と体のメンテナンス

歯ぎしりの危険性(後編)

睡眠時にマウスピース装着 圧力から歯と顎関節を保護

歯ぎしり(bruxism)は、どのように治療しますか?

 治療法は、原因によって異なります。しかし、歯ぎしりは複数の要因が絡み合って起きると考えられていることと、原因やリスク因子がすべて解明されているわけではないことから、歯ぎしりを完全になくすのは困難です。そのため、歯や歯茎、顎関節を歯ぎしりの影響から守り、同時に症状を軽減することが、治療の目標となります。

 原因に未解明部分が多いとはいえ、私の経験から一つ言えるのは、過度のストレスや不安が歯ぎしりの発生にかかわっているということです。ストレスの関与が疑われる場合、たまったストレスの発散や、ヨガ、瞑想(めいそう)、呼吸法などを日常生活に取り入れることで、歯ぎしりを抑制できる可能性があります。

 

歯ぎしりから歯や顎関節を守る治療とは?

 最も一般的なのは、ナイトガード(night guard)という、透明な樹脂製の専用マウスピースを使う方法です。通常、上の歯列全体にかぶせるタイプを作成し、睡眠時だけ装着します。胃酸や胃の内容物が食道内に逆流する胃食道逆流症がひどい場合などは、例外的に下の歯に装着することもあります。

 ナイトガードにもいろいろな種類がありますが、私が好んで使うのは、外側に固い素材を、歯と直接接触する内側に柔らかい素材を使うタイプです。これを使うことで、上下の歯列の間にスペースができること、また、歯や顎関節への圧力や衝撃を吸収することで、歯と歯茎、歯冠修復物(歯の詰め物、被せ物など)、顎関節、顔や肩の筋肉を守ります。

 歯や顎関節への負荷が減れば、筋肉の凝りや痛みといった症状も抑えられます。ナイトガードを試した後は、起床時の顎関節の痛みや疲れ、肩や首の凝り、頭痛が緩和した・なくなったという人が多いです。

 運動や仕事に集中しているときなど、睡眠時以外に歯ぎしりをする人にもナイトガードは有効です。ただし、装着中はしゃべりにくいので、人と頻繁に会話するような場面での使用は難しいかもしれません。

 ナイトガードは、患者の歯型とかみ合わせを調べた上で、個々にカスタマイズして作ります。大抵の患者は、2~3週間もすれば装着に慣れるようです。

 一度作成したら、一般的に最低5年は使えます。破損後は作り替えが必要ですが、歯や歯冠修復物が損傷した場合の治療代と比べれば安い投資といえます。

 

歯ぎしりによる痛みを緩和する方法は?

 肩凝りや頭痛は、湿ったタオルで患部を温めるといいでしょう。患部をタオルで10分押さえて、10分離す――これを1時間繰り返すと、緊張した筋肉と関節がほぐれて楽になります。

 急な痛みには、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID=Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug)も有効です。市販薬には、アスピリン(バファリン、エキセドリンなど)、イブプロフェン(アドビルなど)、ナプロキセン(アリーブなど)があります。市販薬で十分な鎮痛効果が得られないときは、筋弛緩(しかん)剤を処方することもあります。いい薬ですが、副作用があるので使用には注意が必要です。

 眉間や目尻のしわ取り薬として人気の「ボトックス」を筋肉や関節に注射する方法も、一部で行われているようです。緊張した筋肉や関節をリラックスさせることで、痛みを緩和します。ほかにも鍼灸や、口や顎周辺のマッサージが効くという人もいます。

 しかし、これらはいずれも一時的に症状を緩和させる対症療法です。痛みのメカニズムを断ち切るために、ナイトガードによる治療をお勧めします。薬を使わないので、副作用の心配もありません。

 歯ぎしりによって歯周病や顎関節症が生じているか、歯や歯冠修復物が破損している場合は、それらの治療を並行して行います。顎関節症による顎の痛み解消のため、専門器具を補聴器のように耳に挿入する新技術も、欧州を中心に注目されています。

 歯ぎしりは、本人が気付いていないことがほとんどです。問題の早期発見のため、半年に一度の定期検診を徹底し、症状が思い当たる人は速やかに歯科医の診断を受けましょう。

※来週はカイロプラクタ―の石谷三佳先生に、痛みの新しい診断と治療法についてお聞きします。

 

△写真上=睡眠時に上の歯にナイトガードを装着する▽写真下=ナイトガードは患者の歯に合わせて作成される(写真提供:GlidewellLabo- ratories)
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ロバート・D・リップシャッツ先生
Robert D. Lipschutz, DMD

歯科医師。ペンシルベニア大学歯学部卒業後、コロンビア大学病院、日系歯科医院勤務などを経て独立開業した。一般歯科、神経治療、デンタルインプラント、審美歯科(べニア、クラウン、インビザライン、ホワイトニングなど)、歯周病治療など。予防歯科に力を入れており、患者には日本人も多い。米国歯科医師会、ニューヨーク州歯科医師会会員など。日本に帰国する患者に、東京・大阪の提携歯科医院を紹介可。

Robert D. Lipschutz, DMD, PC

TEL
212-752-3001
WEB
http://www.drlipschutz.com
MAP
57 W. 57th St., Suite 705 (at 6th Ave.)

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