2016/05/13発行 ジャピオン864号掲載記事

心と体のメンテナンス

歯ぎしりの危険性(前編)

放置された歯ぎしり 抜歯や痛みの要因に

歯ぎしり(bruxism)とは?

 歯ぎしりには、上下の歯を横にすり合わせるタイプのグラインディング(grinding)と、上下の歯を強くかみしめる・食いしばるタイプのクレンチング(clenching)の大きく2種類があります。どちらか一方だけの人もいれば、両方のタイプを併せ持つ人もいます。

 歯ぎしりは、決して珍しい症状ではありませんが、問題は、自覚症状のない人がほとんどだということです。そのまま放置しておくと、歯や歯茎、骨、顎の関節、首と肩の筋肉などにダメージが及ぶので、早めの対処が必要です。歯ぎしりは、抜歯や歯周病悪化の主要な原因の一つでもあります。

 グラインディングもクレンチングも、本人が無意識のうちに出る癖です。そのため、「寝ているときだけに起きるもの」と思われがちですが、それは間違いです。グラインディングは主に睡眠時に発生しますが、クレンチングは仕事や家事、運動などに集中しているときに起こります。パソコン画面を長時間凝視しているときや、スポーツジムで重量挙げをしているときなど、本人が気付いていないだけで、歯をかみしめていることはよくあります。

 

歯ぎしりの原因は何ですか?

 歯ぎしりは、さまざまな要因が組み合わさって起きると考えられています。まだすべてが分かっているわけではありませんが、仕事や子育て、人間関係など、日常生活での過度のストレスや不安がかかわっているのは確かなようです。

 私のミッドタウンのクリニックは、場所柄働き盛りの患者が多く、非常に努力家で成功している人がたくさんいます。しかし、そういう人ほど常に時間に追われ、ストレス発散も上手にできていないことが多く、歯ぎしりをするケースが多いと感じています。

 また、子供から高齢者まで、歯ぎしりは年齢に関係なく誰にでも起こります。

 

歯ぎしりに伴う主な症状は?

 歯ぎしりによって歯にかかる力は、食べ物をかむ際の数十倍ともいわれます。そのように強い力が歯にかかることで、歯が欠けたり、亀裂が入ったりすることがあります。

 特に神経治療後の歯は、水分が減ってもろくなっているので、ただでさえ割れやすい状態です。亀裂から細菌が入ると、歯茎が炎症を起こして腫れるほか、歯が大きく割れた場合は、抜歯を避けられないことがあります。

 ほかにも、歯ぎしりの力によって、以下のような症状が起こります。歯ぎしりを診断する際は、これらの症状の有無を調べた上で、総合的に判断します。

▽ 歯をかみ合わせる表面が摩耗し、かみ合わせが悪くなる。特に奥歯のかみ合わせ面の、とがった部分が摩耗し、平らになる。出っ歯になる。
▽ 前歯の表面に接着したべニア(セラミック製の薄片。歯の色や形、歯列を整えるための治療)やかぶせ物(クラウン)が欠ける・割れる、詰め物がはずれる。
▽ 歯周ポケット(歯と歯茎の境目の溝)が深くなり、汚れがたまりやすくなる。歯を支える骨がやせる速度が早くなり、歯茎が退縮し、歯周病になりやすくなる、または悪化する。
▽ 頬の内側の粘膜に、かみ合わせた上下の歯の線に沿って、少し盛り上がった白線(linea alba)が見られる。白線は、上下の歯のかみ合わせ部分と粘膜がこすれることによって、頬の左右両側にできる。
▽ 舌の左右両端が、歯の形にそってデコボコになる。
▽ 歯が痛い。冷たいものがしみる――など。
 これらは口の中の症状ですが、ほかにも以下のような症状がある場合、歯ぎしりが疑われます。
▽ 朝起きたときの顎の痛み、疲れ、凝り。
▽ 頭痛。耳や顔の痛み。
▽ 肩や首の凝り。
▽ 睡眠障害――など。

 重症の場合、口が大きく開かない、口を動かすと顎が鳴る(顎から音がする)、顎が痛む――といった症状が特徴の顎関節症を引き起こすこともあります。

 睡眠中のグラインディングの場合、隣に寝ている人が「キリキリ」「ギシギシ」といった音に気付くこともあります。しかし、一人暮らしだったり、音が出ないタイプの歯ぎしりだったりすると、本人も家族も、症状になかなか気付きません。歯科医に指摘され、驚く人がほとんどです。

※後編は、歯ぎしりの治療法についてお聞きします。

 

歯ぎしりを放置すると、かみ合わせ面が摩耗して歯が短くなるほか、歯に亀裂が入ったり、欠けたりする。歯周病も悪化し、歯を失う原因になる(写真提供: Glidewell Laboratories)
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ロバート・D・リップシャッツ先生
Robert D. Lipschutz, DMD

歯科医師。ペンシルベニア大学歯学部卒業後、コロンビア大学病院、日系歯科医院勤務などを経て独立開業した。一般歯科、神経治療、デンタルインプラント、審美歯科(べニア、クラウン、インビザライン、ホワイトニングなど)、歯周病治療など。予防歯科に力を入れており、患者には日本人も多い。米国歯科医師会、ニューヨーク州歯科医師会会員など。日本に帰国する患者に、東京・大阪の提携歯科医院を紹介可。

Robert D. Lipschutz, DMD, PC

TEL
212-752-3001
WEB
http://www.drlipschutz.com
MAP
57 W. 57th St., Suite 705 (at 6th Ave.)

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