2016/05/06発行 ジャピオン863号掲載記事

心と体のメンテナンス

患者中心のメディカルホームと統合ケア(後編)

心の問題が体に影響 メンタルケアで解決

医療とメンタルヘルスの総合的・連携ケア(統合・連携ケア=Integrative Behavioral Health Consultation/Collaborative Care)とは?

 主治医を中心に、各種専門医や専門家、医療関連施設などがチームを組んで治療に当たる医療モデルを「患者中心のメディカルホーム(Patientcentered Medical Home)」と呼ぶことは、前回お話ししました。このチーム医療の中でも、統合・連携ケアは、特にメンタルヘルス専門家による心のケアを重視し、積極的に連携を図る概念です。

 統合・連携ケアの目的は、▽患者によるメンタルケアへのアクセス向上、▽メンタルケアに対する偏見の解消、▽精神的症状を治療することによる、心身の包括的な健康向上――です。統合・連携ケアを取り入れる方法はさまざまですが、メンタルヘルス専門家が主治医と同じ組織に所属し、同じ病院や診療所に常駐するモデルが最も効果的とされています。

 

統合・連携ケアの流れは?

 高齢の女性患者のケースを例に説明しましょう。この患者は、リウマチや心臓病などの慢性疾患があり、主治医から薬を処方されていました。しかし、薬を飲まないため、別居する家族が困って主治医に相談し、心の問題を疑った主治医から、同じ診療所に常駐するサイコロジストの私に相談がありました。

 そこで、患者の同意を得て主治医からカルテを入手し、病歴や現在の様子を聞いて診察したところ、患者は「一人暮らしで寂しい。先立った夫のもとに早く行きたい。だから薬は飲まない」と訴え始めました。現状に強い不安を感じ、うつ症状が現れていたのです。

 認知症の兆候もあったため、主治医に伝えました。主治医から紹介された神経科医の検査で、患者は初期のアルツハイマー型認知症と診断されました。

  患者は現在、従来の治療に加えて、不安とうつ、アルツハイマー型認知症の治療を受けており、薬も飲み始め、状態が徐々に落ち着いてきました。家族は、患者 の性格や行動の変化が病気のせいだったことを理解し、適切な接し方を学び、優しい気持ちで付き合えるようになりました。

 

統合・連携ケアによるメンタルケアの特徴は?

 対象となるのは、メンタルケアが必要だと主治医が判断した患者です。そのため、体の不調や症状を引き起こしている心の問題やストレスを突き止め、早期解決することに重点が置かれます。

 患者に多いのは、①原因不明の胃痛や頭痛、節々の痛みが続く、②糖尿病や心疾患などの慢性疾患があるのに、食事療法や生活改善を継続できない、薬を医師の指示通り服用しない、③痛みを緩和したい、などのケースです。 

 ①の場合、家族との死別、夫婦不和、仕事や失業などのストレスが原因で、明らかに不安やうつ症状が現れていることが多々あります。
②の場合も、例えば暴飲暴食をやめられないのは、意思が弱いからではなく、慢性疾患を抱える不安や、将来に希望を失ったことからうつになり、飲食で気持ちを紛らわせているのかもしれません。③の場合、恒常的な痛みは疲労を伴い、心理的要素が多分に影響するからです。

 いったん心の問題を明確にしたら、認知行動療法によって解決に取り組みます。考えていることは体や感情に影響し、行動につながります。そのため認知行動療法では、不安やうつを引き起こす考え方や行動を変えるスキルを訓練し、それを駆使することにより、患者が自力で精神症状やストレスを軽減できることを目指します。不安の強い人には、例えば呼吸法や、現実をあるがままに受け入れる訓練「マインドフルネス」などの不安対処法を具体的に指導します。うつの場合、無気力感に立ち向かい、行動量を増やす訓練が有効です。通常1~6回のセッションで効果が現れます。

 心の問題は、血液や画像検査では分かりません。それだけに見逃されやすく、患者も受診を先延ばしにしがちですが、統合・連携ケアによって放置される危険を防ぎ、最適な治療につなげることができます。原因不明の慢性痛や症状もあきらめず、主治医に相談し、メンタルケアを積極的に活用してください。

※来週は歯ぎしりについて、歯科医のロバート・D・リップシャッツ先生に伺います。

 

鈴木先生の個人開業クリニックの診察室は、ゆったりと落ち着いた雰囲気。
対照的に、普通のクリニック内にある統合・連携ケアの診察室は、机と椅子だけと質素
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鈴木貴子先生
Takako Suzuki, PhD

クリニカルサイコロジスト、心理教育学博士。個人開業クリニックおよび患者中心のメディカルホーム認定機関で、18歳以上から老年期の多人種の患者を対象 に、不安・恐怖症・パニック症状・強迫観念症・うつ症状などの治療と、病気に伴うストレスの緩和、異文化適応・教育・国際結婚に関する相談に従事。フィラデルフィア日本人会会長。
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