2016/04/22発行 ジャピオン861号掲載記事

心と体のメンテナンス

患者中心のメディカルホームと統合ケア(前編)

チーム医療で包括的ケア メンタルヘルス面を重視

患者中心のメディカルホーム(Patient- centered Medical Home)とは何ですか?

 健康維持のためには、体はもとより、本人の社会的環境や心の健康に配慮する必要があるという観点から、子供から青年、成人、高齢者にいたるまでの患者に包括的ケアを提供する医療モデルです。患者の主治医を中心に、各種専門医やメンタルヘルス専門家、病院、在宅医療機関、介護施設などが連携し、個々の患者のニーズに合った、安全で質の高いケアを目指します。

 主治医は、患者の同意を得た上で、専門医やその他医療関係者と患者情報を共有し、その結果を総合的に考慮して治療に当たります。主治医が主導して専門医と連携する、いわゆるチーム医療はこれまでもありましたが、近年はそれに、サイコロジストやサイコセラピストなどの、メンタルヘルス専門家を新たに加える動きが出てきたのが特徴です。

 患者中心のメディカルホームの概念は、患者ケアの質向上以外にも、健康増進やヘルスケアコスト削減を目的に、多くの病院や診療所で導入されています。

 

メンタルヘルスを重視する理由は?

 体のさまざまな症状は、メンタルヘルス、つまり精神面の状態を反映していることが多いからです。

 原因不明の体の痛みや睡眠障害、食欲不振・過食、胃の不調、高血圧などの症状のある人、治療しているにもかかわらず慢性疾患がよくならない・悪化するという人は、精神的に悩みや問題を抱えていることが多々あります。実際、本人が気付いていないだけで、主治医を受診する患者の約7割には、不安やうつ的気分などの精神的症状や、文化、環境、家族関係など、社会的要素からくるストレスがあるといわれます。

 反対に、うつ症状がよくならない原因の一つが、ビタミンD不足だったりすることもあります。

 患者が心身ともに健康になるためには、身体面、精神面、社会面から患者を包括的にみた上で、どこに問題があるかを突き止め、解消する必要があります。心と体は、まさにつながっているからです。

 

患者にメンタルケアを促す仕組みとは?

 ①メンタルヘルス専門家が主治医と同じ組織に所属し、同じ病院なり診療所に常駐するモデル、②所属する組織は違うが、メンタルヘルス専門家が主治医の病院なり診療所に、毎週決まった日数出勤するモデル、③主治医が、提携するメンタルヘルス専門家を患者に紹介するモデル――基本的にこの3種類の方法があります。これらモデルの概念を、「医療とメンタルヘルスの総合的・連携ケア(統合・連携ケア=Integrative Behavioral Health Consultation/Collaborative Care)」といいます。

 アメリカでは通常、主治医が患者を診察し、必要があると判断すればメンタルヘルス専門家を紹介します。ところが、実際に専門家に相談する患者は、全体の半数以下、場合によっては10~30%程度かもしれません。「メンタルヘルス専門家の治療は、重症の精神病者のためのもの、私には必要ない」という誤った認識があるからです。日本ほどではありませんが、「メンタルヘルス関係の受診は、どうも敷居が高い」と感じる人は多いようです。

 しかし、①と②のモデルのように、メンタルヘルス専門家が主治医と同じ診療所内にいれば、主治医は診察したその日に患者を専門家に「引き合わせる」ことができます。患者は、「ついでだから受診してみようか」という気持ちになりやすく、結果的にメンタルケアへのアクセス向上につながります。

 ③の紹介状を出すケースも、例外はありますが、基本的に主治医のオフィスがメンタルヘルス専門家に直接連絡を取り、患者を紹介、それを受けた専門家のオフィスが患者に連絡し、診察予約を入れるという方法がとられます。これは、主治医は紹介状を出すだけ、メンタルヘルス専門家は患者から連絡がくるのを待つだけといった、患者任せの従来のシステムとは大きく異なります。

 メンタルヘルスには無頓着だったり、偏見があったりした人も、一度受診した後はその重要性を理解し、気軽に利用できるようになるようです。

※後編は、患者中心のメディカルホームと統合・連携ケアにおけるメンタルケアの具体例についてです。

 

心身のさまざまな症状は、心(精神的要素)、体(身体的要素)、文化・環境・家族関係などの社会的要素を反映している
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鈴木貴子先生
Takako Suzuki, PhD

クリニカルサイコロジスト、心理教育学博士。個人開業クリニックおよび患者中心のメディカルホーム認定機関で、18歳以上から老年期の多人種の患者を対象 に、不安・恐怖症・パニック症状・強迫観念症・うつ症状などの治療と、病気に伴うストレスの緩和、異文化適応・教育・国際結婚に関する相談に従事。フィラデルフィア日本人会会長。
• 4 E. Germantown Pike., #205
Plymouth Meeting, PA 19462
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TEL
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